2017年2月4日土曜日

反転授業用「生物基礎・獲得免疫」


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MHC

テーマ:獲得免疫







T「前回は自然免疫について学んだのだった。自然免疫のデメリットは何だったかな?君」




「確か、抗原の情報を記憶できない、つまり、免疫記憶を保てません」


T「その通り。好中球などの食細胞は、抗原を覚えることができないのだ」





T「今日は獲得免疫について話そうと思う
。この仕組みは強力で、しかも、免疫記憶を形成できる。一度目に侵入した抗原の情報を覚え、再び侵入してきたときにはあっという間に殲滅してしまう。唯一の問題は、初回の効果があらわれるまでに時間がかかると言うことだ」



「その間に死んでしまうなんてことはありませんか?」


T「いい質問だ。あり得る。このしくみで守れないくらい強力な病原体、または対処が間に合わないくらい高速で増えてしまうような病原体があらわれたとき、私たちの体は死に直面することになる」


T「さて話を戻して、今日は体液性免疫と細胞性免疫という、2種の獲得免疫を紹介したい」










T「まずは体液性免疫についてみてみよう」

T「獲得免疫は樹状細胞が食作用で敵を食べるところから始まる。樹状細胞は、食べた抗原(抗体の標的になるような異物を抗原という)の断片を、ヘルパーT細胞というリンパ球に提示し(この作業を抗原提示という)、その情報を伝える」


「リンパ球とは何ですか」

T「リンパ球とは、白血球の中の1グループだ。これから登場するT細胞、B細胞はリンパ球に分類される」







「T細胞とは?Tとは何ですか?」


T「T細胞のTとは、胸腺Thymus)の頭文字で、このタイプの白血球が、骨髄で作られた後、胸腺で分化することから名付けられた」





T「ヘルパーT細胞は、B細胞という別の細胞を活性化させる」


「ややこしい話ですね!今度のBって奴は何ものです?」


T「B細胞はT細胞と同様骨髄で作られ、主に骨髄(Bone)で成熟するリンパ球だ」


T「B細胞は、抗体産生細胞という細胞に分化し、マシンガンのように抗体を体液中にばらまく」





「抗体とは?」


T「抗体とは、Y字のような形をしたタンパク質(免疫グロブリンというタンパク質が抗体の本体だ)のことで、抗原にくっついて無毒化してしまうんだ。その後、白血球の中で最も数が多い好中球やマクロファージに食作用で処理される





T「さあ、流れをおさらいしよう。樹状細胞はヘルパーT細胞に抗原提示する。

→ヘルパーT細胞はB細胞を活性化する。


→B細胞は抗体産生細胞に分化(細胞が特定の機能を持つようになることを『分化』という)し、抗体を産生、抗原をやっつける!」







T「抗体に捉えられた抗原は、マクロファージに食べられやすくなっている。マクロファージは無毒化された抗原を食作用で分解する」



T「獲得免疫にはもうひとつ別の仕組みもある。それは『細胞性免疫』といって、キラーT細胞(こちらも、ヘルパーT細胞と同様、リンパ球というグループの白血球である)という細胞が、病原体に感染したを殺傷するしくみだ」


T「キラーT細胞も樹状細胞から抗原提示をうけて活性化される。キラーT細胞は、病原体に感染した細胞を直接殺すことができるため、抗体が入っていけない細胞内で増殖する病原体(結核菌など)の殲滅に対して有効だ」






T「また、ヘルパーT細胞は、活性化すると、マクロファージの食作用を強化するように働きかけることが知られている」



「免疫記憶とは実際何なのです?白血球に脳みそでもあって、記憶するんですか?」


T「T細胞やB細胞の一部は『記憶細胞』となって、体内に眠り続け、次回の同じ抗原の侵入に備えるのだ。『記憶細胞』の寿命は何十年スケールだとも言われているが詳しいことはわかっていない」



T「2度目に同じ立体構造を持った
抗原が侵入すると、記憶B細胞が素早く増殖・抗体産生細胞に分化し、大量の抗体をつくるのだ」
















「記憶細胞は、僕も持っていますか?」


T「もちろん!ありとあらゆる種類の記憶細胞を持っているよ。例えば、結核菌に対する予防接種をうけたことがあるだろう。あれは、結核菌に対する記憶細胞を体内につくりだすための注射だったのだ」

