2021年3月22日月曜日

しつがい腱反射、脊髄、反射弓、脳

反射についてのリアル授業はこちら

脊髄反射


 ニューロンは,そのはたらきによって3つに分けられる。

① 感覚ニューロン:集まって感覚神経を構成(軸索が2本あるが、片方は樹状突起の働きをする)。



② 介在ニューロン:脳や脊髄などの中枢神経系(脳・脊髄)を構成。下図では1本しかないが、本来もっと多数で脳・脊髄をつくっている。


③ 運動ニューロン:集まって運動神経を構成。









● 脊髄:内側が灰白質,外側が白質(大脳とは逆!!!)。










*入試では、背根と腹根を


図から選ばされることが多い。


脊髄神経節


(感覚ニューロンの細胞体がある場所)


のふくらみのある方が背根である。





要点:反射(意識に上ることなく反応が引き起こされる)に関与する神経経路を反射弓という。

反射の経路を反射弓という。下の図は膝蓋腱反射の図。

自己受容器である筋紡錘(きんぼうすい)が、

自己の筋肉の伸びすぎを感知し、

強制的に収縮させる。

大脳の判断を経由せず、脊髄が命令を出すことで、素早く危険を回避することができる。

 

 

 〔反射弓〕

受容器感覚神経反射中枢(延髄や中脳や脊髄)運動神経効果器








余裕のある人は脊髄以外に中枢がある反射もチェック!!













*屈筋反射(熱いものを触ったときに、手を引っ込める反射)の場合は、膝蓋腱反射と異なり、感覚ニューロンと運動ニューロンの間に介在ニューロンが入る。

 

 





● 大脳,間脳,中脳,小脳,延髄に分けられる。


語呂「悪代官中症え~ん(脳は上から、脳、脳、脳、脳、髄)」

大脳:外側の層は細胞体の集まった灰白質大脳皮質という。内部は軸索が集まった白質大脳髄質という。哺乳類の大脳皮質は,古皮質・原皮質と新皮質からなる。(雑談:名探偵エルキュール・ポアロの口癖は『あなたも灰色の脳細胞を働かせなくてはいけませんよ』[大脳の外側は灰白質]

新皮質:感覚の認知(視覚・聴覚など),随意運動,精神活動(記憶・思考・理解など)の中枢

・古皮質と原皮質:本能や基本的な感情の中枢

・大脳辺縁系:古皮質・原皮質およびそれらと関係する部位などを含めた名称。明確な区分けは確定していない。情動、欲求、本能を統合する。海馬(記憶に関係)を含む。

覚え方「大図鑑見る(脳皮質の機能は前から、意運動、皮膚覚、覚)」

大脳は領域ごとに担当する機能が異なる。人は(ある意味)脳の後ろで物を見ている。







神経の興奮を伝える経路は左右反転する(主に延髄で反転する。右半身からの情報は左脳で処理される)。右から敵に襲われたとき、右の感覚がマヒしてしまっては戦えないからだろうか。(雑談:延髄で交叉しない神経もある。粗大な感覚や温感を伝える感覚神経は脊髄で交叉する)




間脳:視床と視床下部がある。視床下部は自律神経系と内分泌系の中枢(生物基礎の復習)。

中脳:姿勢保持,眼球運動,瞳孔反射の中枢。語呂「しせいだめでちゅ(姿勢保持、球運動・瞳孔反射中枢、脳)」

小脳:筋肉運動の調節,からだの平衡を保つ中枢。語呂「しょうへい運動超切ない(脳、衡、運動調節)」

延髄:呼吸運動,血液循環(心臓拍動・血管収縮)の調節。・だ液・涙の分泌などの中枢。語呂「え~ん、涙だ、深呼吸しよう(延髄、涙、だ液分泌、心臓、呼吸運動)」




2021年3月19日金曜日

サルコメアの長さと張力のグラフ

筋肉についての授業はこちら

サルコメア

滑り説


 筋原繊維のZ膜(Z帯)からZ膜までの構造体は,サルコメア(筋節)と呼ばれ,筋原繊維の構造及び筋収縮上の反復の単位と考えられている。



ミオシン頭部がATPを分解(ATP分解酵素活性はミオシン頭部にある)して角度を変え、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの間で滑り込みが起こる。この2者の運動は相対的なもので、どちらのフィラメントから見るかによって、どちらが動いて見えるかは異なるが、入試に出てくる図ではミオシンフィラメントが固定された芯のように描かれることが多い。ミオ「芯」フィラメントと覚えてしまおう。





