2017年2月26日日曜日

反転授業用「生物基礎・ホルモン」


ホルモンのリアル授業はこちら

テーマ:ホルモン
T「今日はホルモンについて学ぶ」


「昨日食べました」


T「君、焼肉のメニューにあるホルモンとは違うよ」
「いったいなにものです、あなたのいうホルモンというのは?」


T「生体内でつくられ、様々な組織に命令を伝える化学物質だ。




すべてのホルモンは共通して血液中をながれる。しかしその作用や標的器官、ホルモン自身の構成成分(アミノ酸がつながってできたペプチドホルモンや、細胞膜と同じ成分でできた細胞膜を通過できるステロイドホルモンなど)は様々だ」







T「ホルモンが作用する(ホルモンを受け取る)器官を標的器官という。同じ使い方で、ホルモンを受け取る細胞(標的器官の細胞)を標的細胞という」









T「例えばチロキシン、これは主に全身の細胞の異化反応を促進する(したがってチロキシンの標的細胞は全身の細胞だ)ことで代謝を高めるホルモンだが、甲状腺という内分泌腺から分泌される」





S「甲状腺?聞いたことないな」


T「君にもついているよ。喉の下のあたりだ」

T「チロキシンを分泌させる命令は、脳の中でも、間脳というエリアから出される。大脳ではないよ!大脳からの命令で、つまり意識的に、代謝を上昇させることはできない。間脳(の、視床下部という部位)から放出ホルモン(正式名称は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンというが、放出ホルモンと覚えておけばよい)というホルモンが、『脳下垂体(の、前葉)』という脳に垂れ下がった器官に送られる。脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを分泌し、甲状腺を刺激する」


S「その放出ホルモンや甲状腺刺激ホルモンも血液中を通るのですか?」


T「その通りだ。すべてのホルモンは血液中を通って標的細胞に向かう。これはホルモンの定義と思ってよい」


S「ホルモンは化学物質といいましたね。消化酵素や汗はホルモンですか?」


T「いや、消化酵素や汗はホルモンとは呼ばない。血液中に分泌されないからね。君が言ってくれた二つは体の外に分泌される。注意したいのは、胃や腸の中の空間も一般に体外と見なすということだ」











T「また、少し変わった例として、神経分泌細胞を教えておこう。この細胞は間脳にいる神経細胞なのだが、ホルモンも分泌できる変わった細胞で、注目されている。例えば、バソプレシンという尿量を減らすホルモンをつくっているのは間脳にいる神経分泌細胞だ」






T「もう一つ今日伝えたいことがある。フィードバック調節だ」


T「チロキシンは全身の代謝を促進させると共に、脳や脳下垂体に働きかけ、それぞれ放出ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制する」


S「チロキシンの分泌が減ってしまいます!」


T「その通り。それが上手いしくみなんだ。この仕組みがあることで、血液中のチロキシン濃度が丁度いい位置に保たれるのだ。高すぎるチロキシン濃度はチロキシンの分泌を抑制する。」


T「この作用を負のフィードバック作用という。エアコンにもついている機能だ。温度が低すぎると、エアコンは室温を上げる。しかし、設定温度を室温が上回ると、今度は室温を下げ始める。室温上昇という結果が、エアコンという原因に作用した。これと同じことが、ほぼすべてのホルモンについても言える。分泌しすぎたホルモンは、自身の分泌を抑制させる。結果、丁度良い血中濃度に落ち着くのだ」








●参考資料
内分泌腺とホルモン 
(1)動物体内では,ホルモンとよばれる物質が分泌され,体内環境の維持にはたらいている。脊椎動物の内分泌腺は,脳下垂体,甲状腺,副甲状腺,副腎,すい臓などである。
参考 内分泌腺には排出管がなく,ホルモンは体液中に直接分泌される。これに対して外分泌腺である汗腺や消化管には排出管があり,分泌物はそこを通って体表や消化管内に分泌される。
 ホルモンには次のような特徴がある。
① 内分泌腺でつくられ,体液によって運ばれる。
② 微量でも大きなはたらきをする。
③ 作用する細胞(標的細胞)が決まっており,標的細胞にはホルモンを受け取る受容体がある。同じホルモンの受容体を複数種の細胞がもつ場合もある。


内分泌腺

ホルモン

おもなはたらき

視床下部

(間脳)

