テーマ:生物の共通性
T「生物は地球上に見つかっているだけで180万種類といわれている。さて、そもそも生物とは何か?」
T教授は学生に話しかける。
「もちろん生きているものです」
T「生きているとは?」
「それは・・・」
T「例えばある種の機械はよく動き、よく反応する。酸素を取り込み、内部でエネルギーを生産し、二酸化炭素を排出している。この機械はどうして生きていないのか?」
「しかし、機械は成長しません!」
T「なるほど。成長するしないが生物の定義を決めるのかね?では、もうこれ以上成長しない老人は生き物ではない?もちろんばかげているね」
学生達は騒ぎ出す。こんな声が大教室の隅から聞こえてきた。
「生物は子を作れます!」
T「なるほど、しかし、元気のいい君。君は雌馬と雄ロバの子、ラバを知っているかな?ラバは子を残さない。ラバは草を食べ、草原を駆け回るよ?それでも生きていないって言うのか?」
「生物は細胞でできています」
T「その通り。君が答えてくれたような考え方を細胞説という。しかし君の木の机も細胞でできているね?ちがうかい?死んだ魚はどうかな?細胞でできているから生きている?」
「生物は・・・エネルギーを使います。有機物を分解し、エネルギーを取り出し、そのエネルギーを使って、色々な反応を行います!」
T「うむ。素晴らしい。『有機物の分解』のような、エネルギーの放出を伴う分解反応を異化、そしてエネルギーを用いて行う何かを合成するような反応を同化という。異化と同化はあわせて代謝と呼ばれる。代謝という言葉は聞いたことがあるだろうね。これについては後で学ぼう。今は、あなた方が教えてくれた、生物に共通する驚くべき特徴に注目しよう」
T「生物がある種の共通性を持つのは、『共通の祖先から進化してきたから』である。ゾウリムシと私も、同じ共通点をもつ。それは、私とゾウリムシがはるか昔に現れた共通祖先から枝分かれして進化してきたからである」
T「生物の体内環境を一定に保つ性質を『恒常性』という。たとえば、君たちの体温は37度付近に保たれている。80度近いサウナの中でさえ!」
T「また、生物基礎では学ばないが、刺激に反応する性質も生物の1つの特徴だ」
「代謝の下に書かれている、ATPとは何ですか」
T「また、生物基礎では学ばないが、刺激に反応する性質も生物の1つの特徴だ」
「代謝の下に書かれている、ATPとは何ですか」
T「ATP(正式名称をアデノシン三リン酸という)とは、エネルギーを溜めている物質である。私たち生物は、得たエネルギーをATPの中に込めてから、様々な反応(筋収縮や発光、物質の合成[同化]など)に用いている」
T「ATPはエネルギーの共通通貨ともよばれる。食事やファッションなど、やりたいことは様々だが、すべて共通して『お金』を使うだろう。同じように、様々な生命現象があるが、それれらを促進させるためにはATPの中のエネルギーが必要だ」
T「ATPは次のような構造を持つ」
T「この、リン酸とリン酸の間結合を高エネルギーリン酸結合という。この結合にエネルギーが蓄えられている。難しい話だが、納得してほしい」
(これは発展的な話だが、ATP内のリン酸は負に帯電しており、互いに反発し、不安定な状態にある。そして実は、切り離された後のリン酸のほうが、ATP内に存在するときより安定な状態にある。安定ということはエネルギーレベルが低いと考えてよいので、この差分が放出されるエネルギーの起源である)
T「もう一度確認するが、ATPの正式名称はアデノシン三リン酸という。アデニンという塩基(よわい塩基性をもつ窒素を含む化学物質だ)と、リボースという糖(『ース』が糖の名称の特徴である。中学校で習った有名な糖にグルコ『ース』があるが、リボ『ース』は別の種類の糖だ)、3つのリン酸がくっついたものだ」
T「アデニンとリボースが結合した物質をアデノシンという。つまり、ATPはアデノシンに3つのリン酸が結合した物質だ。したがってアデノシン三リン酸という」
T「ATPがリン酸を1つ手放し、エネルギーを失うと、ADPとよばれる物質になる」
T「ATPはすべての生物が持つため、食品工場などでは細菌の検出にATP検出器を使っている」
「どうしてすべての生物がATPとやらを使うのです?」
T「1つの答えは、生物の共通祖先がATPをつかっていたから、だが、それがどうしてか、確定的なことはわからない。」
*学生による議論
A「なんだか、代謝というものがよくわからないね」
B「体内で起こる化学反応の総称ということでいいんじゃないかな」
A「異化と同化と代謝はどう違うんだ?」
C「どうやら、異化と同化は化学反応のざっくりした分類で、それらの反応を大きくくくって代謝というらしいね」
D「代謝には、酵素という、化学反応を促進する物質が関わるらしいよ」
B「なるほど。生き物の体の中では、酵素によってさまざまな反応が促進されていて、そのような反応をすべてひっくるめて代謝というのか」
A「うん。そして、その雑多な化学反応を、エネルギーを吸収しながら行うものか、エネルギーを放出しながら行うものかで分けた場合、前者を同化、後者を異化と呼ぶんだ。エネルギーの出入りや変換をエネルギー代謝ともいうらしい。」
C「異化と同化についていくら調べても、細かい定義は出てこない。この分類は、細かく正確なものではなく、おおまかな分類らしいね」