下図には,サルコメアの長さと張力との関係を調べた実験結果が示されている。(筋肉をいろいろな長さに固定して、発生する力(張力)を調べて描く)

図から,アクチンフィラメントとミオシンフィラメント各々の1本の長さが求まる。

アクチンフィラメント…1.0μm 

(アクチンフィラメント同士が重なり始め、張力が減じはじめる長さが2.0μmだから、アクチンフィラメント2本分の長さが2.0μm) 


ミオシンフィラメント…1.6μm

(アクチンフィラメント2つとミオシンフィラメントの合計の長さ[アクチンフィラメントとミオシンフィラメントがちょうど重ならない時、つまり張力0になったときの長さ]が3.6μmなので、そこからアクチンフィラメント2つ分[2.0μm]を引く)


・覚えなくてよいが、ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが張力を発生させるために結合している部分の全体をクロスブリッジという。

・サルコメアの長さが2.0μmより短いときに張力が低下する仕組みは良く分かっていないが、アクチンフィラメントの重なりによるアクチンフィラメントの変性などが考えられている。



神経筋接合部では、アセチルコリンによる伝達が起こる。

①神経筋接合部において、運動神経の軸索末端からアセチルコリンが分泌される。②Naが流入し活動電位が発生する。筋細胞膜は深く陥入し、筋小胞体(特殊化した滑面小胞体)に達している(この筋細胞膜が陥入しているところをT管という)。③筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。④カルシウムイオンはトロポニンに結合し、トロポミオシンの立体構造を変える。⑤トロポミオシンによって塞がれていたミオシン結合部位が露出し、筋収縮がはじまっていく。

 


 

 雑談:筋肉は. ヒトにおいて体重の約30 %から40 %を占め、単一の組織としては最大のものである。 骨格筋や心筋を光学顕微鏡で観ると、 明暗の縞模様が見えることから、 これらは横紋筋と呼ばれる。1876年に、 LéonFredericqは、昆虫の筋肉の長さを変化させても、縞模様の暗帯の長さが変わらないことを報告していた。この観察結果は、筋肉の収縮には少なくとも2種類のタンパク質がかかわることを示唆しているが、この現象は長い間筋研究者から忘れ去られることになる。

20世紀前半の学者らは、「筋収縮の実体は、ミオシンフィラメントが、スプリングのように伸び縮みすることである」と信じこみ、 この説の検証に終始していた。
その後、スプリング仮説に反して、革命的な説となる 「滑り説」 が提唱され|た。 すなわち、 「筋収縮は、 ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが互いに長さを変えることなく滑りあうことでおこる」 という仮説である。

2021年3月6日土曜日

質問返し

 classi のアンケートに書いてくれた記述に対して返答します。

·        1年間授業ありがとうございました!毎回毎回楽しかったです

A.ありがとうございます。

 

·        未だに原核生物が自分の中で曖昧だったりするので、どうやって考えれば良いなどはありますか?

A.生物基礎の入試を考えれば、「大腸菌」「シアノバクテリア」は原核生物(核膜でDNAを包んでいない原核細胞でできている生物)、「動物・植物」「酵母菌」は真核生物(核膜でDNAを包んでいる真核細胞でできている生物)、のみを覚えておけばよいです。

より深く考えれば、原核生物は、細胞の中に、膜で包まれた構造をもたない戦略を持った生物群です。原核生物は汚い部屋の人、真核生物は几帳面に整理されている部屋の人みたいなイメージです。何かを膜で仕切るのは、非常に合理的です。その仕切った中身の中で、高い濃度で物質を濃縮できるからです。たとえば酵素と基質を一か所にぎゅうぎゅうに押し込めておけば、高い速度で反応を起こすことができます。

逆に、デメリットとして、そのためにエネルギーや、運搬システムが必要です。洋服の種類ごとにしまう場所を分ければ、洋服選びがスムーズになります。しかし、洋服を逐一整理するという面倒も生じます。

荷物をきれいに種類ごとにまとめている人を見るたびに「あ、真核細胞的な人だな。酵母菌だな」と思いましょう。

荷物をつつまず、すべての荷物がぐちゃぐちゃの人を見るたび「あ、原核細胞的な人だな。大腸菌だな」と思いましょう。

 

