2018年2月2日金曜日

血縁度の求め方

血縁度の授業動画はこちら


血縁度について解説する。実際にはいくつか定義があるが、よく大学入試で使われる定義について考えていく。
まず、わかりにくい教科書的定義から見ていこう。
「血縁度=自分の持つある遺伝子を、注目している別個体ももっている確率。」

この説明1回でわかれば天才である。

こう考えよう。
「えいっ!」と適当に遺伝子を選んで、それを相手も持っている確率。

まずは、人と同じ2倍体(単純のために、相同染色体を1対しかもたないものとする)、で母と父から1本ずつ染色体をもらう生物を考えよう。


さて、自分と弟(もしくは妹)間の血縁度を計算する。
次の3ステップで考える。

①まず、「えいっ」と、自分の持つ遺伝子を適当に1つ決める。(★で示す)

②選んだ遺伝子が、母からもらった遺伝子である確率は1/2
なぜなら、自分の遺伝子の半分は母から、もう半分は父からもらったものだから。

そして、選んだ遺伝子が弟にも伝わっている確率は1/2
なぜなら、母のもつ相同染色体のうち、どちらか一方がランダムに弟に伝わるから(★と■のどちらかが弟に渡されるので、弟は★を受け取らないことがある)
つまり、こんな場合(共通の遺伝子★を弟も持つ場合)と

こんな場合(弟は★をもらわない)が考えられる。
したがって、
「選んだ遺伝子★が母由来(選んだ★が青ではなく赤い染色体にあった)」で、かつ「弟も★をもらう(弟には■ではなく★が伝わる)」確率は、
1/2(★が母由来の赤い染色体にある確率) ×1/2(弟に■ではなく★が伝わっている確率) =1/4・・・(i)

同様に考えて、「選んだ遺伝子が父由来」で、かつ「弟もその遺伝子をもらう」確率は1/4・・・(ii)

③選んだ遺伝子が、母由来であった場合の確率と父由来であった場合の確率を合計する。
(i)、(ii)より、自分の選んだ遺伝子を弟ももつ確率は1/4+1/4=1/2
この1/2が、自分と弟間の血縁度となる。
(選んだ遺伝子は母由来、または父由来のどちらかなので、③で2つの確率を足す。掛けてはいけない。例えば、箱に赤いボールと青いボールが同数ずつあり、これをランダムに引くものとする。あなたと弟がこのゲームを行う。あなたが赤いボールを引き、かつ弟も赤いボールを引く確率は1/2[あなたが赤を引く確率]×1/2[弟が赤を引く確率]=1/4。あなたが青いボールを引き、弟も青いボールを引く確率は1/2×1/2=1/4。したがって、あなたと弟が同じ色のボールを引く確率は1/4+1/4=1/2。こんなまどろっこしい計算をしなくても、あなたがどのボールを引こうが、弟は1/2であなたと同じ色のボールを引くのだから、あなたと弟のボールが同じ色になる確率は1/2に決まっている。しかし、この赤と青で分けて考える考え方が次の話で役に立つ)


さて、次は、ミツバチ(親が半数体)の場合を考えてみよう。
ミツバチのオスは、受精しなかった卵が成長して生まれる(したがってオスは半数体)。
オスは減数分裂なしに精子を作る。したがって、娘は共通の父由来の遺伝子を持つ。つまり、父の遺伝子はすべての娘に同じものが伝わる(母のように、どちらか1本選択される、などということがない)。



①「えいっ」と、自分の持つ遺伝子から1つ選ぶ(★)。

②選んだ遺伝子★が母由来である確率は1/2(適当に選んだ遺伝子が赤い染色体にある確率は1/2)



注目した遺伝子★が妹にも伝わっている確率は1/2
なぜならば、こんな場合(妹にも共通の遺伝子★が伝わる)と


こんな場合(★が伝わらない)がある。

さて、選んだ遺伝子が父由来だった場合を考えよう。

父の染色体は、同じものが、すべての娘に伝わる(ミツバチのオスの精子は減数分裂なしで作られることを思い出してほしい)ので、注目した遺伝子★が父由来の場合、★を妹も持っている確率は1(100%)。

以上より、選んだ遺伝子が母由来で、かつそれを妹も持つ確率は1/2×1/2=1/4・・・(i)
選んだ遺伝子が父由来で、かつそれを妹も持つ確率は1/2×1=1/2・・・(ii)