*学生による自習ノート


























































































































●参考


1.獲得免疫:自然免疫で処理しきれなかった異物に対してはたらく。獲得免疫は,一度体内に入ってきたウイルスや毒素などの異物を抗原として記憶し,二度目からは同じ異物を短時間で排除する免疫で,体液性免疫と細胞性免疫がある。

T 細胞は胸腺(Thymus)で分化することから,このような名前がつけられている。

体液性免疫:外から体内に侵入した抗原を樹状細胞やマクロファージが食作用によって取りこんで分解し,その後,抗原を細胞表面へ移動させて細胞外に提示する(抗原提示)。これをヘルパーT細胞が認識する。

 すると,この抗原に対応するB細胞抗体産生細胞へと分化し,抗原と特異的に反応する物質(抗体)をつくって血しょう(体液)中に放出する。抗体の本体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質で,抗原と特異的に結合(抗原抗体反応)して抗原を無毒化する。

細胞性免疫:もともと細胞性、という語は、ヘルパーT細胞による『食細胞』の活性化からきている。しかしキラーT細胞に注目した問題が多いので、キラーT『細胞』による免疫、と覚えるとよい。細胞性免疫は、抗体によるのではなく,リンパ球が抗原に対して直接的に免疫反応を行う。抗原提示を受けたヘルパーT細胞は提示された抗原に対応するキラーT細胞の増殖も促進する。これによって増殖したキラーT細胞はウイルスなどに感染した細胞やがん細胞などの異物を直接攻撃して破壊する。臓器移植を行うと拒絶反応が起こる場合があるのは,移植された他人の細胞をキラーT細胞が攻撃するためである。

2.免疫記憶 抗原の侵入に対してつくられたT細胞やB細胞の一部は記憶細胞となり,同じ抗原が2回目以降に侵入した際,速やかに増殖して,多量の抗体をつくることで,短時間で異物を排除する。これを免疫記憶という。抗原の1回目の侵入に対する時間のかかる応答を一次応答,2回目以降の侵入に対する速やかな応答を二次応答という。

参考 抗体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質でできている。抗体には,種類によって構造が異なる可変部とよばれる部分があり,その構造と合致する特定の抗原としか結合できないようになっている。

3.免疫と病気

日和見感染:病原性の低い病原体(カンジダ菌など)に感染・発病することがある。

エイズAIDS,後天性免疫不全症候群):HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はT細胞にだけ感染してこれを破壊するため,細胞性免疫や体液性免疫のはたらきが低下する。そのため,健康なヒトでは発病しないような弱い病原体にも感染し,発病してしまう。

補足 生まれつき胸腺などの免疫のしくみにかかわる臓器の一部や免疫にかかわる細胞がない場合,免疫機構がはたらかない。これを先天性免疫不全という。

アレルギー:抗原に対する免疫反応のうち,不都合な症状が過敏に出る場合のことで,全く無害なはずの抗原に対しても,じんましん,ぜんそく,鼻炎,結膜炎などの症状が現れる。アレルギーを引き起こす原因となる抗原物質をアレルゲンという。

自己免疫疾患:自分自身の正常な細胞を抗原と認識して,免疫反応が起こること。関節リウマチやⅠ型糖尿病などが知られている。

4.免疫の応用

ワクチン予防接種:死滅させたウイルスや細菌,不活化させた毒素,または弱毒化した病原体などを前もって接種しておくと,体内に抗体がつくられて病気などの予防に役立つ。このような方法を予防接種といい,あらかじめ接種する無毒化または弱毒化したウイルスや細菌などをワクチンという。二次応答の応用である。例 )インフルエンザ,ポリオ,結核の予防接種

血清療法 ウマなどにワクチンを注射して抗体をつくらせておき,その抗体を含む血清を患者に直接注射する。即効性がある。

  )ヘビなどの毒,破傷風の治療


血液型

A

B

AB

O

凝集原

(赤血球の表面)

A

B

AB

なし

凝集素

(血しょう)

