2016年7月27日水曜日

夏期講習 生物基礎特講④体液


体液

1.恒常性と体液

(1)恒常性(ホメオスタシス):生物体が持つ内部環境(多細胞生物の場合は体液)を一定に保つ性質。

(2)ヒトの体液:血液・組織液・リンパ液からなる。

①血液・・・血管内にある体液。有形成分(45%)の赤血球(ヘモグロビンを含む)・白血球・血小板と、液体成分(55%)の血しょうからなる。 *血球はすべて脊髄の造血幹細胞で作られる(「骨髄移植」の目的は、造血幹細胞移植を移植することにある)。


血球
形  状
/mm3
形成場所
破壊場所
働   き
赤血球
中凹円盤状,無核,直径約8µm
哺乳類以外は中凸だ円盤状で有核
450万~500
(最も数が多い)
(覚え方)血は赤い(赤血球が血球中最も数が多い)
骨髄
肝臓
ひ臓
寿命は
100120
ヘモグロビンを含み,酸素を運搬。ヘモグロビンはヘム(Feを含む色素)とグロビン(タンパク質の一種)とからなる。
白血球
不定形,有核,大部分は,直径715µm(リンパ球は79µm)
6000
8000
 
骨髄
ひ臓
アメーバ運動をする。
食作用で細菌などを殺す(マクロファージ)。
リンパ球は免疫に関与し,抗体をつくるものもある。
血小板
不定形,無核,直径24µm
20
30
骨髄
ひ臓
骨髄の巨大細胞の破片。
血液の凝固に関係。



















組織液・・・組織の細胞間にある体液で、毛細血管からしみ出した血しょう。

リンパ液・・・リンパ管内にある体液(組織液)で、リンパ球を含む。リンパ液はリンパ管(弁あり)を循環後、静脈に合流する。

(3)酸素解離曲線:酸素分圧と酸素ヘモグロビン(HbO)の割合を表す曲線。

2.体液の循環

(1)血管系:血液の循環を行う心臓と血管から成る。

参考 ①開放血管系・・・毛細血管がなく血液が組織中を流れる。 例)エビ、昆虫、貝類

   ②閉鎖血管系・・・動脈と静脈が毛細血管を介してつながっている。 例)脊椎動物、ミミズ、イカ・タコ

(2)ヒトの血管系とリンパ系

①心臓の構造・・・2心房2心室で、動脈血を全身に送り出す左心室の壁は厚い。

参考 魚類は1心房1心室、両生類・は虫類は2心房1心室、鳥類は2心房2心室

②心臓の拍動・・・心臓壁にあるペースメーカー(洞房結節、右心房上部にある)に生じた興奮が、心房や心室に分布する特殊な筋繊維(刺激伝導系)を伝わることで、拍動は『自動的に』調節される。 

心拍は自律神経の調節を受ける。

●二酸化炭素濃度上昇―交感神経―洞房結節→拍動促進     
●二酸化炭素濃度低下―副交感神経―洞房結節→拍動抑制

③体循環・・・動脈血(酸素を多く含む血液)は左心室→大動脈→組織の毛細血管を経て静脈血(酸素に乏しい血液)となり、大静脈→右心房にもどる。

(覚え方)ぼ~っと入ってきてシッと出て行く(心房から血液が流入し、心室から出て行く)

④肺循環・・・静脈血は右心室→肺動脈→肺(肺胞)を経て動脈血になり、肺静脈→左心房に戻る。

3.体液の濃度調節

(1)水性無脊椎動物

①ゾウリムシやミドリムシ・・・入ってきた水を収縮胞で排出。*そのため、細胞壁がなくても淡水中で破裂しない。

②海水無脊椎動物・・・多くが体液濃度調節を行わず、体液と海水の濃度は同じ。

③河口域に住むミドリイソガニ・モクズガニなど・・・濃度調節を行う。

(2)魚類:①海水性硬骨魚類:濃度は体液>外液(海水)。えらの塩類細胞から能動輸送による塩類の排出と、血液と等張(同じ濃さ)の少量の尿を排出。②淡水性硬骨魚:濃度は体液>外液(淡水)。えらの塩類細胞から能動輸送による塩類の吸収と、低張(塩類濃度の低い)の多量の尿を排出。

参考 軟骨魚類・・・体液中に尿素を溶かすことにより浸透圧(水が浸透する力)を体液=外液(海水)としている

(覚え方)探偵が多ければ怪盗は少ない(淡水魚は低張の尿を多量に排出、海水魚は等張の尿を少量排出)

(3)陸上脊椎動物:体液よりかなり高い濃度の尿を中程度の量排出。

4.肝臓:
①栄養分の貯蔵(グリコーゲンを合成・貯蔵し、血糖値を維持)
②解毒作用(アルコール等を分解)
③尿素の合成(代謝の過程で生じた有害なアンモニアを無害な尿素に変換[ATPのエネルギーを用いる]
④胆汁の生成(脂肪の乳化を促進する胆汁を生成)
⑤体温の維持(活発な代謝で熱を発生し体温を維持)
⑥血液循環量の調節(多量の血液を貯蔵)



参考 肝門脈系:胃・腸・すい臓からくる栄養分に富んだ血液を運ぶ静脈が集まって1本の門脈になり、肝臓内で多数の毛細血管に分かれて物質移送を行った後、肝静脈に集まり心臓へ向かう血管系。

(覚え方)栄養カモン!(腸で吸収された栄養は肝門脈を流れる血液により肝臓に運ばれる)

5.腎臓:腎臓は皮質と髄質,腎うからなる腎小体(マルピーギ小体)腎細管(細尿管)からなる多数の腎単位(ネフロン)の働きによって尿がつくられる。

腎臓の構造:ヒトには腰のあたりに2 個の腎臓があり,それぞれ100万個ほどのネフロン(腎単位)で構成されている。ネフロンは腎小体と細尿管(腎細管)からなる。腎小体は,糸球体とそれを取り囲むボーマンのうでできている。

②尿の生成:血液が腎臓に入ると,水分・グルコース・無機塩類・尿素など,糸球体の毛細血管壁の小さな穴を通過できる物質がろ過されて原尿となり,そのうちの有用な物質が細尿管で再吸収され,残りが尿となる。タンパク質や赤血球などの大きな物質は血管壁の穴を通過できないため,腎小体でろ過されない(尿中に含まれない)。

濃縮率 = 尿中の濃度 / 血しょう中の濃度  

不要な物質ほど濃縮率が高い。尿素の濃縮率は約70%,グルコースは0%(グルコースはふつうすべて再吸収されるため)

参考 タンパク質の分解によって生じるアンモニアを,水生動物はそのまま水中へ排出するが,陸生動物は毒性の低い尿素や尿酸に変えて排出する。