(i)、(ii)より、ミツバチにおいて、姉妹間の血縁度(えい!と選んだ自分の遺伝子を、妹も持つ確率)は1/4+1/2=3/4

補足
血縁度の定義はひとつではない。
たとえば、ある二匹の間のガチで遺伝的な近縁の程度を知りたいと思ったら、その二匹の持ってる遺伝子を全て並べて、同じ遺伝子がどの程度あるかを網羅的に比べることになる。
もちろん、集団の中で、それらの遺伝子の頻度がどれくらいか(どれくらいそれらの遺伝子が集団に頻繁に現れるか)も考慮しなければならないこともあるだろう。
しかし、そのような作業はかなり煩雑なので、今回見るように、どの染色体にもそれぞれ固有の遺伝子の組み合わせパターンがある、つまりどの染色体も異なるものとして考えることが多いのである。

ちなみに、半数体の場合は血縁度は非対称になる。ミツバチの父から見た子の血縁度は1である。父は減数分裂をしないので、父の持つ遺伝子は、どの遺伝子も必ず子に伝わる。父の持つ染色体のどの遺伝子をえいっと選ぼうが、それを必ず子が持っている。
ところが、ミツバチの子からみた父の血縁度は二分の一である。えいっと選んだ染色体が母由来の場合は、それを父は持たないからである。


































2017年2月26日日曜日

反転授業用「生物基礎・ホルモン」


ホルモンのリアル授業はこちら

テーマ:ホルモン
T「今日はホルモンについて学ぶ」


「昨日食べました」


T「君、焼肉のメニューにあるホルモンとは違うよ」
「いったいなにものです、あなたのいうホルモンというのは?」


T「生体内でつくられ、様々な組織に命令を伝える化学物質だ。




すべてのホルモンは共通して血液中をながれる。しかしその作用や標的器官、ホルモン自身の構成成分(アミノ酸がつながってできたペプチドホルモンや、細胞膜と同じ成分でできた細胞膜を通過できるステロイドホルモンなど)は様々だ」







T「ホルモンが作用する(ホルモンを受け取る)器官を標的器官という。同じ使い方で、ホルモンを受け取る細胞(標的器官の細胞)を標的細胞という」









T「例えばチロキシン、これは主に全身の細胞の異化反応を促進する(したがってチロキシンの標的細胞は全身の細胞だ)ことで代謝を高めるホルモンだが、甲状腺という内分泌腺から分泌される」





S「甲状腺?聞いたことないな」


T「君にもついているよ。喉の下のあたりだ」

T「チロキシンを分泌させる命令は、脳の中でも、間脳というエリアから出される。大脳ではないよ!大脳からの命令で、つまり意識的に、代謝を上昇させることはできない。間脳(の、視床下部という部位)から放出ホルモン(正式名称は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンというが、放出ホルモンと覚えておけばよい)というホルモンが、『脳下垂体(の、前葉)』という脳に垂れ下がった器官に送られる。脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを分泌し、甲状腺を刺激する」


S「その放出ホルモンや甲状腺刺激ホルモンも血液中を通るのですか?」


T「その通りだ。すべてのホルモンは血液中を通って標的細胞に向かう。これはホルモンの定義と思ってよい」


S「ホルモンは化学物質といいましたね。消化酵素や汗はホルモンですか?」


T「いや、消化酵素や汗はホルモンとは呼ばない。血液中に分泌されないからね。君が言ってくれた二つは体の外に分泌される。注意したいのは、胃や腸の中の空間も一般に体外と見なすということだ」











T「また、少し変わった例として、神経分泌細胞を教えておこう。この細胞は間脳にいる神経細胞なのだが、ホルモンも分泌できる変わった細胞で、注目されている。例えば、バソプレシンという尿量を減らすホルモンをつくっているのは間脳にいる神経分泌細胞だ」






T「もう一つ今日伝えたいことがある。フィードバック調節だ」


T「チロキシンは全身の代謝を促進させると共に、脳や脳下垂体に働きかけ、それぞれ放出ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制する」


S「チロキシンの分泌が減ってしまいます!」


T「その通り。それが上手いしくみなんだ。この仕組みがあることで、血液中のチロキシン濃度が丁度いい位置に保たれるのだ。高すぎるチロキシン濃度はチロキシンの分泌を抑制する。」


T「この作用を負のフィードバック作用という。エアコンにもついている機能だ。温度が低すぎると、エアコンは室温を上げる。しかし、設定温度を室温が上回ると、今度は室温を下げ始める。室温上昇という結果が、エアコンという原因に作用した。これと同じことが、ほぼすべてのホルモンについても言える。分泌しすぎたホルモンは、自身の分泌を抑制させる。結果、丁度良い血中濃度に落ち着くのだ」