·        いつも授業楽しいです。

A.ありがとうございます。

 

·        免疫の範囲に関係する素朴な疑問を質問させて下さい。 毎年春になるとかなり花粉症が酷いのですが、毎日入浴中~後に身体が温まると特に鼻炎の症状が酷くなります。 5定期考査の免疫の範囲で、血管が拡張するとT細胞、B細胞等のリンパ球やマクロファージ等の白血球が血管壁から染み出しやすくなって免疫反応が起こりやすくなるというような内容が出てきた記憶があります。 そこでなのですが、身体が温まり鼻腔の血管が拡張することで鼻の中でたくさん抗原抗体反応が起こり、それらを貪食するマクロファージ(マクロファージは血管を拡張する役割を持っていますよね?記憶が曖昧ですみません。)が多く集まることで彼らが更に血管を拡張(つまり炎症?を起こ)しているから入浴時に一時的に鼻炎が悪化していると考えることもできますか? 設問内容に甘え、かなり教科書から逸脱している質問ですが()お時間のある時によろしくお願いします。

A.非常によく理解されていると思います。

あり得ます。やはり体温上昇が大きな原因のひとつだと思います。もちろん問題がある場合はお医者さんに診てもらってほしいのですが、体温が高まると、体表の血管(鼻粘膜血管)が拡張されるのは間違いないと思います。血管がゆるめば、そこから体液が染み出しやすくなります。

その後の推論は・・・どうだろう・・・難しいです。おっしゃる説は、血管拡張―マクロファージ滲出―さらなる血管拡張、という正のフィードバックという説だと思うのですが、マクロファージの活動も関係しているのかもしれません。ごめんなさい、わかりません。何かわかったら教えてください。

 

·        今後有れば、直に話に行きたいなと考えています。

A.どうぞ。お待ちしています。

 

·        窒素を直接利用できる生物とできない生物の違いが知りたいです。(ざっくりとした質問でごめんなさい🙏) 1年間授業ありがとうございました、とてもわかりやすい授業で楽しかったです。

A.ありがとうございます。

ニトロゲナーゼという酵素(ATP存在下で分子状窒素がアンモニアに還元される反応を触媒する酵素)をもつ生物か、持たない生物か、という違いがあります。

窒素固定細菌というグループの生物たちはニトロゲナーゼを持ち「生存に必要な窒素源を、空気中の分子状窒素から自分で作るぞ。ATPをたくさん使ってしまうけど仕方がない」という戦略をとっています。「この洋服は高いけど、どうしても欲しいから買うか」という戦略です。

ニトロゲナーゼを持たない生物(ほとんどの生物はこちら)は、誰かから窒素源を分けてもらいます(または奪います)。

植物は、窒素固定細菌が捨てた余ったアンモニアを取り入れています(肥料です)。動物は、植物や他の動物を食べることで窒素源を摂取しています。「この洋服高いなー。だれかからもらおう」という戦略です。

 

·        矢口先生1年間本当にありがとうございました。理系科目がとことん苦手な僕でも分かりやすく、興味が出る内容でした。大好きです💗

A.ありがとうございます。

 

·        1年間ありがとうございました! 授業が分かりやすくて理解しにくい単元も分かりました!

A.ありがとうございます。

 

·        血清療法で2回以上同じ血清を注射してはいけない理由を忘れてしまったので教えて下さい。お願いします。

A.血清療法は、たとえば、ウサギにつくらせた抗体を人に注入する治療法です。たしかに、そのウサギ抗体は、毒素に結合してくれるので、注入された人は元気になります。

しかし、「ウサギの抗体」というのは、言い方を考えれば「ウサギのタンパク質」、つまり「人体には本来ないはずの異物」です。なので、血清療法は、(なんの工夫も行わなければ)、大量に異物を人体に注入する行為なのです。そして、同じウサギ抗体をもう一度注入するということは、2回、大量に抗原を注入するという行為です。1回目より何倍も強力な免疫反応がはたらきます。この過剰な免疫反応が、深刻なアレルギー反応、アナフィラキシーショックを引き起こす危険があるのです(異物を注入する危険性は、今回、新型コロナウイルスに対する予防接種でアナフィラキシーが騒がれていることからもわかると思います)。

 

·        葉緑体の人口合成は可能ですか?