β

α

なし

αとβ

参考 血液型と抗原抗体反応

ABO式血液型で,異なる血液型の血液を混ぜ合わせると,血液凝集が起こる。これは抗原抗体反応の一種であるが,抗体に相当する凝集素が生まれつき存在している点で,通常の免疫と異なる。

赤血球の表面には,ABO式血液型にかかわる多糖類とタンパク質からなる凝集原(抗原)があり,AB2種類がある。また,血しょう中には凝集原Aと特異的に結合する凝集素(抗体)αと凝集原Bと特異的に結合する凝集素βがある。凝集原Aと凝集素α,凝集原Bと凝集素βが混ざると赤血球の凝集が起こる。このため,輸血には同じ血液型の血液が用いられる場合が多い。



*学生による議論

A「免疫はなんてすごいしくみなんだ!」

B「でも、逆に体に害を起こすこともあるね」

C「たとえば、花粉症などのアレルギーは、免疫の過剰反応だね」

A「どう解決すれば良いと思う?」

D「当然免疫を抑制させる薬を使うのさ」

B「免疫系をダウンさせるの?しかし、それでは、本当の病原体に感染してしまうよ」

C「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)がヘルパーT細胞に感染して発症する疾患、エイズ(後天性免疫不全症候群)についてももう少し調べてみたい。日和見感染をひきおこしてしまうことがあるらしい」

A「がんも大きな敵だね。がん細胞は、様々な手を使って、免疫から逃れようとするらしい」

B「私の借りた免疫の本には『自然発生がんは強力に免疫寛容を誘導する』とあるよ。免疫寛容というのは、主に自己成分に『免疫を起こさないようにする仕組み』のはずだから、がんはこのしくみを悪用しているんだね」

D「NK細胞を大量につくれればなあ!」

C「近年話題になっているiPS細胞を用いて、NK細胞をたくさんつくれないのかなあ」

D「うーん、いろいろ調べてみても、がん治療に関係する論文は、難しくて読みこなせないよ」

A「ネットの情報もわかりにくい。どこまで信頼して良い情報か、私たちではまだ判断できないんじゃないかな」

B「これは先生に聞いた方が良さそうだね。後でみんなで先生の所に行ってみよう」



反転授業用「生物基礎・自然免疫」



テーマ:自然免疫





Tは教壇でサンドイッチを取り出し、かじった


T「うえ!なんてことだ!カビている!」


学生は笑い、警告する。


「生ものはすぐカビてしまいますよ。気をつけないと」


T「君は生ものなのにカビないね」







T「私たちには、体内の異物を排除する仕組みがそなわっていることは、子供でも知っている。しかしそれは簡単そうに見えて、非常に高度な芸だ。また、どうして一度かかった病気には二度とかから無いのか?」


「先生、しかし、わたしは何度もインフルエンザにかかっています」


T「良いことに気がついたね。病原体も、ただ黙っているわけではないのだ。古き良き物が流行に流され姿形を変えるように、ウイルスの形状も、世代と共に突然変異によって変化を続けているのだ」


T「さて、高度で美しいしくみはとっておくことにして、まずは多くの生物が行っている原始的な体を守るしくみについて見てみたい」




T「自然免疫。この体を守る仕組みのメリットは時間がかからないこと。デメリットは、病原体の情報を記憶できない(『免疫記憶』を形成しない)ことだ」





T「まず、何より大切な防御機構は、表皮の角質層だ。角質層は死んだ細胞であり、感染に対する第一防衛線である。ウイルスは死んだ細胞に感染できないからね」


T「外傷や火傷の死因は、実は表皮が破壊されてしまったことによる感染によるものがほとんどなんだ」


T「また、呼吸器系の粘膜は、細胞が持つ毛(繊毛)の動きで粘液に流れを起こし、病原菌を体外へ追い出している。粘液分泌に障害のある患者は、呼吸器感染を引き起こす場合が非常に多い」


