2017年1月24日火曜日

反転授業用「生物基礎・細胞」


テーマ:細胞





T「簡単な顕微鏡を用いてコルク片を観察したフックは、1665年、ロンドン王立学会で、コルクがたくさんの小部屋の集まりであり、この部屋をcellと名付けたと発表した。フックが見た構造は、植物細胞が死んだ後に残った外側の『細胞壁』だけだったのだが、細胞という名前は残った。その後、1838年に植物学者のシュライデンが、1839年に動物学者シュワンが論文を出版した。彼らは、光学顕微鏡を用いてそれぞれ植物組織と動物組織を観察し、その結果、細胞がすべての生体組織の構成単位であることがわかったのである」




T「フックという人を知っているかね?弾性の法則を発見した、ニュートンのライバルだ」

学生は反応しなかったり、頷いたりしている。

T「フックは好奇心旺盛な学者であった。彼はコルクの切片を見ていた際に蜂の巣状の構造を見つけ、そのひとつの区画を細胞と形容した。フックの見た細胞は、実際には細胞壁に囲まれた死んだ細胞だったが、細胞が植物体をつくる基本の構成単位であることから、この言葉は適切である」

「コルクだけでなく人にも細胞はありますか」

T「当然だ!全生物は細胞から成る。人はおよそ60兆個の細胞から成ると言われている」

T「しかし、人と植物を比べようとした視点は素晴らしい。確かに、人の細胞と植物の細胞にはいくらか違いがある」

T「まず動物細胞から研究をはじめようと思う」

Tは黒板に動物細胞の絵を描いた。










ミトコンドリアとは何ですか」

T「これは、呼吸に関係する細胞小器官だ」

「細胞小器官とは何ですか」


T「細胞小器官とは、細胞内で色々な働きを行う装置のことだと思えばいい。厳密な定義はない。家の中に家具があるように、細胞の中には様々な働きをする細胞小器官がある」

「呼吸とは何ですか。ミトコンドリアには肺があるのですか。」

「いやいや、我々がこれから論じる呼吸とは、肺呼吸とは異なる(それを強調するために、肺でのガス交換を「肺呼吸」、ミトコンドリアが関わる呼吸を「細胞呼吸」などと呼び分けることもある)。呼吸とは、酸素を用いて有機物、例えば糖(炭水化物)などを分解することだ。これを異化と言ったね。呼吸は異化反応のひとつだ。この反応のおかげで、我々は食物からエネルギーを取り出せるのだ」
「息を止めてみよう」





「っはあ!とても絶えられない!肺呼吸は、細胞呼吸を行っている細胞のためのしくみなんだ」
「酸素がないと死んでしまうのは、究極的にはミトコンドリアにおける細胞呼吸が止まってしまうのが原因だ」


「水が生じるのはなぜですか?」




T「申し訳ないが、詳しくは基礎無し生物でしか学べない。我々は食べ物のもつ高エネルギーの電子を利用して体内でATPを合成している。その電子を食べ物から抜き取るためには、その電子の『行き着く先』が必要なのだ。その『行き着く先』が酸素であり、電子は水素と共に酸素と結合し、水が生じる」



T「話を細胞膜に移そう」
「細胞膜の、輸送の働きとは?」

T「細胞膜はただ細胞内部と外界を仕切っているだけではない。細胞膜には様々なタンパク質が埋め込まれており、そこを通って様々な物質が輸送されるのだ」



T「これが細胞膜のモデルだ。細胞膜自体はただの油の膜だが、そこには様々なタンパク質が埋め込まれている」








T「他に気になることは?」

「核の中には染色体があると書かれていますが、DNAの間違いでは?」

T「実は、染色体とは、主にDNAとタンパク質が結びついたものを指すんだ」

T「核は、人の赤血球(酸素を運ぶためにスリム化し、核すら捨てる)など、一部の特殊な細胞を除いて、ほぼすべての細胞がもつ。核の中には、このような染色体が入っている(Tは紐がゴムボールにくっついたものを披露した)」





T「これが染色体だ。紐の部分はDNA。DNAはテニスボールのようなタンパク質に巻き付いて存在している。このボールのようなヒストンというタンパク質には、DNAをコンパクトにまとめたり、DNA上の遺伝子の発現を制御したりする役割がある」

T「植物細胞や、原核生物の細胞(原核細胞という)についても見ておこう」




T「植物細胞と動物細胞の違いは、植物細胞は細胞膜(これが裸の兵士の皮膚だと思え)の外側に強靭な細胞壁(セルロースという糖が主成分だ)という鎧を持つということだ」

T「実際のセルロースは柔軟性がある。しかし、引っ張る力に耐える強度は鋼鉄に匹敵する!」
T「また、これは余談だが、セルロースは地球上で最も多い高分子化合物と言われている」










