2016年1月19日火曜日

高校生物 第21講 分類


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予習
植物についてみてみましょう。陸上植物には様々なグループがあります。みんな緑だから、普段意識することは少ないかもしれませんね。維管束をもたないコケ植物、維管束はもつが種子を作らないシダ植物(無種子維管束植物ともよばれます)、種子植物です。
中学校で学習した裸子植物や被子植物はどちらも種子植物のグループです。

次は動物についてみてみましょう。ウニとカエルでは原口が肛門になりましたね。このように、発生の過程に共通点があるものは近縁な証拠です。ウニは棘皮動物、カエルはヒトと同じ脊椎動物です。どちらも新口動物というグループに属します。
逆に、原口が口になるグループは、旧口動物といって、扁形動物、軟体動物、環形動物(このイカやタコを含む3つは冠輪動物というグループ)、線形動物、節足動物(この昆虫を含む2つは脱皮動物というグループ)などが属します。

現在では、生物の近縁さ(いつごろ共通祖先から分岐して進化したか)は、rRNAの配列に基づいて決定されています。
動物の中には、刺胞動物のように、新口でも旧口でもない二胚葉性の動物や、海綿動物のように胚葉の分化がみられない動物もいます。


講習
□ テーマ1: 生活環について知っておこう!
出題頻度は高くない!次の5点を覚えれば点が取れる!

① 胞子体は減数分裂で胞子をつくる!
(胞子は成長して配偶体になる。)
② 配偶体は配偶子をつくる!
(配偶子は合体して受精卵になる。)
③ 受精卵は発生・成長して胞子体となる!
④ 被子植物は胞子体が本体!
⑤ シダ植物の配偶体は前葉体とよばれ、光合成をして独立生活することができる!
(被子植物の配偶体は花粉や胚のうであり、これらは独立生活はできない。)

補足
被子植物についてよく問われる。
被子植物は減数分裂で花粉四分子や胚のう細胞をつくる。
被子植物の胞子は花粉四分子や胚のう細胞にあたる。
花粉四分子は、成熟花粉となる。胚のう細胞は胚のうとなる。
成熟花粉には精細胞が生じる。胚のうには卵細胞がある。

被子植物の配偶体は、成熟花粉、胚のうにあたる。
被子植物の配偶子は精細胞や卵細胞にあたる。
精細胞と卵細胞は合体するので、これらの細胞が配偶子にあたる。







 
□ テーマ2: 植物の分類

教科書の図がそのまま入試に出る!暗記せよ!


シルル紀末に存在していた最古の陸上植物クックソニアは、維管束はないが、コケ植物に見られない二股の枝別れが見られる。

 
・コケ植物
維管束発達しない。
配偶体が本体(スギゴケでは、胞子体が配偶体に寄生している)。
根・茎・葉の区別がない。
仮根がある(根とは異なる)


<<維管束の壁 >>

アクティブラーニング課題:どうして維管束が必要になったか。



(陸上化し、空間や日光を巡る競争のため、木部・師部などからなる維管束が必要になった。)



・シダ植物(無種子維管束植物)
維管束をもつ。
高木になった最初の植物。
種子植物と同様に、胞子体が本体。
ワラビの配偶体は前葉体と呼ばれ、独立生活する(前葉体で精子と卵が作られる)。
ワラビ、ゼンマイ、スギナ、サンショウモ、マツバラン、クラマゴケ、トクサ、ヒカゲノカズラ


 <<種子の壁>>

・裸子植物
はじめての種子植物。
種子で乾燥へ適応した。
イチョウ、ソテツ、マオウ、マツ

<<子房の壁>>



・被子植物
現在最も広く分布している。
白亜紀に出現した。
胚珠が子房壁に包まれている。
重複受精を行う。


アクティブラーニング課題:重複受精の利点は何か。

(胚乳と受精卵が同時に生じるため、栄養が無駄にならない。)



補足
植物はシャジクモから進化してきたといわれている。
その根拠に、シャジクモがクロロフィルaとbを持つことがあげられる。
クロロフィルabをもつ葉緑体は、緑藻やミドリムシ類、いくつかの渦鞭毛虫にもみられる。
ではなぜ特にシャジクモから植物が進化したとするのか?
シャジクモ藻類は、
①セルロース合成酵素の形(円状に細胞膜に埋め込まれている)、
②ペルオキシソームという一重膜の袋型の細胞小器官(カタラーゼなどを含む)内の酵素群の種類、
③精子の鞭毛構造、
④細胞板の形成に関わるフラグモプラストという微小管群 
が植物と類似している。
塩基配列に基づく遺伝学的根拠もある。覚えなくてよい。


□ テーマ3 動物の分類(細かい知識は新課程ではあまり出ない)

教科書の図がそのまま入試に出る!また、太字は必ず覚えよ!
・海綿動物
えり細胞をもつ(えり細胞は、エリベンモウチュウの細胞と形態的にほぼ区別できない!エリベンモウチュウから動物が進化した証拠である。)
無胚葉性
カイロウドウケツ、ホッスガイ


