2016年7月27日水曜日

夏期講習 生物基礎特講⑦生態系



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高校生物基礎しゃべるノート 遷移 字幕あり
https://youtu.be/hPeXo1qk0G8



植生と遷移

1.植生:ある地域に生育している植物集団全体を植生という。植生は,年降水量年平均気温に大きく影響される。大きく森林草原荒原に分けられる。

(1)森林:多くの樹木からなり,最上部は林冠,地表付近は林床という。林冠から林床までの間には,階層構造(高木層,亜高木層,低木層,草本層,地表層など)が見られる。





参考 熱帯ではより複雑な階層構造が見られ、逆に寒い地域では階層構造が2層だけという場合もある。

(2)草原:降水量が少なく樹木の生育が難しい地域に分布。サバンナやステップなど。

(3)荒原砂漠,ツンドラなど。植物の生育はかぎられる。

2.植物と光合成

(1)光補償点と光飽和点:光合成速度と呼吸速度が等しくなるときの光の強さを,その植物の光補償点という。また,それ以上光を強くしても光合成速度が変わらなくなるときの光の強さを光飽和点という。

(2)陽生植物と陰生植物:日なたを好んで生育する植物を陽生植物という。陽生植物は光補償点と光飽和点が高い。逆に光の弱いところでも生育できる植物を陰生植物という。陰生植物は光補償点と光飽和点が低い。

参考 植物によっては1 本の木の中に,陽生植物の性質をもつ葉(陽葉)と陰生植物の性質をもつ葉(陰葉)を同時にもつ場合もある。

3.植生の遷移

(1)遷移と極相:ある地域の植生が,長い年月の間(裸地から陰樹林までふつう千年以上)に一定の方向に移り変わっていく現象を遷移という。遷移が起こった結果,最終的に到達する安定した状態を極相クライマックスという

その地域の条件によって極相は異なる。例えば、日本中部地方の標高2500m以上の地域(高山帯)には高山草原(ハイマツという低木や、コケモモ、コマクサなどの高山植物のみが生息。お花畑を形成することも。)が形成され、森林は形成されない。



(2)遷移の過程:火山活動や地殻の隆起などでできた裸地に最初に侵入する植物を先駆植物パイオニア植物という。先駆植物の多くは草本植物である。やがてこの植物が大きくなると植生は草原へ変わる。次いで,風などによって運ばれた種子によって低木林ができる。このように遷移の初期に現れる樹種を先駆樹種という。先駆樹種には陽樹が多い。やがて森林ができると,弱い光のもとでも生育できる極相樹種(陰樹)が現れるようになる。極相樹種を中心とした森林を極相林という。

*陽樹=陽生植物である樹種、陰樹=陰生植物である樹種 *もちろん両者の境は連続的で、明確な区別はできない

(3)一次遷移:生物的なものの全くない裸地や湖沼から出発する遷移を一次遷移という。裸地から出発する場合を乾性遷移,湖沼から出発する場合を湿性遷移という。


〔乾性遷移〕 裸地・荒原→草原(一年生草本→多年生草本)→陽樹林→陰樹林(極相)

〔湿性遷移〕 貧栄養湖→富栄養湖→湿原→草原→陽樹林→陰樹林(極相)

参考 一般に先駆植物の種ほど軽く、小さく、耐陰性が小さい。








(4) 二次遷移山火事や放置された牧場のあとなど二次的な裸地から始まる遷移。土壌や植物の種子・地下茎などがあるため,遷移の進行が一次遷移より速い

(5)ギャップ:極相の陰樹林においても、倒木などによって生じた光の差しこむスペース(ギャップ)では陽樹などが育つため,森林の多様性が維持される

4.バイオーム:地域の植生とそこに生息する動物なども含めた生物のまとまりバイオームという。

 バイオームは,気候条件(年平均気温と年降水量)と深い関係がある。世界の陸上バイオームは次のように分けられる。



植生

気候帯

バイオーム

特徴など

森林

熱 帯

亜熱帯

熱帯多雨林

亜熱帯多雨林

1 年中雨量の多い地域。常緑広葉樹がおもで,つる植物や着生植物も多い。高温多湿で分解者のはたらきが活発なため,有機物はすぐに分解され,土壌は薄い。ビロウ、アコウ・ガジュマル・ヘゴなど



雨緑樹林

雨季と乾季のある地域。乾季に落葉するチークなど



温 帯

照葉樹林

(常緑広葉樹林)

