2016 東京大学 生物 解説 No.1
問題文・解答は赤本など参照のこと。
1
●メモすること
血球ー死んでいく
小腸上皮ー一定の速さで入れ替わる
くぼみ部分の上皮細胞ー未分化・分裂能をもつ→特にくぼみの底辺部―CBC細胞
実験1
Lgr5ーCBC細胞のみ発現
Lgr5調節領域の後ろにGFPつなぐ→GFPは本来のLgr5発現と同様の調節を受ける
実験2
Lgr5の転写調節領域に酵素C遺伝子をつなぐ
Rの転写調節領域・領域L・GFPをこの順に
Rの転写調節領域ーその後ろの遺伝子をあらゆる細胞で常に発現
酵素Cー化合物Tの存在下で領域Lを抜きとり、残りをつなぐ
領域Lー調節領域と遺伝子の間にあるとその遺伝子の転写を阻害する
実験3
実験2のマススに化合物T
Tなしでは、GFP蛍光無し
●覚えておかなければならない知識
(①GFP遺伝子を調べたい遺伝子Xの後ろにつなぐことで、その遺伝子Xが発現した場合に、細胞の蛍光を観察できる。)・・・知らなくても解ける
(②分化した細胞はふつう分裂しない。幹細胞は未分化性を保ちつつ分裂を続ける細胞である。)・・・知らなくても解ける
[問]
A.
●覚えておかなければならない知識
①血球は中胚葉由来。教科書内容!
②血しょうは血液の液体成分。教科書内容!
③血小板は血液凝固に関係する血球教科書内容!
④好中球やマクロファージは食細胞である。教科書内容!
⑤自然免疫のしくみは「生まれながらに備わり、不特定の物質に対して働くもの」である。すべての動物には自然免疫が備わっている。適応免疫は脊椎動物にのみ備わっている。キャンベル生物学からの出題であろうが、教科書の知識で十分対応できる。脊椎動物以外の動物が自然免疫を持たないとは考えられない。自然免疫すら持たないとすると、どうやって細菌やウイルスから身を守っているのか。教科書内容!
⑥リンパ球のB細胞はすい臓のランゲルハンス島にあるB細胞とは別ものである。出題者のジョークに笑う余裕がほしい。教科書内容!
B.
●覚えておかなければならない知識
(①赤血球には寿命がある)・・・リード文にある
(②造血幹細胞は、分裂を続け、赤血球を生み出す)・・・リード文にある
C.
●覚えておかなければならない知識
①腸と肝臓は肝門脈という門脈でつながれている。教科書内容!
②腎臓は濾過と再吸収を行う臓器である。教科書内容!
③胆汁は胆管を通って胆のうへ運ばれ、その後十二指腸に分泌される。十二指腸に分泌されることは記載されていない教科書が多いが、一度生物時点で胆汁について調べていれば答えられる。中学校で習った人も多いのでは。
D.
図1-3を見る。
同じ細胞がずっと光っていることを確認する。(3)は論外。血液をつくる細胞が上皮を作るなどと言うトンデモ話は省きたい。
幹細胞の説明から、(2)らしいな、と常識で考えられるが、ちょっと待った。
実験1のみからわかる事実は、「CBC細胞の存在場所が移動しない」ということだけである。
まあ、今(2)を選んでも、後で直す機会が用意してある。実験3に関して考察すれば、(2)は実験1の段階ではわからないと言うことに気づくはずだ。
●覚えておかなければならない知識
なし
E.
●覚えておかなければならない知識
①抗体の可変部に関する遺伝子について、遺伝子の再編成が起こる。教科書内容!
F.
●メモすること
化合物Tの酵素Cに対する作用ー同時・その時点のみ
(さらに、状況がより見えてきたので、はじめのメモに書き足す。)
酵素Cー発現すると、化合物Tの存在下で領域Lを抜きとり、残りをつなぐ←転写調節領域の後ろに酵素C遺伝子があると、酵素C遺伝子がLgr5発現と同様の調節を受ける
酵素Cー発現すると、化合物Tの存在下で領域Lを抜きとり、残りをつなぐ←邪魔なLを取り除く
領域Lー調節領域と遺伝子の間にあるとその遺伝子の転写を阻害する←Lが無ければGFPが発現する
まとめれば、Tの存在下で、Lgr5が発現する状況なら、GFPの蛍光が観察される。
(3)
●メモすること
T投与時、発現している→酵素Cが発現し、Tの存在下で、遺伝子をつなぎ替える→GFP発現
観察時→酵素Cはもう発現しない→しかし、つなぎ替えられた遺伝子が存在→
Rの転写調節領域ーその後ろの遺伝子をあらゆる細胞で常に(この設問で、この『常に』が活きてくる)発現→GFP発現
メモより、GFP遺伝子は常に発現している。
まとめると、
今後、このつなぎ替えられた遺伝子は存在し続けるので、もうTとか酵素Cとかの有無は関係ない。常にGFPは発現する。
(4)化合物Tが存在しても、酵素Cが発現していなければTの意味は無い。
●覚えておかなければならない知識
なし
G.
F.の問いの(3)と同内容の問題。既に遺伝子の再編成が済んでいるので、Lgr5のON,OFFは関係ない。どうしてこの問題を入れたのか謎である。既にHで問うている。Hを解きやすくするために重ねてメッセージを意図だろうか。
●覚えておかなければならない知識
なし
H.
GやF(3)より、過去にLgr5を発現していた細胞は、GFPの蛍光を発する。
●メモすること
過去にLgr5発現→その後発現無くなっても、GFP蛍光発する
(もう遺伝子の再編成[Lの抜き取り]が済んでいるから)
図1-5の言わんとしていることは、過去にLgr5が発現した細胞が柔毛部分に移動するということである。特に、くぼみ部分のCBC細胞以外の細胞も、かつてはLgr5を発現していた(Lgr5を発現し続ける細胞は定位置に存在し続ける・・・これが実験1の結果からわかることである)。
さて、ここがDの問いを直す最後のチャンスである。よくリード文を見れば、くぼみの細胞と、その中のCBC細胞を分けていることがわかる。特にCBC細胞から、柔毛部分の細胞が生じているなどとは、実験1からはわからない。CBC細胞以外のくぼみの細胞から柔毛部分の細胞が生じている可能性だって有った。
しかし、最後の問いまで進めば、「くぼみ部分の細胞や柔毛部分の細胞は、すべてかつてはLgr5を発現していた(CBC細胞であった)」ことがわかるのである。
●覚えておかなければならない知識
なし