T「また、一部の植物細胞は細胞内部に葉緑体を持ち光合成を行う」



T「成長した植物細胞で目に見えて目立つ(動物細胞にも存在はする)のは、液胞という細胞小器官だ。1枚の膜で包まれ、色々なものを貯蔵している。例えば、アントシアンなどのきれいな色素を含むものもある。成長した植物細胞では、中央に巨大な液胞が陣取り、核は端に追いやられてしまう」

T「また、後で学習するが、原核細胞でできた原核生物という、動物でも植物でも、菌類でもない生物が存在する。細菌(細菌と菌がまったく別物だ!)がこの原核生物というグループに属する。原核生物は1個の原核細胞からなり、そのDNAは核膜で包まれていない。また、植物とはまったく別の成分でできた細胞壁を持つ」



*学生の自習ノート








































*学生による議論

A「おい。資料集におかしい記述がある。シアノバクテリアという生物は葉緑体をもたないと書いてあるぜ」

B「どこがおかしいの?」

C「おかしいよ!だってシアノバクテリアは光合成を行うんだ!しかも、何を隠そう、僕はネンジュモというシアノバクテリアを校庭で見たんだ。紛れもなく緑色だったぞ!」

D「いや、資料集が正しいよ。シアノバクテリアは、『光合成色素』や、『光合成をおこなうためのたくさんの種類の酵素』を持ってはいるが、葉緑体という構造は持たないらしい」

B「この記述を見て。葉緑体内部の構造を、このシアノバクテリアは持ってる、と書いてある」

A「そうだったのか。なんだか、葉緑体は、まるでシアノバクテリアのようだね」

C「もしかして、実は葉緑体は、昔シアノバクテリアだったんじゃないかな?」

B「まさか!細胞が細胞を取り込んだまま、互いに共生するなんて!考えられない!」

D「そうかなあ・・。あり得る気がするけれど・・・」


●参考資料




細胞の構造体

構 造

はたらき


核 膜

2 枚の薄い膜からなり,核膜孔とよばれる小さな穴が多数ある。核膜孔は核と細胞質の間での物質の通路となる

核の保護

物質の出入りの調節

染色体

DNA(デオキシリボ核酸)とタンパク質からなる。通常は糸状であるが,細胞分裂時には凝縮して太く短いひも状になる。酢酸カーミンや酢酸オルセインなどの塩基性色素で染まる

DNA は遺伝子の本体

細胞質

ミトコンドリア

内外2 枚の膜で包まれ, DNA を含む。ヤヌスグリーンで染まる

(覚え方)三鷹は高級住宅地(ミトコンドリア、呼吸、二重膜)

呼吸によって有機物を分解し,ATP(アデノシン三リン酸)を供給

葉緑体

内外2 枚の膜で包まれ,光合成色素が存在する。DNA を含む 

光合成によって光エネルギーを吸収し,デンプンなどの有機物を合成

細胞膜

リン脂質とタンパク質からなる厚さ5 10nmの薄い膜

物質の出入りの調節

リボソーム

RNAとタンパク質からなる小さな構造体。小胞体の表面に付着しているものと,細胞質に散在しているものがある

タンパク質の合成(翻訳に関与)

リソソーム

1 枚の膜からなる球状の構造体。加水分解酵素を含む

細胞内消化

液 胞

内部の細胞液には有機物,無機塩類,色素(アントシアン)などが溶けている。成長した植物細胞でよく発達している

老廃物の貯蔵

細胞質基質

細胞内の液体成分であり,酵素など各種タンパク質やRNAなどを含む

解糖(酸素を使わない異化反応)によって有機物を分解し,ATP を供給

細胞骨格

細胞質基質全体に広がる繊維状の構造。細胞内に張り巡らされ、細胞の形の決定や維持に関係する。アメーバ運動や原形質流動、べん毛運動などの細胞運動にも関与する。

細胞の形の維持

細胞の運動

細胞内の物質輸送

細胞壁

セルロースを主成分とする丈夫な構造(菌類や原核生物の細胞壁はセルロースでできていない)

(覚え方)セールで買うから平気(セルロース、細胞壁)

植物細胞の保護と形の維持



反転授業用「生物基礎・生物の共通性」





テーマ:生物の共通性


T「生物は地球上に見つかっているだけで180万種類といわれている。さて、そもそも生物とは何か?」
T教授は学生に話しかける。

「もちろん生きているものです」

T「生きているとは?」

「それは・・・」

T「例えばある種の機械はよく動き、よく反応する。酸素を取り込み、内部でエネルギーを生産し、二酸化炭素を排出している。この機械はどうして生きていないのか?」


「しかし、機械は成長しません!」




T「なるほど。成長するしないが生物の定義を決めるのかね?では、もうこれ以上成長しない老人は生き物ではない?もちろんばかげているね」



学生達は騒ぎ出す。こんな声が大教室の隅から聞こえてきた。

「生物は子を作れます!」

T「なるほど、しかし、元気のいい君。君は雌馬と雄ロバの子、ラバを知っているかな?ラバは子を残さない。ラバは草を食べ、草原を駆け回るよ?それでも生きていないって言うのか?」

