2018年6月15日金曜日

DNAの巻き方

生体内で安定なDNAの巻き方は右巻きの二重らせんです。
つまり前面にくる鎖が右上に上っている形です。
明治大学で出題されました。
国立科学博物館の人体展で、逆向きの、また、ピッチ数(ふつう、らせんひと巻きに10塩基対が含まれる)が異なるDNAが描かれた大きな撮影スポットのパネルがあったので、問い合わせのメールを送ったところ、DNAの巻き方、ピッチを修正しパネルを差し替えましたとのお返事をいただきました。
これを機にワトソン・クリックのDNAモデル(二重らせん構造)を確認しましょう。
修正前





修正後

(メールしたことを少し反省しています。小うるさい迷惑メールであったろうと思います。申し訳ないことをしました)

2018年2月2日金曜日

血縁度の求め方

血縁度の授業動画はこちら


血縁度について解説する。実際にはいくつか定義があるが、よく大学入試で使われる定義について考えていく。
まず、わかりにくい教科書的定義から見ていこう。
「血縁度=自分の持つある遺伝子を、注目している別個体ももっている確率。」

この説明1回でわかれば天才である。

こう考えよう。
「えいっ!」と適当に遺伝子を選んで、それを相手も持っている確率。

まずは、人と同じ2倍体(単純のために、相同染色体を1対しかもたないものとする)、で母と父から1本ずつ染色体をもらう生物を考えよう。


さて、自分と弟(もしくは妹)間の血縁度を計算する。
次の3ステップで考える。

①まず、「えいっ」と、自分の持つ遺伝子を適当に1つ決める。(★で示す)

②選んだ遺伝子が、母からもらった遺伝子である確率は1/2
なぜなら、自分の遺伝子の半分は母から、もう半分は父からもらったものだから。

そして、選んだ遺伝子が弟にも伝わっている確率は1/2
なぜなら、母のもつ相同染色体のうち、どちらか一方がランダムに弟に伝わるから(★と■のどちらかが弟に渡されるので、弟は★を受け取らないことがある)
つまり、こんな場合(共通の遺伝子★を弟も持つ場合)と

こんな場合(弟は★をもらわない)が考えられる。
したがって、
「選んだ遺伝子★が母由来(選んだ★が青ではなく赤い染色体にあった)」で、かつ「弟も★をもらう(弟には■ではなく★が伝わる)」確率は、
1/2(★が母由来の赤い染色体にある確率) ×1/2(弟に■ではなく★が伝わっている確率) =1/4・・・(i)

同様に考えて、「選んだ遺伝子が父由来」で、かつ「弟もその遺伝子をもらう」確率は1/4・・・(ii)

③選んだ遺伝子が、母由来であった場合の確率と父由来であった場合の確率を合計する。
(i)、(ii)より、自分の選んだ遺伝子を弟ももつ確率は1/4+1/4=1/2
この1/2が、自分と弟間の血縁度となる。
(選んだ遺伝子は母由来、または父由来のどちらかなので、③で2つの確率を足す。掛けてはいけない。例えば、箱に赤いボールと青いボールが同数ずつあり、これをランダムに引くものとする。あなたと弟がこのゲームを行う。あなたが赤いボールを引き、かつ弟も赤いボールを引く確率は1/2[あなたが赤を引く確率]×1/2[弟が赤を引く確率]=1/4。あなたが青いボールを引き、弟も青いボールを引く確率は1/2×1/2=1/4。したがって、あなたと弟が同じ色のボールを引く確率は1/4+1/4=1/2。こんなまどろっこしい計算をしなくても、あなたがどのボールを引こうが、弟は1/2であなたと同じ色のボールを引くのだから、あなたと弟のボールが同じ色になる確率は1/2に決まっている。しかし、この赤と青で分けて考える考え方が次の話で役に立つ)


さて、次は、ミツバチ(親が半数体)の場合を考えてみよう。
ミツバチのオスは、受精しなかった卵が成長して生まれる(したがってオスは半数体)。
オスは減数分裂なしに精子を作る。したがって、娘は共通の父由来の遺伝子を持つ。つまり、父の遺伝子はすべての娘に同じものが伝わる(母のように、どちらか1本選択される、などということがない)。



①「えいっ」と、自分の持つ遺伝子から1つ選ぶ(★)。

②選んだ遺伝子★が母由来である確率は1/2(適当に選んだ遺伝子が赤い染色体にある確率は1/2)



注目した遺伝子★が妹にも伝わっている確率は1/2
なぜならば、こんな場合(妹にも共通の遺伝子★が伝わる)と


こんな場合(★が伝わらない)がある。

さて、選んだ遺伝子が父由来だった場合を考えよう。

父の染色体は、同じものが、すべての娘に伝わる(ミツバチのオスの精子は減数分裂なしで作られることを思い出してほしい)ので、注目した遺伝子★が父由来の場合、★を妹も持っている確率は1(100%)。

以上より、選んだ遺伝子が母由来で、かつそれを妹も持つ確率は1/2×1/2=1/4・・・(i)
選んだ遺伝子が父由来で、かつそれを妹も持つ確率は1/2×1=1/2・・・(ii)


(i)、(ii)より、ミツバチにおいて、姉妹間の血縁度(えい!と選んだ自分の遺伝子を、妹も持つ確率)は1/4+1/2=3/4

補足
血縁度の定義はひとつではない。
たとえば、ある二匹の間のガチで遺伝的な近縁の程度を知りたいと思ったら、その二匹の持ってる遺伝子を全て並べて、同じ遺伝子がどの程度あるかを網羅的に比べることになる。
もちろん、集団の中で、それらの遺伝子の頻度がどれくらいか(どれくらいそれらの遺伝子が集団に頻繁に現れるか)も考慮しなければならないこともあるだろう。
しかし、そのような作業はかなり煩雑なので、今回見るように、どの染色体にもそれぞれ固有の遺伝子の組み合わせパターンがある、つまりどの染色体も異なるものとして考えることが多いのである。

ちなみに、半数体の場合は血縁度は非対称になる。ミツバチの父から見た子の血縁度は1である。父は減数分裂をしないので、父の持つ遺伝子は、どの遺伝子も必ず子に伝わる。父の持つ染色体のどの遺伝子をえいっと選ぼうが、それを必ず子が持っている。
ところが、ミツバチの子からみた父の血縁度は二分の一である。えいっと選んだ染色体が母由来の場合は、それを父は持たないからである。