A.簡単に葉緑体が人工合成できれば、地球温暖化問題は解決ですね。

しかし、難しいと思います。まず、酵素一つ、クロロフィル(主となる光合成色素)1つをとっても、完全に人工的に合成できません。

バイオテクノロジーを使って、なんとか合成できたとしても、今度はそれを正しい位置に「配置」するという難題が待っています。ものすごく小さな世界で、リン脂質で小さな袋(チラコイド)をつくり、そこに、正しい配置で、酵素や色素を埋め込む必要があります。そしてさらに、それらを2重の膜で包むことになります。

さらにさらに、それだけで完成ではありません。常に壊れ続けるこの構造体(人工葉緑体)にタンパク質を運び込む、輸送システム、さらに人工葉緑体から様々なタンパク質を運び出す輸送システムも完備しなければいけません。葉緑体のパーツとなるいくつかのタンパク質が核のゲノムにコードされているので、葉緑体単独で生存はできません。

これらすべての課題を奇蹟的にクリアできても、そのために必要な研究・生産工場のコストを考えれば、結局二酸化炭素の排出量は正になると思います。

 

·        大好きです

A.ありがとうございます。

 

·        地球温暖化が進んでいるがなぜ日常生活をしている中であまり実感がないのか。

A.難しい質問です。仮説の一つですが、変化が微小なせいかもしれません。また、ホモ・サピエンスの、農業に始まる、非生物的環境を改変する強靭な力も無視できないと思います。つまり、エアコンの力で、気温に鈍感になっている可能性があります。そして、そもそも、我々の何かを「実感」できるという能力自体が、まるであてになりません。若干の受容器(眼・耳・冷点・温点・圧点)しかもたない我々が、去年と今年の年平均気温を「実感」で比較するということ自体、無理があるのかもしれません。

 

·        1年間ありがとうございました‼︎ とても楽しい授業でした。 ランゲルハンス島に生息しているグルカゴンとインスリンちゃんに会ってみたいと思いました。

A.ありがとうございます。グルカゴンとインスリンはあなたの中にいます。

 

·        湿潤療法についてなんでこの方法だとばんそうこうをはるより早く治ることがあるんですか?あと、湿潤療法が効かない場合はとんなときですか?

A.メリットと言われている点は以下の通りです。①乾燥した表皮がマクロファージの遊走を妨げるので、湿潤にすることで乾燥を防ぐ。②壊死組織の自己融解(細胞の融解)が起きやすい。③滲出液の中のサイトカインなどが湿潤によって保持される。④ガーゼと傷口の固着が防げる。

デメリットとして、日本皮膚科学会は、湿潤療法を不適切な症例に行うことで深刻な転帰をとることを報告しています(閉塞性動脈硬化症による四肢壊痕に対するラップ療法による悪化)。いずれにしろ、お医者さんの意見をききながら行うことが重要だと思います。

 

·        カゲロウは寿命が1日しかないらしいですがなぜそんな進化をしたのですか?(どんなメリットがあるの?)

A.非常に難しい質問です。生物個体が出生してから死亡するまでにたどる過程を生活史といいますが、この生活史戦略の研究についてはどのように研究すればよいかも含め、議論が絶えません。ただ、たとえば、1000年生きる樹木は、我々に向かって、「え?お前らそんな期間しか生存できなくて平気なの?何かメリットあるの?」と思うでしょうか?(まあ、神経系がないなんて言いっこなしとして)。わかっていることは、今まで何億、何兆という生物種が絶滅し、そして今なお絶滅し続ける中で、カゲロウが、少なくともこの瞬間生きているということです。カゲロウという種は進化上成功(大成功)し続けていることになります。寿命は短くても、次世代を十分な数残すことができればその種は存続できます。

 

·        矢口先生のtwitterを見て気になったのですが、E484K変異は重要箇所でNS極を逆転させたような変異、とはどういうことですか?また、これによってどんな影響が起こりますか?教えて頂きたいです。

A.ぜひご自身で国立感染症研究所の報告を読むことを勧めます。抗原と抗体がくっつくときには、電荷もその親和性を決める要因になります。陰性の電荷をもつグルタミン酸(E)が陽性の電荷をもつリジン(K)に変異すると、電荷が陰性から陽性に逆転します。そしてこの変異の個所はコロナウイルスの表面とヒトの細胞の結合に関する領域に生じています。この変異によって、「ワクチンの無効化はされないが、その効果が減弱される可能性がある」ことが示唆されています。さらにこの領域は中和抗体の中心に配置されることが知られています。