暖温帯。常緑広葉樹がおもで,落葉樹や針葉樹も混じる。日本ではクチクラの発達した葉(照葉)をもつ。カシ・シイ・タブ



硬葉樹林

夏に雨が少なく,冬に雨が多い地域。クチクラが厚く,硬くて小さい葉をもつ。オリーブ・コルクガシ

夏緑樹林

(落葉広葉樹林)

夏に雨量の多い地方(冷温帯)に発達。落葉広葉樹からなる。日本では本州東半分から北海道に分布。ブナ・ナラ・カエデ



亜寒帯

寒 帯

針葉樹林

亜寒帯に広く分布。一般に樹種が少なく,純林を形成する。シラビソ、コメツガ、トウヒ。日本の亜寒帯(北海道)ではエゾマツ・トドマツなど



草原

熱 帯

サバンナ

イネ科が主。熱帯・亜熱帯で降水量が少ない地域。イネ科植物の草本がおもで,高木や低木も混じる。アカシアなど



温 帯

ステップ

イネ科が主。温帯で降水量が少ない地域。イネ科植物が中心で,樹木は少ない。中央アジアのステップ,北米中央部のプレーリー,南米のパンパスなど

荒原

熱帯・温帯

砂 漠

熱帯や温帯の降水量の極端に少ない地域。サボテン(多肉植物)など

寒 帯

ツンドラ

北極圏など寒帯に分布し,地衣類・コケ植物を主とする







(1) 水平分布:気温の分布は緯度とほぼ対応するため,同じバイオームは緯度が同じ地域に帯状に分布する傾向がある。そのため,緯度の変化とともにバイオームも変化し,これをバイオームの水平分布という。日本列島は南北に幅広いため,バイオームの水平分布が見られる。

(2) 垂直分布:一般に,海抜高度が100m 増すごとに気温は約0.5 0.6ずつ下がるので,標高が高くなるにつれて,低緯度から高緯度への変化(水平分布)と同じようなバイオームの変化が見られる。このような標高差によるバイオームの変化を垂直分布という。

 日本では,森林ができるだけの十分な降水量があるため,どのようなバイオームになるかは,おもに年平均気温によって決まる。したがって,日本では低緯度側から高緯度側に向かって,年平均気温が高いところから順に亜熱帯多雨林照葉樹林夏緑樹林針葉樹林へと変化し,水平分布が見られる。また高山では標高に応じて,それに対応した垂直分布が見られる。










生態系内の物質の循環

1.生態系:ある一定地域内に生活する生物とそれを取り巻く非生物的環境とのまとまりを生態系という。生態系において,非生物的環境から生物が受けるさまざまな影響を作用といい,生物が非生物的環境へ及ぼす影響を環境形成作用という。食う食われるなどのような生物どうしのはたらきあいを相互作用という。

(1)生態系内の生物は,その役割によって生産者と消費者に分けられる。

①生産者:水や二酸化炭素などの無機物から有機物を合成する生物。光エネルギーを吸収して光合成を行う植物などが含まれる。

②消費者:生産者が合成した有機物を直接または間接的に取りこんで栄養源とする生物。

植物を直接食べる植物食性動物を一次消費者,植物食性動物を食べる動物食性動物を二次消費者という。

消費者のうち生物の遺体や排出物中の有機物を無機物に分解し,植物が再び利用できるようにする生物を特に分解者といい,菌類や細菌などの微生物が含まれる。

2.生態ピラミッド:生産者を出発点とする食物連鎖の各段階(「生産者」「一次消費者」などの段階)を栄養段階といい,一般的に栄養段階が上位のものほどからだが大形になり,個体数は少なくなる。したがって,栄養段階の下位のものから順に個体数の棒グラフを積み上げると,ピラミッド型になる。このような生態ピラミッドには次のようなものがある。

個体数ピラミッド:個体数で示したもの。  
生物量ピラミッド:生物体の質量で示したもの。

参考 生産力ピラミッド:一定期間に生物が獲得するエネルギー量をグラフにして積み上げたものを生産力ピラミッドという。

参考 樹木(生産者)にたくさんの毛虫(一次消費者)がついている場合などには,個体数ピラミッドが逆転することがある。しかし,生産力ピラミッドが逆転することはない(獲得したエネルギー量以上のエネルギー量を次の栄養段階へ受け渡すことは不可能)。

