2016年7月27日水曜日

夏期講習 生物基礎特講②酵素と代謝



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酵素と代謝


1.酵素の働き


細胞内では一連の化学反応が起こっており、各反応には別々の酵素が働いている。

物質A ⇒ 物質B ⇒ 物質C ⇒ ・・・

              

   酵素α    酵素β    

  (一般に、酵素βが阻害されると、物質Cはつくられず、物質Bが蓄積する)

(1)酵素:細胞内で合成され、生物体内で起こる反応を効率よく進める物質。自身は化学反応の前後で変化しない生体触媒で、タンパク質から主にできている。

(2)細胞内酵素:細胞内で働く酵素(カタラーゼ、呼吸に関係する酵素など)。

細胞外酵素:細胞外に分泌されて働く酵素(アミラーゼ、ペプシンなど)。

参考 酵素の性質 

基質特異性:酵素には基質と結合する部位(活性部位)があり,活性部位の立体構造が酵素の種類によって異なるため,酵素は決まった基質としか結合しない。この性質を基質特異性という。
最適温度:温度が高くなるほど酵素や基質の分子運動が盛んになるため,基質が酵素と出会う頻度が増す。一方,酵素はタンパク質でできており,ある一定の温度以上になると構造が変化(変性)し,触媒作用を失う(失活)。そのため,酵素反応が最も速くなる温度があり,これを最適温度という。ふつう40℃付近。
最適pH:れぞれの酵素には反応速度が最も速くなるpH最適pH)がある。

2.代謝:生体内で起こっている化学反応。異化と同化があり、エネルギーの出入りを伴う。

(1)代謝とエネルギー代謝:生物体内で起こる化学反応を代謝といい、代謝に伴って起こるエネルギーの出入りや変換をエネルギー代謝という。代謝は全生物の特徴の一つで有り、全生物が同化(例:タンパク質の合成)と異化(例:糖の分解)を行う。

(2)ATP(アデノシン三リン酸):呼吸などで生じたエネルギーを一時的に蓄える物質。すべての生物が使うエネルギーの共通通貨にあたる化学物質。  ATP H2O ADP H3PO4(リン酸) エネルギー






ATPのリン酸とリン酸の間の結合に蓄えられている化学エネルギー(高エネルギーリン酸結合)は、ATPの加水分解とともに、物質合成、能動輸送のほか、筋収縮(運動エネルギーに変換)、発光(光エネルギーに変換)に使われる。

3.異化体内に取り入れた物質を簡単な物質に分解することを異化という。

(1)呼吸:有機物を分解してエネルギーを取り出し、ATPを生成すること。

有機物(C6H12O6) 酸素(O2) (H2O) 二酸化炭素(CO2) ATP

(覚え方)高級イカ(呼吸は異化)

参考 呼吸では、呼吸基質から電子が引き抜かれ、呼吸基質は分解する。分解産物として二酸化炭素が生じ、最終的に酸素がHとともに電子を受け取って水に変化する

参考 発酵:酸素のない条件下で,有機物を分解してATPを生成する過程を発酵という。原核生物である乳酸菌は乳酸発酵を行う。乳酸発酵ではグルコースは中途半端に分解され、乳酸が生じる。酵母菌はミトコンドリアを持つ真核生物であるが、酸素が存在しない環境下ではアルコール発酵でグルコースを分解する。ヒトの筋肉においても、酸素欠乏下においては、乳酸発酵と同じ化学反応が起こる。

(2)呼吸基質:呼吸の材料になる物質。例)グルコースなどの糖、脂質、タンパク質

4.同化:体内で簡単な物質から複雑な物質を合成することを同化という。同化には炭酸同化と窒素同化などがある。

(覚え方)こんなに複雑な物を作るなんてどうかしてるよ(複雑な物を合成するのは同化)

(覚え方)光合成の「合」の字と同化の「同」の字は似ている(光合成は同化)

・炭酸同化(二酸化炭素から有機物を合成) ・・・例)光合成(光エネルギーを利用)、化学合成(化学エネルギーを利用)

・窒素同化(窒素を含む物質から必要な有機窒素化合物を合成)・・・例)アンモニウムイオンを用いてアミノ酸を合成する(植物)

光合成は植物細胞の葉緑体や、ユレモ、ネンジュモなどのシアノバクテリアの細胞で行われる。シアノバクテリアは光合成を行うが葉緑体を持たないことに注意。

(H2O) 二酸化炭素(CO2) 光エネルギー 有機物 酸素(O2)



参考 光合成色素:光合成に必要なエネルギーを吸収する色素。クロロフィルやカロテノイドなどがある。

参考 エンゲルマンの実験 1882年,エンゲルマンは,糸状の緑藻類と好気性細菌を密封して顕微鏡下に置き,プリズムで分光した光を緑藻類に当てて,細菌がどの部分に集まるかを調べた。その結果,細菌は赤色と青紫色の部分に多く集まり(その部分で活発に酸素が発生したと考えられる),特定の波長の光で光合成による酸素の発生が盛んに起こることがわかった。

参考 化学合成:光エネルギーの代わりに無機物の酸化によって得られたエネルギーを利用して有機物を合成する。  

化学合成の例)

①亜硝酸菌・・・アンモニウムイオンを酸化し亜硝酸イオンにする反応(無機物の酸化)で得た化学エネルギーを用いて二酸化炭素を固定・炭水化物を合成

②硝酸菌・・・亜硝酸イオンを酸化し硝酸イオンにする反応(無機物の酸化)で得た化学エネルギーを用いて二酸化炭素を固定・炭水化物を合成

(覚え方)パンを作るのがパン屋さん!亜硝酸イオンを作るのが亜硝酸菌!硝酸イオンを作るのが硝酸菌!

このような細菌を硝化細菌といい、土壌中のこのような作用(アンモニウムイオンを硝酸イオンに変化させる作用)を硝化作用という。

5.窒素同化

(1)植物の窒素同化:植物では、主にNOは根から吸収された後、NH→→→アミノ酸へと合成反応(窒素同化)が進んでいく。合成されたアミノ酸を材料にタンパク質(アミノ酸に窒素が含まれる)・核酸・ATP(塩基に窒素が含まれる)・クロロフィルなどの窒素含有有機物がつくられる。動物は他の生物を摂食することによりアミノ酸を摂取する。

(2)窒素固定空気中の窒素ガスをNHに変える働き。  

窒素固定細菌根粒菌(マメ科植物の根に共生したときだけ窒素固定能力がある)、ネンジュモ(シアノバクテリア)、アゾトバクター(好気性細菌)、クロストリジウム(嫌気性細菌)がある。