 

·        ハワイのような離島での遷移がどのように行われるのか知りたいです。(種や虫などがどのように運ばれるかなど)

A.風にのって植物が運ばれてくる場合があります。シダ植物はすべて風散布型と考えられています。

海流にのって植物が運ばれてくる場合があります。最も主要な種子の拡散方法です。厚いコルク質の皮層に覆われ、長期間の海流散布に耐える果実が多くあります。

動物にのって植物が運ばれてくる場合があります。鳥が果実を食べてフンをする場合があります。果実食のコウモリの中には、70kmの行動範囲をもつものもいます。

(たしか、子供のころ見たNHKの番組で、ギアナ高地に空いためちゃめちゃでかい穴の、その穴の底に、前人未到の生態系が広がっている、という番組がありました。番組中に、新種がガンガン発見されていて、それだけで面白かったのですが、その穴の底に、まるで人が積み上げたみたいに、種子が積み上げてあったのです。ありえねー!と思ったのですが、実は、それは、鳥が運んできたものだったのです。鳥類による種子散布に衝撃を受けたのを覚えています)

ちなみに動物についていえば、たとえば昆虫は飛翔によって空から、シロアリは流木に乗って、トカゲは時に泳いで、海から島にたどり着く可能性が指摘されています。

 

·        ゲノムというのがいまいち理解できていません。一体ゲノムとはどのようなものなのでしょうか。

A.入試に関係なく言えば、一般的には、全遺伝情報の1セットと覚えておけばよいです。裁縫道具1つが遺伝情報1つなら裁縫セットがゲノムです。筆箱の中の筆記用具1つが遺伝情報1つなら、その筆箱がゲノムです。ポケモン1種の説明文が遺伝情報なら、ポケモン図鑑がゲノムです。その生物のすべての遺伝情報をひっくるめて名付けたものです。

生物学的に言えば、「生物のもつ全染色体、あるいはそこに含まれる全遺伝情報」です。ポケモン図鑑が何でできているかは知りませんが、ゲノムはDNA(染色体)でできていたのです。

入試的には、『精子や卵のなかに含まれる全DNA(染色体)』をゲノムとして説く問題が多いです(定義がかなり限定的ですが、入試では、このように暗黙の了解で考えています)。だから、

ヒトゲノムのサイズは?と聞かれたら、精子や卵の中に含まれるDNAの長さの合計の長さを答えます。

ヒトゲノムの染色体の本数はいくつですか?と聞かれたら23本(精子や卵には23本のDNA[染色体]があります)と答えます。

人の体細胞に何セットのゲノムがある?と聞かれたら、2セットと答えます。(精子に1セットのゲノムがあって、卵にも1セットのゲノムがあるので、それらが合体してできた体細胞は2セットのゲノムを持ちます。たしかに人の体細胞には46本[23本×2セット]DNA[染色体]があります)

 

·        コラーゲンってタンパク質なのに効果あるんですか?

A.コラーゲンに含まれる希少なアミノ酸を豊富に摂取できる、という意見もあります。しかし、個人的には、あまりその美容効果・健康推進効果については、信じていません。バラバラのアミノ酸になるタンパク質が、どうして肌をきれいにするのか、個人的には理解できません。



·        1年間ありがとうございました!生物の授業が本当に分かりやすくて楽しくて、もう先生の授業が受けられないと思うと寂しいです。 あと生物の進化と退化について質問したいです。 以前、進化というものは徐々にそれぞれの個体が変わっていったのではなく、その環境に適応できる個体ばかりが生存していきその結果姿が偏って変わっていったとする説をどこかで聞きました。 もしその説が正しければ、進化というものは種の生存に適した姿をしたものだけが残っていくということじゃないですか。 そこで気になったんですけど退化ってどういうことですか?名前は忘れたのですが、目が退化した魚っていますよね。それって種の存続に有利である姿なのでしょうか?エネルギーの削減なんでしょうか。質問内容が支離滅裂としていてすみません