各種 放出ホルモン

放出抑制ホルモン

脳下垂体の前葉からのホルモン分泌の促進または抑制

脳下垂体

前葉

成長ホルモン

タンパク質合成促進,血糖濃度を上げる。

骨の発育・からだ一般の成長を促進

甲状腺刺激ホルモン

甲状腺からのチロキシンの分泌促進

副腎皮質刺激ホルモン

副腎皮質からの糖質コルチコイドの分泌促進

後葉

バソプレシン

血圧の上昇,腎臓での水分の再吸収を促進

甲状腺

チロキシン

代謝を促進,成長と分化を促進

副甲状腺

パラトルモン

血液中のCa2+量を増加

副腎

髄質

アドレナリン

グリコーゲンの分解を促進し,血糖濃度を増加

皮質

糖質コルチコイド

糖の代謝を促進,血糖濃度を増加

鉱質コルチコイド

腎臓でのNa+の再吸収とK+の排出を促進




すい臓





ランゲル

ハンス島

インスリン

グリコーゲンの合成と,組織での糖の消費を促進し,血糖濃度を減少

グルカゴン

グリコーゲンの分解を促進し,血糖濃度を増加

















(覚え方)ずいずいアドレナリン(髄質、アドレナリンを分泌)


(覚え方)骨からカルシウムがパラパラとれるよパラトルモン(パラトルモンは骨からのカルシウムイオン放出を促進)
パラトルモンは血中のカルシウム濃度を上昇させる












(覚え方)インスリンリン、Bellの音(インスリンはB細胞から分泌される)



(覚え方)宇宙恐竜グルカゴーン!ボカーン!(グルカゴンはグリコーゲンを壊して、血中にグルコースを放出させる命令を肝臓に送る)




(2)視床下部と脳下垂体 ホルモン分泌の調節は視床下部と脳下垂体で行われ,次の2つの経路がある。
① 視床下部の神経分泌細胞から血液中に分泌される放出ホルモンや放出抑制ホルモンのはたらきによって,脳下垂体前葉から分泌されるホルモン量が調節される。 例)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
② 視床下部の神経分泌細胞から脳下垂体後葉までホルモンが運ばれ,後葉内の血液中にホルモンが直接放出される。
例)バソプレシン 
(3)フィードバック:最終的につくられた物質がはじめの段階に戻って作用することをフィードバックという。動物体内でホルモンの分泌量が一定の範囲内に保たれているのは,このフィードバック調節のしくみがあるためである。
(4)血糖量調節 血糖濃度調節の中枢は間脳の視床下部にあって,ヒトではほぼ0.1%(0.1g/100mL)に保たれている。
高血糖の時:間脳視床下部から副交感神経で膵臓ランゲルハンス島B細胞へ・・・インスリン分泌
低血糖の時:①間脳視床下部から交感神経で副腎髄質へ・・・アドレナリン分泌
②間脳視床下部から交感神経で膵臓ランゲルハンス島A細胞へ・・・グルカゴン分泌
③間脳視床下部から脳下垂体前葉→副腎皮質へ・・・糖質コルチコイド分泌
(5)体温調節:哺乳類や鳥類などの恒温動物では,体温を一定に保つしくみが発達している。寒いときの調節方法
①発熱量の調節:外温の変化に応じて組織の代謝量を変化させ,発熱量を調節する。
②放熱量の調節:皮膚の毛細血管の収縮・拡張,発汗量の増減,立毛筋の収縮・弛緩,皮下脂肪の増減,換毛・換羽(夏毛と冬毛)








2017年2月4日土曜日

反転授業用「生物基礎・獲得免疫」


免疫のリアル授業はこちら
MHC

テーマ:獲得免疫







T「前回は自然免疫について学んだのだった。自然免疫のデメリットは何だったかな?君」




「確か、抗原の情報を記憶できない、つまり、免疫記憶を保てません」


T「その通り。好中球などの食細胞は、抗原を覚えることができないのだ」





T「今日は獲得免疫について話そうと思う
。この仕組みは強力で、しかも、免疫記憶を形成できる。一度目に侵入した抗原の情報を覚え、再び侵入してきたときにはあっという間に殲滅してしまう。唯一の問題は、初回の効果があらわれるまでに時間がかかると言うことだ」



「その間に死んでしまうなんてことはありませんか?」


T「いい質問だ。あり得る。このしくみで守れないくらい強力な病原体、または対処が間に合わないくらい高速で増えてしまうような病原体があらわれたとき、私たちの体は死に直面することになる」


T「さて話を戻して、今日は体液性免疫と細胞性免疫という、2種の獲得免疫を紹介したい」










T「まずは体液性免疫についてみてみよう」

T「獲得免疫は樹状細胞が食作用で敵を食べるところから始まる。樹状細胞は、食べた抗原(抗体の標的になるような異物を抗原という)の断片を、ヘルパーT細胞というリンパ球に提示し(この作業を抗原提示という)、その情報を伝える」


