2016年7月27日水曜日

夏期講習 生物基礎特講⑤免疫

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免疫
1.血液防御
(1)血液凝固:出血時にフィブリンが作られて血液が固まる現象。
(2)免疫:体内に異物が侵入したとき、それを排除する働き。
2.自然免疫
(1)物理的・化学的防御:生体が外界と接する皮膚や粘膜で異物の侵入を防ぐしくみ。
物理的防御 角質層(ケラチンを含む層、角質化に伴って細胞は死に、核は消失する)をもつ皮膚による保護,気管の繊毛上皮の運動やくしゃみ・せきによる異物の除去など。
化学的防御 汗・涙・粘液・だ液中に含まれるリゾチーム(細菌の細胞壁を分解する酵素)や強酸性の胃液による殺菌,腸内細菌による他の細菌の増殖抑制など。
(2)食作用:白血球の一種である好中球やマクロファージなどの食作用によって,異物が取りこまれ,分解される。
3.獲得免疫:自然免疫で処理しきれなかった異物に対してはたらく。獲得免疫は,一度体内に入ってきたウイルスや毒素などの異物を抗原として記憶し,二度目からは同じ異物を短時間で排除する免疫で,体液性免疫と細胞性免疫がある。T細胞やB細胞が主役となる。
参考 T 細胞は胸腺(Thymus)で分化することから,このような名前がつけられている。







体液性免疫:外から体内に侵入した抗原を樹状細胞やマクロファージが食作用によって取りこんで分解し,その後,抗原を細胞表面へ移動させて細胞外に提示する(抗原提示)。これをヘルパーT細胞が認識する。すると,この抗原に対応するB細胞抗体産生細胞へと分化し,抗原と特異的に反応する物質(抗体)をつくって血しょう(体液)中に放出する。抗体の本体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質で,抗原と特異的に結合(抗原抗体反応)して抗原を無毒化する。
細胞性免疫:抗体によるのではなく,リンパ球が抗原に対して直接的に免疫反応を行う場合を細胞性免疫という。抗原提示を受けたヘルパーT細胞は提示された抗原に対応するキラーT細胞の増殖も促進する。これによって増殖したキラーT細胞はウイルスなどに感染した細胞やがん細胞などの異物を直接攻撃して破壊する。







4.免疫記憶 抗原の侵入に対してつくられたT細胞やB細胞の一部は記憶細胞となり,同じ抗原が2回目以降に侵入した際,速やかに増殖して,多量の抗体をつくることで,短時間で異物を排除する。これを免疫記憶という。抗原の1回目の侵入に対する時間のかかる応答を一次応答,2回目以降の侵入に対する速やかな応答を二次応答という。
参考 抗体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質でできている。抗体には,種類によって構造が異なる可変部とよばれる部分があり,その構造と合致する特定の抗原としか結合できないようになっている。
5.免疫と病気
日和見感染:病原性の低い病原体(カンジダ菌など)に感染・発病することがある。
エイズAIDS,後天性免疫不全症候群):HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はT細胞にだけ感染してこれを破壊するため,細胞性免疫や体液性免疫のはたらきが低下する。そのため,健康なヒトでは発病しないような弱い病原体にも感染し,発病してしまう。
アレルギー:抗原に対する免疫反応のうち,不都合な症状が過敏に出る場合のことで,全く無害なはずの抗原に対しても,じんましん,ぜんそく,鼻炎,結膜炎などの症状が現れる。アレルギーを引き起こす原因となる抗原物質をアレルゲンという。
自己免疫疾患:自分自身の正常な細胞を抗原と認識して,免疫反応が起こること。関節リウマチやⅠ型糖尿病などが知られている。
6.免疫の応用
ワクチンと予防接種:死滅させたウイルスや細菌,不活化させた毒素,または弱毒化した病原体などを前もって接種しておくと,体内に抗体がつくられて病気などの予防に役立つ。このような方法を予防接種といい,あらかじめ接種する無毒化または弱毒化したウイルスや細菌などをワクチンという。二次応答の応用である。例 )インフルエンザ,ポリオ,結核の予防接種
血清療法 ウマなどにワクチンを注射して抗体をつくらせておき,その抗体を含む血清を患者に直接注射する。即効性がある。
  )ヘビなどの毒,破傷風の治療
参考 血液型と抗原抗体反応
ABO式血液型で,異なる血液型の血液を混ぜ合わせると,血液凝集が起こる。これは抗原抗体反応の一種である。赤血球の表面には,ABO式血液型にかかわる多糖類とタンパク質からなる凝集原(抗原)があり,AB2種類がある。また,血しょう中には凝集原と特異的に結合する凝集素(抗体)がある。凝集原Aと凝集素α,凝集原Bと凝集素βが混ざると赤血球の凝集が起こる。このため,輸血には同じ血液型の血液が用いられる場合が多い。
 A型糖鎖を表面に有する赤血球はA型とよばれる。同様にB型糖鎖はB型赤血球に見いだされ、AB型赤血球はA型B型双方の糖鎖を持つ。そしてO型赤血球はそのいずれの糖鎖も持っていない。ある種の体内細菌は、A型、B型糖鎖抗原に非常によく似たエピトープ(抗体が結合する部分)をもつことが明らかになった。B型抗原に似た細菌エピトープに反応して、A型血液を持つ人はB型抗原に反応するようになる。この場合、体内にもとから存在する自己抗原に反応するリンパ球は、分化の過程で不活化されるか除去されるので、A型抗原に類似した細菌エピトープのほうには抗体はできない。


血液型

A

B

AB

O

凝集原

(赤血球の表面にある糖鎖)

A

B

AB

なし

凝集素

(血しょう中にある抗体)

β

α

なし

αとβ