A.     退化の別名は退行的進化です。個体発生、または系統発生の過程における退行、すなわち個体・器官・細胞などの形態の単純化、大きさの減少、活動力の減衰などを指します。つまり、現在の生物学では、退化は進化の対義語ではなく、一種の進化なのです。おっしゃる通りエネルギーの節約に役立つ進化である可能性も十分あります。

ちなみに現在の生物学において、進化とは、以下のステップによるものとされています。

    突然変異によってDNAの塩基配列に変化が起こる。

    地理的隔離・自然選択・遺伝的浮動が働き、遺伝子頻度が変化する。

    生殖的隔離が起きる。

*地理的な障害などにより同種の集団の間で自由な交配ができなくなったとき,これを地理的隔離(ちりてきかくり)という。地理的隔離が種分化を促すことがある。例  ガラパゴス諸島におけるダーウィンフィンチの種分化(島によって住むフィンチの特徴が違う)

*地理的隔離などが原因となり,交配が行われず子孫を残せなくなった状態を生殖隔離という。生殖隔離は新しい種が形成された状態である。 

*遺伝的浮動=(自然選択とは無関係に)『偶然』により遺伝子頻度が変化すること。遺伝的浮動の例:アメリカ先住民のABO式血液型では,アメリカ大陸に移住した際の少数からなる祖先集団内で『偶然』O型の人数が多く,先住民の集団はその子孫から形成されたため,O型の頻度が極端に高くなった)。

もちろんすべては仮説です。進化学に再現性を求めるのは限界があります。

人類史上最高の天才とも言われる物理学者フォン・ノイマンは、以下のようにダーウィン理論を悲観しています。上で書いたような教科書的なステップで、本当に生物のような複雑で完成したシステムが生じるのか?という指摘です。「あそこの丘の上にこじんまりした別荘が見えますか?あれは偶然によってできたのです。数百万年の間に丘が地質学的な過程によってつくられました。木が生えて腐り、倒れてから、再び生長し、そして、たまたま風が丘の頂を砂で覆いました。石は噴火によって吹き飛ばされてきて、偶然によって秩序正しく置かれました。大部分は何か他のものになりましたが、たった一度、別荘がそこにでき、そこに人間が引っ越してきて、今住んでいます。」


·        1年間楽しくて面白い授業をありがとうございました! 特にランゲルハンス島のインスリンとグルカゴンのところが印象に残っています。 毎週矢口先生の授業がすごく楽しみでした!

A.あなたがしっかり勉強したからです。ありがとうございます。


  • ·      いつも授業すっっごく楽しいです!!!
  • A.ありがとうございます。

  • ・ バイオームと遷移のちがいってなんですか?

       A.バイオームは、主に気候条件によって区分された特定の相観(見た目)を持つ極相群集によって特徴づけられたある地域に存在する生物群集の単位です。ざっくり言い換えれば、「ある地域に住む生物たちのまとまり」です。「熱帯多雨林」とか「サバンナ」とかが、バイオームの種類です。熱帯多雨林にはいろいろな生物がたくさん生息していると想像できますね?その生物たちを全部ひっくるめて言いたいとき「この熱帯雨林のバイオームは・・・」などと言うのです。学校にもいろいろな人がいて、いろいろな関係をもっていますね。それらをすべてひっくるめて言いたいとき、「この〇〇学校は・・・」と言うと思います。同じような感じでバイオームという用語が生まれました。多くの生物をひっくるめて捉えたいときに使う言葉です。バイオが生物という意味で、オームが全体という意味です。

      遷移は、ある一定の場所に存在する植生が時間軸に沿ってつぎつぎに変化し、比較的安定な極相へ向かって変化していくことです。ざっくり言い換えれば「時間がたつにつれて植物たちが変化していく現象」です。裸地が、草原になり、陽樹林になり、陰樹林になっていく・・・といった現象を遷移といいます。