2.物質循環とエネルギーの流れ

①炭素の循環:炭素は,二酸化炭素CO2)の形で植物などの生産者に取りこまれ,光合成によって有機物となる(同化)。その有機物の一部は食物連鎖を通じて消費者に移行し,遺体や排出物などに含まれる有機物は分解者に取りこまれる。これらの有機物は生産者,消費者,分解者それぞれの呼吸によって分解され,二酸化炭素に戻る(異化)。

参考 近年の化石燃料(石油,石炭など)の大量消費は,大気中の二酸化炭素濃度上昇の原因の1 つとなっている。

②窒素の循環:生体に含まれるタンパク質やDNARNAATP,クロロフィルなどの有機物には窒素が含まれている。

 窒素はおもに硝酸イオンNO3)やアンモニウムイオンNH4)の形で生産者に取りこまれ,アミノ酸を経てタンパク質などの有機窒素化合物となる。このはたらきを窒素同化という。有機窒素化合物は炭素の場合と同じように消費者に移行する。

遺体や排出物中の有機窒素化合物は分解者によってNH4に変えられる。

NH4は,さらに土壌中の硝化菌硝酸菌亜硝酸菌)のはたらきによってNO3 に変えられ(硝化),再び植物に利用される。

多くの生物は空気中の窒素(N2)を直接利用することができない。しかし,根粒菌アゾトバクタークロストリジウムなどの細菌(窒素固定細菌),およびシアノバクテリアの一部は,空気中の窒素を取りこみ,NH4に変える。このはたらきを窒素固定という。一方,土壌中のNO3 の一部は脱窒素細菌によってN2 に変えられて,大気中に戻る(脱窒)。

参考 ダイズ,クローバーなどマメ科植物の根には根粒菌が共生しているため,これらの植物は窒素化合物が乏しい土地でも生育することができる。

参考 炭素は光合成と呼吸によって,常に生物と大気の間でやり取りがなされている。一方,生物と大気の間で直接やり取りされる窒素は窒素固定や脱窒によるものだけである。

③エネルギーの流れ(エネルギーは生態系内を循環しない

 生産者の光合成によって取りこまれた光エネルギーは,化学エネルギーに変換された後,物質(おもに炭素)循環に伴って生態系の中を流れる。それぞれの生物によって利用されたエネルギーは,最終的には熱エネルギーとなって大気中に放出され,生態系外(宇宙空間)へ出て行く。したがって,エネルギーは炭素などの物質のように循環することはない。
















お疲れ様でした!目指せ「げん」えきごう「かく」!
















夏期講習 生物基礎特講⑥自律神経系と内分泌系


自律神経系と内分泌系による調節
1.交感神経と副交感神経:意思とは直接関係なく,臓器などの働きを自律的に調節している末梢神経。中枢は『間脳』の視床下部




 


(拮抗的に働く)

心臓の拍動

血 圧

体表の血管

皮膚立毛筋

発 汗

ひとみ

消化管の運動

排 尿

すい臓のランゲルハンス島

副腎髄質

肝臓

気管支

平滑筋

交感神経

促 進

上げる

収 縮

収 縮

促 進

拡 大

抑 制

抑 制

A細胞を刺激

アドレナリン分泌促進

グリコーゲン分解

弛緩

副交感

神経

抑 制

下げる

分布無し

分布無し

分布無し

縮 小

促 進

促 進

B細胞を刺激

分布無し

グリコーゲン合成

収縮
参考 神経細胞(別名:ニューロン)


交感神経

交感神経の細胞の節前ニューロンの細胞体は脊髄に存在する

副交感神経

副交感神経の節前ニューロンの細胞体は中脳、延髄、脊髄に存在する











自律神経の特徴は、脳や脊髄から出た神経繊維がそのまま標的器官に達するのではなく、必ず途中でシナプス(神経細胞と神経細胞のつなぎ目)を経由することである。脳や脊髄から起こる神経細胞を節前ニューロンといい、ニューロンを代えて節後ニューロンとなり標的器官に分布する。
参考 神経伝達物質(=ニューロンから分泌され、次の細胞を興奮させる情報伝達物質)


交感神経

ノルアドレナリン

副交感神経

アセチルコリン (覚え方)汗散るゆーこりん服交換(アセチルコリン、副交感神経)
2.内分泌腺とホルモン 
(1)動物体内では,ホルモンとよばれる物質が内分泌腺から分泌され,体内環境の維持にはたらいている。
参考 内分泌腺には排出管がなく,ホルモンは体液中に直接分泌される。これに対して外分泌腺である汗腺や消化管には排出管があり,分泌物はそこを通って体表や消化管内に分泌される。
 ホルモンには次のような特徴がある。
内分泌腺でつくられ,体液によって運ばれる。② 微量でも大きなはたらきをする。③ 作用する細胞(標的細胞)が決まっており,標的細胞にはホルモンを受け取る受容体がある。同じホルモンの受容体を複数種の細胞がもつ場合もある。