「リンパ球とは何ですか」

T「リンパ球とは、白血球の中の1グループだ。これから登場するT細胞、B細胞はリンパ球に分類される」







「T細胞とは?Tとは何ですか?」


T「T細胞のTとは、胸腺(Thymus)の頭文字で、このタイプの白血球が、骨髄で作られた後、胸腺で分化することから名付けられた」





T「ヘルパーT細胞は、B細胞という別の細胞を活性化させる」


「ややこしい話ですね!今度のBって奴は何ものです?」


T「B細胞はT細胞と同様骨髄で作られ、主に骨髄(Bone)で成熟するリンパ球だ」


T「B細胞は、抗体産生細胞という細胞に分化し、マシンガンのように抗体を体液中にばらまく」





「抗体とは?」


T「抗体とは、Y字のような形をしたタンパク質(免疫グロブリンというタンパク質が抗体の本体だ)のことで、抗原にくっついて無毒化してしまうんだ。その後、白血球の中で最も数が多い好中球やマクロファージに食作用で処理される」





T「さあ、流れをおさらいしよう。樹状細胞はヘルパーT細胞に抗原提示する。

→ヘルパーT細胞はB細胞を活性化する。


→B細胞は抗体産生細胞に分化(細胞が特定の機能を持つようになることを『分化』という)し、抗体を産生、抗原をやっつける!」







T「抗体に捉えられた抗原は、マクロファージに食べられやすくなっている。マクロファージは無毒化された抗原を食作用で分解する」



T「獲得免疫にはもうひとつ別の仕組みもある。それは『細胞性免疫』といって、キラーT細胞(こちらも、ヘルパーT細胞と同様、リンパ球というグループの白血球である)という細胞が、病原体に感染したを殺傷するしくみだ」


T「キラーT細胞も樹状細胞から抗原提示をうけて活性化される。キラーT細胞は、病原体に感染した細胞を直接殺すことができるため、抗体が入っていけない細胞内で増殖する病原体(結核菌など)の殲滅に対して有効だ」






T「また、ヘルパーT細胞は、活性化すると、マクロファージの食作用を強化するように働きかけることが知られている」



「免疫記憶とは実際何なのです?白血球に脳みそでもあって、記憶するんですか?」


T「T細胞やB細胞の一部は『記憶細胞』となって、体内に眠り続け、次回の同じ抗原の侵入に備えるのだ。『記憶細胞』の寿命は何十年スケールだとも言われているが詳しいことはわかっていない」



T「2度目に同じ立体構造を持った
抗原が侵入すると、記憶B細胞が素早く増殖・抗体産生細胞に分化し、大量の抗体をつくるのだ」
















「記憶細胞は、僕も持っていますか?」


T「もちろん!ありとあらゆる種類の記憶細胞を持っているよ。例えば、結核菌に対する予防接種をうけたことがあるだろう。あれは、結核菌に対する記憶細胞を体内につくりだすための注射だったのだ」

*学生による自習ノート


























































































































●参考


1.獲得免疫:自然免疫で処理しきれなかった異物に対してはたらく。獲得免疫は,一度体内に入ってきたウイルスや毒素などの異物を抗原として記憶し,二度目からは同じ異物を短時間で排除する免疫で,体液性免疫と細胞性免疫がある。

*T 細胞は胸腺(Thymus)で分化することから,このような名前がつけられている。

① 体液性免疫:外から体内に侵入した抗原を樹状細胞やマクロファージが食作用によって取りこんで分解し,その後,抗原を細胞表面へ移動させて細胞外に提示する(抗原提示)。これをヘルパーT細胞が認識する。

 すると,この抗原に対応するB細胞が抗体産生細胞へと分化し,抗原と特異的に反応する物質(抗体)をつくって血しょう(体液)中に放出する。抗体の本体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質で,抗原と特異的に結合(抗原抗体反応)して抗原を無毒化する。

② 細胞性免疫:もともと細胞性、という語は、ヘルパーT細胞による『食細胞』の活性化からきている。しかしキラーT細胞に注目した問題が多いので、キラーT『細胞』による免疫、と覚えるとよい。細胞性免疫は、抗体によるのではなく,リンパ球が抗原に対して直接的に免疫反応を行う。抗原提示を受けたヘルパーT細胞は提示された抗原に対応するキラーT細胞の増殖も促進する。これによって増殖したキラーT細胞はウイルスなどに感染した細胞やがん細胞などの異物を直接攻撃して破壊する。臓器移植を行うと拒絶反応が起こる場合があるのは,移植された他人の細胞をキラーT細胞が攻撃するためである。