・  初めから特異的に免疫を持っている人は何故持っているのか?
A.詳しくはわかっていないのですが、可能性の一つとして、はじめにつくられるリンパ球のレパートリーの揺らぎがあると思います。様々な抗原に対するリンパ球は、遺伝子の再編成などの、偶然に任せるような仕組みで多様化していきます。その多様化の程度が、個人個人で異なることもあり得ます。
また、MHC領域にある多くの遺伝子の機能は、免疫に関係することが知られています。このMHC領域の多様性の意味については、まだまだ解明の途中ですが、免疫系の個性に関係している可能性があります。
さらに、脾臓やリンパ節を作っている細胞とリンパ球が相互作用することが知られています。白血球以外の遺伝子も、免疫系の個性に深く関わっている可能性があります。
成長する環境が免疫系に影響を与える可能性も高いです。たとえばアレルギーの強さの程度には、遺伝的な要因と環境要因の両方が関与することが明らかになっています。
(胎児期に発生するB-1細胞は、末梢に存在する特定の自己抗原、環境抗原と出会い、自己再生のための選択を受ける[増殖維持される]ことが知られています。)


・  極相って災害とか起こらなかったら永久的に続くものなのですか?
A.非常に難しい質問です。宇宙から入射する各種のエネルギーも含め、気候条件が永久に変わらずに、伝染病や、動物種、数年の変動もなく、おっしゃるように台風も火災も全くないとしたら、、、理論上は永久に続くかもしれません。
しかし、そのような「全く変化のない」生態系は、そもそも生態系と呼べないかもしれません。様々な生物、非生物が変化し合い、影響し合いながら、小さな攪乱を繰り返し、それでも存続していくシステムが生態系だからです。

  • ・  一年間ありがとうございました!
  • A.ありがとうございました。

  • ・  蘚苔類は藍藻によって固定された窒素をもとに成長すると「コケの生物学」にあるのですが、根のない、師管のない蘚苔類がどのようにして植物体内に有機物を運んでいるかがよくわかりませんでした。 チョウチンゴケ、スギゴケなどには、有機物の通道を司る、師管によく似たレプトームという細胞があり、スギゴケの葉にある薄板という表面にある細胞が有機物の通道をはたしているとあるのですが、他の蘚苔類も含めて、個々の細胞にどのようにして窒素や、有機物を届けているかを教えていただきたいです。 同じく、沈水植物の窒素の取り入れ方もわからないので教えていただきたいです。 解説できる範囲で構いませんので、お願いいたします。
  • A.よく勉強されているようで感心します。多くのことはわかっていません。あなたも自分で調べてみて、何かわかったら教えてください。

    基本的にコケ植物にも、細胞同士のつながりが、つまり原形質連絡があります。ですので拡散によって水や栄養がほかの細胞に伝わります。(当然効率は悪いです)

    タイ類とツノゴケ類では、地面から直接細胞が吸収した栄養や水分は、原形質連絡のみで輸送を行っているようです。(以上の理由から大きくなれない=地面から離れられないし、遠い細胞まで養分を運ぶ通路がない)

    セン類とタイ類の一部は(種子植物で言う師部の細胞のような)栄養輸送細胞を分化させます。その細胞をレプトイドといいます。栄養輸送細胞レプトイドが連なった組織をレプトームといいます。

    沈水植物は葉からも栄養を吸収していると考えられています。根をしっかりはるものは、通常通り土壌から吸収していると考えられます。水生植物は葉、根の区別があいまいなものもあり、根でも葉でも栄養を吸収することがあり得ます。「どのような輸送タンパク質が埋め込まれているのか、陸上に住む生物のそれと比べ異なるのか」、はまだ解明されていないようです。

    • ・ とても楽しい授業でした! 先生はよく「高校のときは僕も理解できなかったんだよね」とおっしゃっていましたが、いつ生物という教科に目覚めたのですか?高校何年のとき、などです。理由も教えて欲しいです。
  • A.高校二年生の時です。なんか一教科くらい勉強してみようかな、と思って、一番勉強していて辛くなかった生物でいい点をとってみようと、なぜか突然思いました。
  • それで生物だけはガチで勉強して、一位を目指して、一位になれました。生物選択者が少なかったので、わりと勉強したらすぐ上位者に名前が載り、嬉しかったのを覚えています。
  • それでも、よく理解していたとは言いにくいです。確かに点数は取れてましたが、よくわからず覚えてたような単元も多かったです。生物だけは偏差値が70くらいの時もありました。でも他の科目をまったく勉強してこなかったし、いろいろと人間的に絶望的だったので、受験には良くないパターンの生活でした。
  • 落ち着いて、受験に関係ないような、本当の学問をゆっくり勉強できたのは、教員になってからです。もしかしたら、受験という制度は、単なる入り口で、学問の本体には、その後に出会うものなのかもしれません。