●参考資料
内分泌腺とホルモン 
(1)動物体内では,ホルモンとよばれる物質が分泌され,体内環境の維持にはたらいている。脊椎動物の内分泌腺は,脳下垂体甲状腺副甲状腺副腎すい臓などである。
参考 内分泌腺には排出管がなく,ホルモンは体液中に直接分泌される。これに対して外分泌腺である汗腺や消化管には排出管があり,分泌物はそこを通って体表や消化管内に分泌される。
 ホルモンには次のような特徴がある。
内分泌腺でつくられ,体液によって運ばれる
微量でも大きなはたらきをする。
作用する細胞(標的細胞)が決まっており,標的細胞にはホルモンを受け取る受容体がある。同じホルモンの受容体を複数種の細胞がもつ場合もある。


内分泌腺

ホルモン

おもなはたらき

視床下部

(間脳)

各種 放出ホルモン

放出抑制ホルモン

脳下垂体の前葉からのホルモン分泌の促進または抑制

脳下垂体

前葉

成長ホルモン

タンパク質合成促進,血糖濃度を上げる。

骨の発育・からだ一般の成長を促進

甲状腺刺激ホルモン

甲状腺からのチロキシンの分泌促進

副腎皮質刺激ホルモン

副腎皮質からの糖質コルチコイドの分泌促進

後葉

バソプレシン

血圧の上昇,腎臓での水分の再吸収を促進

甲状腺

チロキシン

代謝を促進,成長と分化を促進

副甲状腺

パラトルモン

血液中のCa2量を増加

副腎

髄質

アドレナリン

グリコーゲンの分解を促進し,血糖濃度を増加

皮質

糖質コルチコイド

糖の代謝を促進,血糖濃度を増加

鉱質コルチコイド

腎臓でのNaの再吸収とKの排出を促進




すい臓





ランゲル

ハンス島

インスリン

グリコーゲンの合成と,組織での糖の消費を促進し,血糖濃度を減少

グルカゴン

グリコーゲンの分解を促進し,血糖濃度を増加

















(覚え方)ずいずいアドレナリン(髄質、アドレナリンを分泌)


(覚え方)骨からカルシウムがパラパラとれるよパラトルモン(パラトルモンは骨からのカルシウムイオン放出を促進)
パラトルモンは血中のカルシウム濃度を上昇させる












(覚え方)インスリンリン、Bellの音(インスリンはB細胞から分泌される)



(覚え方)宇宙恐竜グルカゴーン!ボカーン!(グルカゴンはグリコーゲンを壊して、血中にグルコースを放出させる命令を肝臓に送る)




(2)視床下部と脳下垂体 ホルモン分泌の調節は視床下部と脳下垂体で行われ,次の2つの経路がある。
視床下部の神経分泌細胞から血液中に分泌される放出ホルモン放出抑制ホルモンのはたらきによって,脳下垂体前葉から分泌されるホルモン量が調節される。 例)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
視床下部の神経分泌細胞から脳下垂体後葉までホルモンが運ばれ,後葉内の血液中にホルモンが直接放出される。
例)バソプレシン 
(3)フィードバック:最終的につくられた物質がはじめの段階に戻って作用することをフィードバックという。動物体内でホルモンの分泌量が一定の範囲内に保たれているのは,このフィードバック調節のしくみがあるためである。
(4)血糖量調節 血糖濃度調節の中枢は間脳の視床下部にあって,ヒトではほぼ0.1%(0.1g/100mLに保たれている。
高血糖の時:間脳視床下部から副交感神経で膵臓ランゲルハンス島B細胞へ・・・インスリン分泌
低血糖の時:①間脳視床下部から交感神経で副腎髄質へ・・・アドレナリン分泌
②間脳視床下部から交感神経で膵臓ランゲルハンス島A細胞へ・・・グルカゴン分泌
③間脳視床下部から脳下垂体前葉→副腎皮質へ・・・糖質コルチコイド分泌
(5)体温調節:哺乳類や鳥類などの恒温動物では,体温を一定に保つしくみが発達している。寒いときの調節方法
①発熱量の調節:外温の変化に応じて組織の代謝量を変化させ,発熱量を調節する。
②放熱量の調節:皮膚の毛細血管の収縮・拡張,発汗量の増減,立毛筋の収縮・弛緩,皮下脂肪の増減,換毛・換羽(夏毛と冬毛)