T「女性の涙は武器と言うが、」


「ちょっと待ってください。その発言は差別ではないですか?」


T「申し訳ない。撤回するよ。しかしね、私に言わせれば、男性の涙も武器なのだ。もっと言えば、ヨダレも武器なのだ」





T「涙やだ液には、リゾチームという酵素が含まれ、細菌の細胞壁を破壊する」





T「また、ディフェンシンというタンパク質は細菌の細胞膜を破壊することで細菌を殺す」







T「さらに、食細胞(好中球やマクロファージ、樹状細胞など『食作用』をもつ細胞)などが異物を処理してくれる」
















「また、NK細胞という細胞は、病原体だけでなく、ウイルスに感染した細胞や、悪性腫瘍細胞(つまり、癌だ)を殺す役割も持っている」





「なんだか、殺すだとか、キラーだとか、物騒な言葉ばかりでてきますね」



T「うむ。免疫系の誤作動は深刻だ。例えば、Ⅰ型糖尿病は、自身のすい臓を病原体と勘違いして、自分で攻撃することが原因であるといわれている。このような疾患を『自己免疫疾患』と言う」

T「甲状腺が肥大化し、心拍が急増、眼が突出するバセドー病も、一種の自己免疫疾患だと考えられている(甲状腺はもともと代謝を促進させる組織だが、働かなくても、働き過ぎても害が出る。バセドー病の場合は、甲状腺が攻撃を受け刺激され、働き過ぎてしまう)。しかしまだまだ不明なことが多い」


T「話がそれてしまった。自己免疫疾患は、自然免疫というより、獲得免疫が色濃く関係するとされているのだ」


「獲得免疫とは?」


T「良い学習意欲だが、時間切れだよ。今日はここまでだ」

*学生による自習ノート





































●参考資料
免疫
1.血液防御
(1)血液凝固:出血時にフィブリンが作られて血液が固まる現象。
(2)免疫:体内に異物が侵入したとき、それを排除する働き。
2.物理的・化学的防御:生体が外界と接する皮膚や粘膜で異物の侵入を防ぐしくみ。
物理的防御 角質層をもつ皮膚による保護,気管の繊毛上皮の運動やくしゃみ・せきによる異物の除去など。
化学的防御 汗・涙・粘液・だ液中に含まれるリゾチーム(細菌の細胞壁を分解)などの酵素や強酸性の胃液による殺菌,腸内細菌による他の細菌の増殖抑制など。
3.自然免疫:白血球の一種である好中球やマクロファージなどの食作用によって,異物が取りこまれ,分解される。自然免疫は速やかに行われる。

3.炎症
毛細血管で炎症が起きると、マクロファージや好中球が病原体を食作用で処理しやすくなる(毛細血管が広がり、マクロファージや好中球が通りやすくなる→血管から出たマクロファージや好中球は、感染部位の病原体を食作用で処理する)。





*学生による議論

A「白血球も赤血球と同じように、血管を通るのかな」

B「そうらしいね」

C「リンパ管という管も通るらしい」

A「リンパ管だって?聞いたことないな」

D「リンパ管・・・辞書には、『脊椎動物においてリンパを流通させる管。最後は血管の静脈に合流する。』とある。おや?リンパ管には静脈と同じように弁があるらしい。液体が逆流しないようになっている」

C「資料集の絵がわかりやすいよ。リンパ管はまるで血管のようだが、流れる液体はリンパ液というんだ。リンパ管は血管からしみ出た組織液を回収する経路でもあるようだ」

B「白血球は、リンパ管、そして血管を通じて感染箇所まで移動し、働んだね」

A「図書館で借りてきた免疫学の教科書によれば『活性化したリンパ球は、リンパ管を通ってリンパ節から出ていく。最終的には血中に入り、血流に乗ったリンパ球は実際に働く組織へと向かう』らしい」

B「リンパ節って?」

C「リンパ管の途中にあるふくらみだね。マクロファージなどの食作用の場・および抗原提示の場ともある」

A「抗原提示とは何だろう?来週の講義で学ぶ獲得免疫が関係していそうだけど・・・」

B「少し予習してみよう」

D「うーん、抗原提示とは、『樹状細胞などの抗原提示細胞が、食作用で食べた抗原の一部を、T細胞に提示すること』でいいんじゃないかな」

C「なるほど。『抗原の情報を記憶するのが獲得免疫』とあるから、抗原の情報を『他の細胞に伝える』ことが重要になってくるんだ」