2021年3月19日金曜日

サルコメアの長さと張力のグラフ

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サルコメア

滑り説


 筋原繊維のZ膜(Z帯)からZ膜までの構造体は,サルコメア(筋節)と呼ばれ,筋原繊維の構造及び筋収縮上の反復の単位と考えられている。



ミオシン頭部がATPを分解(ATP分解酵素活性はミオシン頭部にある)して角度を変え、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの間で滑り込みが起こる。この2者の運動は相対的なもので、どちらのフィラメントから見るかによって、どちらが動いて見えるかは異なるが、入試に出てくる図ではミオシンフィラメントが固定された芯のように描かれることが多い。ミオ「芯」フィラメントと覚えてしまおう。





下図には,サルコメアの長さと張力との関係を調べた実験結果が示されている。(筋肉をいろいろな長さに固定して、発生する力(張力)を調べて描く)

図から,アクチンフィラメントとミオシンフィラメント各々の1本の長さが求まる。

アクチンフィラメント…1.0μm 

(アクチンフィラメント同士が重なり始め、張力が減じはじめる長さが2.0μmだから、アクチンフィラメント2本分の長さが2.0μm) 


ミオシンフィラメント…1.6μm

(アクチンフィラメント2つとミオシンフィラメントの合計の長さ[アクチンフィラメントとミオシンフィラメントがちょうど重ならない時、つまり張力0になったときの長さ]が3.6μmなので、そこからアクチンフィラメント2つ分[2.0μm]を引く)


・覚えなくてよいが、ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが張力を発生させるために結合している部分の全体をクロスブリッジという。

・サルコメアの長さが2.0μmより短いときに張力が低下する仕組みは良く分かっていないが、アクチンフィラメントの重なりによるアクチンフィラメントの変性などが考えられている。



神経筋接合部では、アセチルコリンによる伝達が起こる。

①神経筋接合部において、運動神経の軸索末端からアセチルコリンが分泌される。②Naが流入し活動電位が発生する。筋細胞膜は深く陥入し、筋小胞体(特殊化した滑面小胞体)に達している(この筋細胞膜が陥入しているところをT管という)。③筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。④カルシウムイオンはトロポニンに結合し、トロポミオシンの立体構造を変える。⑤トロポミオシンによって塞がれていたミオシン結合部位が露出し、筋収縮がはじまっていく。

 


 

 雑談:筋肉は. ヒトにおいて体重の約30 %から40 %を占め、単一の組織としては最大のものである。 骨格筋や心筋を光学顕微鏡で観ると、 明暗の縞模様が見えることから、 これらは横紋筋と呼ばれる。1876年に、 LéonFredericqは、昆虫の筋肉の長さを変化させても、縞模様の暗帯の長さが変わらないことを報告していた。この観察結果は、筋肉の収縮には少なくとも2種類のタンパク質がかかわることを示唆しているが、この現象は長い間筋研究者から忘れ去られることになる。

20世紀前半の学者らは、「筋収縮の実体は、ミオシンフィラメントが、スプリングのように伸び縮みすることである」と信じこみ、 この説の検証に終始していた。
その後、スプリング仮説に反して、革命的な説となる 「滑り説」 が提唱され|た。 すなわち、 「筋収縮は、 ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが互いに長さを変えることなく滑りあうことでおこる」 という仮説である。