2016年1月19日火曜日

高校生物 第14講 卵割とウニの発生


雑談 何故高校ではウニの発生を学ぶのか。理由は三つある。 ①実は、ウニは人と比較的近縁な生物である。ウニは棘皮動物であり、脊椎動物と同様、新口動物というグループに分類される。(ウニやヒトは新口動物という原口が肛門になるグループに属する。実は、原口が口になろうが肛門になろうが関係なく進化は成功してきた。原口が口になるグループは旧口動物というが、旧口動物は、昆虫などの節足動物を含む、地球上の巨大なグループである。大切なのは、動物の体が『ちくわ状』になることなのだ。食べ物が入ってくる穴があり、別に出ていく穴がある方が、摂食と消化に有利である)。 ②胚が、親の体内ではなく、外で発生するので、観察しやすい。昔から最もよく研究されてきた生物の一つが、ウニなのである。 ③高等動物の発生の基本が全て観察できる。つまり、卵割による細胞数の増加、原腸陥入によるちくわ状の体への変化(原腸陥入をはじめとした細胞のダイナミックな動きは、様々な生物ごとに異なる仕組みが背景にある。まだわかっていないことが沢山ある)、三胚葉の分化が観察される。三胚葉の分化は重要で、大まかな細胞のグループ分けが行われた後、より細かい分化が進んでいくというのが発生の基本である。

染色体が発生に必要であること、DNAとRNAが胚の細胞一つ一つに存在すること、m RNAがタンパク質の合成を促すこと、蓄えられた母性RNAが発生初期の胚にタンパク質を供給することの証拠を最初に提供してきたのは、ウニ胚だった。(Ernst2011;McClay2011)





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予習

受精卵は卵割とよばれる特殊な体細胞分裂で細胞数を増やしていく。

やがて、卵割腔、胞胚腔を生じ、原腸が形成されていく。
原腸が陥入するところを原口といい、ウニやカエルでは原口は肛門になる。
これは重要なので覚えておこう。


講習
□ テーマ1 : 卵割の特徴をマスターしよう!

(1)受精卵から始まる初期の体細胞分裂を卵割といい、
これによって生じた娘細胞を割球という。

定番論述問題:ウニの卵割が一般的な体細胞分裂と異なる点を説明せよ。


答え:

①割球が成長せず次の分裂がおこる。
・・・・・・その結果、生じる割球の大きさはどんどん小さくなる。


②間期が短い
・・・・・・ふつうG1期やG2期がない。
DNA合成期であるS期はある。
間期が「短い」のであって、「無い」のではない!(DNAを合成せずに卵割をしていって大人になったら大変でしょう。DNA量が数億分の1になってしまう。)



同調分裂する
・・・・・・生じた割球同士がいっせいに次の分裂を行う。
同調分裂は発生の進行に伴い乱れていく。

□ テーマ2 : 卵割の様式をマスターしよう!

(1)卵割の様式は、卵黄の量と分布状態によって異なる。



(卵の種類)・・・・・(卵割の様式)・・・・・(生物例)


等黄卵・・・・・等割・・・・・哺乳類・棘皮動物(ウニ、ヒトデ)、原索動物(ホヤ、ナメクジウオ)


端黄卵・・・・・不等割・・・・・両生類(カエル、イモリ、サンショウウウオ)


端黄卵・・・・・盤割・・・・・鳥類・爬虫類・魚類


心黄卵・・・・・表割・・・・・昆虫・甲殻類



卵黄は発生に必要な栄養だが、粘性が大きいため、細胞質分裂のときに邪魔になり、卵黄の多い部分では細胞質分裂が起こりにくくなる。


アクティブラーニング課題:どうしてウニが発生の研究に使われるか。


(体外受精であり観察しやすく、多数の胚も得やすい)




アクティブラーニング課題:どうしてウニではなくアフリカツメガエルを発生の研究に使うことがあるのか。ウニより胚が得にくいと思わないか。



(四肢など、ヒトと共通点が多数ある。変態時の遺伝子発現による細胞分化の調節も興味深い。)



□ テーマ3 : ウニの発生をマスターしよう!

受精卵 
⇒ 2細胞期胚 ⇒4細胞期胚 ⇒ 8細胞期胚・・・  

⇒桑実胚 
桑実胚の中には卵割腔とよばれる空洞がある。
(余談だがショウジョウバエには卵割腔も胞胚腔もない)


 ⇒胞胚
胞胚の中に胞胚腔(卵割腔が広がったもの)とよばれる空洞がある。繊毛が生じて、ふ化する。一次間充織は骨片へになる。


 ⇒原腸胚 
陥入が起きる。
原口は将来の肛門に、原腸は将来の消化管に、二次間充織は筋肉や生殖腺になる。原腸胚期ごろ、三つの胚葉が分化する(内胚葉・中胚葉・外胚葉)。

⇒プリズム幼生⇒プルテウス幼生⇒変態して成体へ
(発生の順番がテストに出る。また、ウニとカエルの原口が肛門になることは、生物受験界で最もよく出る問題。