2017年1月24日火曜日

反転授業用「生物基礎・原核生物と共生説」

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原核細胞、真核細胞、共生説


テーマ:原核生物と共生説


「私たちの体内には無数の細胞があるが、私たち自身の細胞はそのうちの10%程度しかない。残りは細菌や菌類などの微生物である。リステリア菌という細菌は細胞の内側に侵入する。実は細胞が別の細胞に侵入する現象は、太古の時代から一般的なものであった。私たちの細胞が、かつて大昔に侵入した原核生物を、部品として使っているという可能性はあるだろうか。原核生物と真核生物は、進化の上でどのようなつながりがあるのだろうか」




T「原核生物について学んでみよう。君たちのおなかにいる大腸菌、ヨーグルトに入っている乳酸菌、校庭や駐車場に落ちているワカメのような外見のネンジュモ(シアノバクテリアの仲間)は原核生物だ」








「どうして原核生物に核はないんですか」

T「核を持たない細胞、つまり原核細胞でできた生物を、原核生物と呼んでいるんだ。DNAがむき出しになっている・・・これはとても危険なことだと思うかも知れない。自身の体の設計図であるDNAが傷つく可能性がある。宝石をむき出しで机の上に放って置いているようなものだ!」







T「しかし、こんあ考え方もある。DNAをどんどん傷つけ、変化させ、環境の変化に素早く対応しているのかも知れない」

「原核細胞と真核細胞で違うのは、核だけですか」

T「いやいや、原核生物は核をもたないだけでなく、ほとんどの細胞小器官を持たない」

T「さて、実は、葉緑体やミトコンドリアは、かつて原核生物だったと考えられている」

T「なんと、ミトコンドリアや葉緑体の中にもDNAが見つかっているのだ」

「葉緑体やミトコンドリアは生きているのですか?」

T「生きてはいない。細胞外で増殖できないんだ。自己複製が大きな生物の特徴だからね」

T「しかし、これらの細胞小器官は、はるか昔、原核生物が真核細胞の祖先の細胞につっこんで、共生するようになり、生じたと考えられている。この説を共生説という」

T「ミトコンドリアのもとになったのは、好気性細菌という原核生物のグループだ。このグループの細菌は、ミトコンドリアを持たないが、呼吸に関する種々の酵素を持ち、呼吸を行う」

T「その後、それに加えてシアノバクテリアが進入して生じた細胞小器官が葉緑体だ。シアノバクテリアは、葉緑体をもたないが光合成を行う原核生物である」

「その説には他にも何か根拠があるのですか?」


T「まず、先ほど言ったように、ミトコンドリアや葉緑体はDNAを持つ。DNAを持つことは生物の特徴の一つだ。また、半自律的に増殖する。『半』自律的な分裂であることに注意しよう。自分単独で、または自分で勝手には増殖できない。実は、増殖のためのタンパク質を作る情報が、核の中に奪われているのだ」

T「さらに、これらの細胞小器官は二重の膜で包まれている。例えば葉緑体なら、こんな具合に、もともと細菌が持っていた膜と、真核細胞の膜によってできたと考えられている(最新の学説ではそう説明されない。自身で調べて見よ)」




*学生の自習ノート














*学生による議論

A「ミトコンドリアは生物のようだね」

B「ミトコンドリアは生きているといっていいね」

C「しかし、授業では、確かミトコンドリアや葉緑体は生物としてみなせないと言っていたような・・」

A「しかし、ミトコンドリアはDNAを持つんだぞ」

C「あ!ここに記述がある。ミトコンドリアのDNAには、増殖に必要なすべての遺伝子がそろっていないらしい!残りの遺伝子は核DNAにあるそうだ!」

B「自分一人で料理できない人を、コックと呼べないのと同じだね」

D「核にある遺伝子からつくられるタンパク質があってはじめて、ミトコンドリアや葉緑体は分裂できるのか」


●参考

(1)原核細胞と原核生物:染色体(DNA)はあるが核膜はなく、明瞭な核は存在しない細胞が原核細胞で、ミトコンドリア・葉緑体・ゴルジ体などもない。原核細胞から成る生物が原核生物。 例)大腸菌、乳酸菌、ネンジュモ、ユレモ(ネンジュモとユレモは光合成を行うシアノバクテリア)

(2)真核細胞と真核生物:染色体が核膜に包まれ、核が存在する細胞が真核細胞で、真核細胞から成る生物が真核生物。 例)酵母菌、ゾウリムシ、クラミドモナス、アメーバ、ユードリナ、ヒト

(3)単細胞生物:一生を通じて個体が1個の細胞から成る生物。

例)原核生物、ゾウリムシ、アメーバ、クロレラなど

(4)大形化した原核生物の細胞膜が内部に入り込んで核膜を形成し,真核生物が生じた。この原始的な真核生物に好気性細菌が共生してミトコンドリアの起源に,原始的なシアノバクテリアが共生して葉緑体の起源になったという説を共生説という。ミトコンドリアや葉緑体の内部には,核のDNAと異なる独自のDNAが存在する。このDNAは,原核生物のDNAと同じように,環状の構造をしている。また,分裂によって半自律的に増殖する。