2.免疫記憶 抗原の侵入に対してつくられたT細胞やB細胞の一部は記憶細胞となり,同じ抗原が2回目以降に侵入した際,速やかに増殖して,多量の抗体をつくることで,短時間で異物を排除する。これを免疫記憶という。抗原の1回目の侵入に対する時間のかかる応答を一次応答,2回目以降の侵入に対する速やかな応答を二次応答という。

参考 抗体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質でできている。抗体には,種類によって構造が異なる可変部とよばれる部分があり,その構造と合致する特定の抗原としか結合できないようになっている。

3.免疫と病気

① 日和見感染:病原性の低い病原体(カンジダ菌など)に感染・発病することがある。

② エイズ(AIDS,後天性免疫不全症候群):HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はT細胞にだけ感染してこれを破壊するため,細胞性免疫や体液性免疫のはたらきが低下する。そのため,健康なヒトでは発病しないような弱い病原体にも感染し,発病してしまう。

補足 生まれつき胸腺などの免疫のしくみにかかわる臓器の一部や免疫にかかわる細胞がない場合,免疫機構がはたらかない。これを先天性免疫不全という。

③ アレルギー:抗原に対する免疫反応のうち,不都合な症状が過敏に出る場合のことで,全く無害なはずの抗原に対しても,じんましん,ぜんそく,鼻炎,結膜炎などの症状が現れる。アレルギーを引き起こす原因となる抗原物質をアレルゲンという。

④ 自己免疫疾患:自分自身の正常な細胞を抗原と認識して,免疫反応が起こること。関節リウマチやⅠ型糖尿病などが知られている。

4.免疫の応用

① ワクチンと予防接種:死滅させたウイルスや細菌,不活化させた毒素,または弱毒化した病原体などを前もって接種しておくと,体内に抗体がつくられて病気などの予防に役立つ。このような方法を予防接種といい,あらかじめ接種する無毒化または弱毒化したウイルスや細菌などをワクチンという。二次応答の応用である。例 )インフルエンザ,ポリオ,結核の予防接種

② 血清療法 ウマなどにワクチンを注射して抗体をつくらせておき,その抗体を含む血清を患者に直接注射する。即効性がある。

 例 )ヘビなどの毒,破傷風の治療


血液型

A型

B型

AB型

O型

凝集原

(赤血球の表面)

A

B

AとB

なし

凝集素

(血しょう)

β

α

なし

αとβ

参考 血液型と抗原抗体反応

ABO式血液型で,異なる血液型の血液を混ぜ合わせると,血液凝集が起こる。これは抗原抗体反応の一種であるが,抗体に相当する凝集素が生まれつき存在している点で,通常の免疫と異なる。

赤血球の表面には,ABO式血液型にかかわる多糖類とタンパク質からなる凝集原(抗原)があり,AとBの2種類がある。また,血しょう中には凝集原Aと特異的に結合する凝集素(抗体)αと凝集原Bと特異的に結合する凝集素βがある。凝集原Aと凝集素α,凝集原Bと凝集素βが混ざると赤血球の凝集が起こる。このため,輸血には同じ血液型の血液が用いられる場合が多い。



*学生による議論

A「免疫はなんてすごいしくみなんだ!」

B「でも、逆に体に害を起こすこともあるね」

C「たとえば、花粉症などのアレルギーは、免疫の過剰反応だね」

A「どう解決すれば良いと思う?」

D「当然免疫を抑制させる薬を使うのさ」

B「免疫系をダウンさせるの?しかし、それでは、本当の病原体に感染してしまうよ」

C「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)がヘルパーT細胞に感染して発症する疾患、エイズ(後天性免疫不全症候群)についてももう少し調べてみたい。日和見感染をひきおこしてしまうことがあるらしい」

A「がんも大きな敵だね。がん細胞は、様々な手を使って、免疫から逃れようとするらしい」

B「私の借りた免疫の本には『自然発生がんは強力に免疫寛容を誘導する』とあるよ。免疫寛容というのは、主に自己成分に『免疫を起こさないようにする仕組み』のはずだから、がんはこのしくみを悪用しているんだね」

D「NK細胞を大量につくれればなあ!」

C「近年話題になっているiPS細胞を用いて、NK細胞をたくさんつくれないのかなあ」

D「うーん、いろいろ調べてみても、がん治療に関係する論文は、難しくて読みこなせないよ」

A「ネットの情報もわかりにくい。どこまで信頼して良い情報か、私たちではまだ判断できないんじゃないかな」

B「これは先生に聞いた方が良さそうだね。後でみんなで先生の所に行ってみよう」