<<二胚葉の壁>>


・刺胞動物
散在神経系。
二胚葉性
刺胞をもつ。
多細胞で、細胞の分化が見られる。
ヒドラ、ミズクラゲ、イソギンチャク、サンゴ


<<三胚葉の壁>>


まずは旧口(原口が口になる)動物から紹介する。

・扁形動物
かご形神経系(神経が背側と腹側をはしる)。
排出器官は原腎管。
「へん(扁)なげんじん」
肛門や血管系なし。
プラナリア、サナダムシ
扁は「たいら」という意味。

・軟体動物
排出器官はボヤヌス器(腎管の一種)。
「ボヤヌス器ってなんだい(軟体)?」
外とう膜(内蔵塊を覆い、殻をもつ場合には貝殻を分泌する組織)がある。
イカ、タコ(頭足類、閉鎖血管系)、貝(開放血管系)
やわらかい体

・環形動物
排出器官は体節器(腎管の一種)。
閉鎖血管系
軟体動物と環形動物はトロコフォア幼生(環状の繊毛をもつ)の時期がある(幼生の形状が似ていることは近縁な証拠)。
ミミズ、ゴカイ「あなたとの関係(環形)は誤解です」、チスイビル

・線形動物
カイチュウ、ギョウチュウ、センチュウ

・節足動物
排出器官はマルピーギ管(甲殻類は腎管の一種の触角腺)。
開放血管系。
多くの体節からなる。
昆虫類、クモ類、ムカデ、ヤスデ、甲殻類(エビ、カニ、フジツボ)

次に、新口(原口とは別の部分が口になる)動物を紹介する。

・棘皮動物
水管系(呼吸器系・排出器系・血管系をかねる、棘皮動物独特の構造)をもつ。
5方向に放射相称の体制をもつ。
管足(運動器官)をもつ。
ウニ、ヒトデ、ナマコ、ウミユリ

・原索動物
一般に脊椎骨はない。
一生のうち少なくとも幼生期に脊索をもつ
管状神経系。
ホヤ、ナメクジウオ

・脊椎動物
閉鎖血管系。
脊椎をもつ


以下、脊椎動物の分類を記す。ほぼテストに出ない。


無顎類(カンブリア紀に出現、ヤツメウナギ、最初の脊椎動物、顎がない、円錐状の歯を使って血を吸う)

<<あごの壁>>

軟骨魚類(サメ、エイ)

<<硬骨化した内骨格の壁>>

硬骨魚類(マグロ[条き類]、シーラカンスや肺魚[肉き類]
魚類はシルル紀に出現し、1心房1心室である。

<<指のある肢の壁>>

両生類(デボン紀に出現、イモリ:卵は硬い殻をもたず水中で発生、2心房1心室)

<<羊膜卵の壁>>

爬虫類(石炭紀に出現、ヤモリ、ヘビ、卵は硬い殻をもち陸上で発生、変温、2心房1心室)
鳥類(ジュラ紀に出現、ペンギン、恒温で2心房2心室だが、哺乳類とは近縁でなく、爬虫類のなかまから進化したとされる)

<<哺乳の壁>>

哺乳類(三畳紀に出現、カモノハシ[単孔類、哺乳類の中でカモノハシは卵性]、カンガルー[有袋類]、ヒト[真獣類]



旧口動物の覚え方 旧(旧口)い缶を使っている友人に一言。
「何だい!(軟体)変(扁形)なカン(環形)カンをリサイクル(冠輪動物)して!」

軟体動物と扁形動物と環形動物は旧口動物の中でも、冠輪動物とよばれるグループに属する。テストに出る。


「確かに旧いけど、これで千円(線形)節約(節足)だっぴ(脱皮動物)」

「せ(線形)っせ(節足)と脱皮(脱皮動物)する!」

線形動物と節足動物は旧口動物の中でも、脱皮動物とよばれるグループに属する。テストに出る。



冠輪動物という名前は、触手冠(餌をとるための繊毛の生えた冠状の触手からなる構造)に由来する。 

しかし、教科書の冠輪動物、脱皮動物の分類は、形態的なもの(見た目、脱皮するかしないかなど)ではなく、分子データに基づいて分類したものある。


新口動物の覚え方
「極(棘皮)限(原索)まで接近(脊椎)して親交(新口動物)を深めよ?」

ウーズは、rRNAの塩基配列の比較、つまり分子時計の手法を使って、界よりも上位の分類としてドメイン(細菌ドメイン、古細菌ドメイン、真核生物ドメイン)とよばれる考え方を提唱した。

アクティブラーニング課題:どうして生物を分類するのにrRNAの塩基を比べたのか。

(すべての生物がリボソームをもっているから、比べやすい。リボソームは細胞の働きの基本であるため、rRNAの遺伝子はゆっくり進化する。ゆっくり進化する遺伝子のほうが違いを比べやすい。)