内分泌腺

ホルモン

おもなはたらき

視床下部

(間脳)

各種 放出ホルモン

放出抑制ホルモン

脳下垂体の前葉からのホルモン分泌の促進または抑制

脳下垂体

前葉

成長ホルモン

タンパク質合成促進,血糖濃度を上げる。

骨の発育・からだ一般の成長を促進

甲状腺刺激ホルモン

甲状腺からのチロキシンの分泌促進

副腎皮質刺激ホルモン

副腎皮質からの糖質コルチコイドの分泌促進

後葉

バソプレシン

腎臓での水分の再吸収を促進→血圧上昇

甲状腺

チロキシン

代謝を促進,成長と分化を促進

*間脳視床下部、脳下垂体前葉に作用して、放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモンホルモン分泌を抑制させる(このような負のフィードバック作用を持つホルモンはチロキシンだけではないが、チロキシンが代表例としてよく問われる)

副甲状腺

パラトルモン

骨からCa2流出→血液中のCa2量を増加

副腎

髄質

アドレナリン

グリコーゲンの分解を促進し,血糖濃度を増加

皮質

糖質コルチコイド

糖の代謝を促進,血糖濃度を増加

鉱質コルチコイド

腎臓でのNaの再吸収とKの排出を促進





すい臓

ランゲル

ハンス島

インスリン

グリコーゲンの合成と,組織での糖の消費を促進し,血糖濃度を減少

グルカゴン

グリコーゲンの分解を促進し,血糖濃度を増加
(覚え方)前向きな人生って刺激的だし成長できるよ(脳下垂体前葉、各種刺激ホルモン、成長ホルモン)
(覚え方)後ろに婆さんが・・・(後葉、バシプレシン)
(覚え方)甲状腺の甲の字をなぞるだけでチロキシンと書ける








(覚え方)ふひひ、こっちこいよ(副腎皮質、コルチコイド)
(覚え方)リンリンBellの音で落ち着いて(インスリン、B細胞、休息に働く副交感神経が分泌促進)




(覚え方)宇宙恐竜グルカゴーン!ボカーン!(グルカゴン、グリコーゲンを壊す)



(覚え方)骨からカルシウムがパラパラとれるよパラトルモン(パラトルモン、骨からのカルシウム流出促進)












(2)視床下部と脳下垂体
① 視床下部の神経分泌細胞から血液中に分泌される放出ホルモンや放出抑制ホルモンのはたらきによって,脳下垂体前葉から分泌されるホルモン量が調節される。 例)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
視床下部の神経分泌細胞から脳下垂体後葉までホルモンが運ばれ,後葉内の血液中にホルモンが直接放出される。例)バソプレシン 









(3)フィードバック:最終的につくられた物質がはじめの段階に戻って作用することをフィードバックという。動物体内でホルモンの濃度が一定の範囲内に保たれているのは,このフィードバック調節のしくみがあるためである。
3.血糖量調節 血糖濃度調節の中枢は間脳の視床下部にあって,ヒトではほぼ0.1%(0.1g/100mLに保たれている。
①高血糖の時:
●間脳視床下部から副交感神経で膵臓ランゲルハンス島B細胞へ・・・インスリン分泌
②低血糖の時:
●間脳視床下部から交感神経で副腎髄質へ・・・アドレナリン分泌
●間脳視床下部から交感神経で膵臓ランゲルハンス島A細胞へ・・・グルカゴン分泌
●間脳視床下部から脳下垂体前葉→副腎皮質へ・・・糖質コルチコイド分泌
4.体温調節:哺乳類や鳥類などの恒温動物では,体温を一定に保つしくみが発達している。寒いときの調節方法
(1)発熱量の調節:外温の変化に応じて組織の代謝量を変化させ,発熱量を調節する。代謝の促進には、チロキシン、アドレナリン、糖質コルチコイドが働く。
(2)放熱量の調節:皮膚の毛細血管の収縮・拡張,発汗量の増減,立毛筋の収縮・弛緩,皮下脂肪の増減,換毛・換羽(夏毛と冬毛)