一遺伝子一酵素説についての講義動画はこちら
★知っていると得することも、もしかしたら、あるかも・・・くらいの出題頻度!ただし医、獣医、看護系では注意!一遺伝子一酵素説の考え方は超よく出る!考え方のほうが大事!
一遺伝子一酵素説があてはまる例として,ヒトではフェニルケトン尿症という劣性の遺伝病がある。
フェニルケトン尿症は尿中にフェニルケトンが大量に排出される病気で,放置すれば脳の発育に障害が起こる。この病気の原因は,フェニルアラニンをチロシンに変換する酵素の遺伝子の塩基が変化したことによって,正常な酵素がつくられなくなったことである。この酵素がないと,本来ならばチロシンヘと変換されるフェニルアラニンが余ってしまう。すると,正常な場合にはそれほど使われていない反応経路によって,フェニルアラニンからフェニルケトンが大量につくられ,体内のフェニルケトン量が多くなって障害が発生する。乳幼児に神経系の障害を引き起こすため、フェニルアラニンを除いたミルクで育てる必要がある。
補足
アミノ酸代謝に関する遺伝病の中で最も頻度が高い。血中のフェニルアラニン濃度が高くなると、脳における大型中性アミノ酸の輸送を飽和させてしまう。脳のタンパク質や神経伝達物質の合成が低下し,その結果として脳が障害を受ける。フェルアラニンが過剰に存在すると,アミノ基転移によってフェニルピルビン酸となり,さらにフェニル乳酸やフェニル酢酸に変化する。これらの分子は大量に尿中に排出される。この病気に特徴的な尿のかび臭さは、フェニル酢酸によるものである。
□ テーマ2 : アルカプトン尿症について知っておこう!
フェニルアラニンの代謝経路ではこのほかにアルカプトンを酸化する酵素が欠けているために起こるアルカプトン尿症という遺伝病も知られている。下図参照。
フェニルアラニンは必須アミノ酸(体内で合成できない)のため、食物として摂取する必要がある。
チロシンは必須アミノ酸でないので、体内で合成できる。このことを知っておくと、フェニルアラニンとチロシンの順番も多少覚えやすい。
補足
アルカプトン尿症は、ホモゲンチジン酸(アルカプトンとよばれる)オキシダーゼの欠損が原因であり、単一の酵素の遺伝的伝達と関連づけられた初めての病気であった。尿中にどんな物質が含まれているかはっきりわかっていなかった頃、アルカプトンという名称が充てられたが、現在では尿中に含まれる物質はホモゲンチジン酸であることがわかっている。1902年(ビードルとテータムの発表よりおよそ40年も前のことである),Archibald Garrodは、一つの遺伝単位(後に遺伝子と呼ばれる)のせいでアルカプトン尿症患者の尿か黒く変化することを提唱した。欠損した酵素の基質であるホモゲンチジン酸が、多量に尿中に排出される.ホモゲンチジン酸は、尿が空気にさらされると同時に酸化され、黒く変色する。アルカプトン尿症の患者は,のちのち関節炎を呈する。加えて、徐々に色素が蓄積され、皮膚がまだらに黒くなる。チロシンやフェニルアラニンはアミノ酸の一種。
ホモゲンチジン酸
□ テーマ3 : アルビノについて知っておこう!
チロシンからメラニン(皮膚や体毛の色素)を合成できない。
補足
白皮症は、遺伝子の欠損が深刻な結果をもたらす典型的な例である。この病気ではチロシナーゼという酵素が欠損している。結果として、皮膚、髪、目に見られる黒色素であるメラニンが生産されない。メラニンは皮膚のメラニン細胞など特定の細胞でチロシンからつくられる。それらの細胞において、チロシナーゼはチロシンをDOPAに変化させ,DOPAをドーパキノンに変化させる。その生成物は高い反応性をもち,多数の分子が重合することでメラニンが形成される。その患者(アルビノと呼ばれる)は色素を欠如しているため、太陽光に対して極端に敏感である。ひどい日焼けや皮膚がんが多いだけでなく、視力が弱いことが多い。