「生物は細胞でできています」

T「その通り。君が答えてくれたような考え方を細胞説という。しかし君の木の机も細胞でできているね?ちがうかい?死んだ魚はどうかな?細胞でできているから生きている?」

「生物は・・・エネルギーを使います。有機物を分解し、エネルギーを取り出し、そのエネルギーを使って、色々な反応を行います!」

T「うむ。素晴らしい。『有機物の分解』のような、エネルギーの放出を伴う分解反応を異化、そしてエネルギーを用いて行う何かを合成するような反応を同化という。異化と同化はあわせて代謝と呼ばれる。代謝という言葉は聞いたことがあるだろうね。これについては後で学ぼう。今は、あなた方が教えてくれた、生物に共通する驚くべき特徴に注目しよう」


T「生物がある種の共通性を持つのは、『共通の祖先から進化してきたから』である。ゾウリムシと私も、同じ共通点をもつ。それは、私とゾウリムシがはるか昔に現れた共通祖先から枝分かれして進化してきたからである」











 
T「生物の体内環境を一定に保つ性質を『恒常性』という。たとえば、君たちの体温は37度付近に保たれている。80度近いサウナの中でさえ!」

T「また、生物基礎では学ばないが、刺激に反応する性質も生物の1つの特徴だ」

「代謝の下に書かれている、ATPとは何ですか」

T「ATP(正式名称をアデノシン三リン酸という)とは、エネルギーを溜めている物質である。私たち生物は、得たエネルギーをATPの中に込めてから、様々な反応(筋収縮や発光、物質の合成[同化]など)に用いている」


T「ATPはエネルギーの共通通貨ともよばれる。食事やファッションなど、やりたいことは様々だが、すべて共通して『お金』を使うだろう。同じように、様々な生命現象があるが、それれらを促進させるためにはATPの中のエネルギーが必要だ」


T「ATPは次のような構造を持つ」






T「この、リン酸とリン酸の間結合を高エネルギーリン酸結合という。この結合にエネルギーが蓄えられている。難しい話だが、納得してほしい」

(これは発展的な話だが、ATP内のリン酸は負に帯電しており、互いに反発し、不安定な状態にある。そして実は、切り離された後のリン酸のほうが、ATP内に存在するときより安定な状態にある。安定ということはエネルギーレベルが低いと考えてよいので、この差分が放出されるエネルギーの起源である)


T「もう一度確認するが、ATPの正式名称はアデノシン三リン酸という。アデニンという塩基(よわい塩基性をもつ窒素を含む化学物質だ)と、リボースという糖(『ース』が糖の名称の特徴である。中学校で習った有名な糖にグルコ『ース』があるが、リボ『ース』は別の種類の糖だ)、3つのリン酸がくっついたものだ」


T「アデニンとリボースが結合した物質をアデノシンという。つまり、ATPはアデノシンに3つのリン酸が結合した物質だ。したがってアデノシン三リン酸という」
















T「ATPがリン酸を1つ手放し、エネルギーを失うと、ADPとよばれる物質になる」




T「ATPはすべての生物が持つため、食品工場などでは細菌の検出にATP検出器を使っている」


「どうしてすべての生物がATPとやらを使うのです?」


T「1つの答えは、生物の共通祖先がATPをつかっていたから、だが、それがどうしてか、確定的なことはわからない。」

*学生の自習ノート






























*学生による議論

A「なんだか、代謝というものがよくわからないね」

B「体内で起こる化学反応の総称ということでいいんじゃないかな」

A「異化と同化と代謝はどう違うんだ?」

C「どうやら、異化と同化は化学反応のざっくりした分類で、それらの反応を大きくくくって代謝というらしいね」

D「代謝には、酵素という、化学反応を促進する物質が関わるらしいよ」

B「なるほど。生き物の体の中では、酵素によってさまざまな反応が促進されていて、そのような反応をすべてひっくるめて代謝というのか」

A「うん。そして、その雑多な化学反応を、エネルギーを吸収しながら行うものか、エネルギーを放出しながら行うものかで分けた場合、前者を同化、後者を異化と呼ぶんだ。エネルギーの出入りや変換をエネルギー代謝ともいうらしい。」

C「異化と同化についていくら調べても、細かい定義は出てこない。この分類は、細かく正確なものではなく、おおまかな分類らしいね」