2017年1月24日火曜日

反転授業用「生物基礎・代謝(異化と同化)」

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テーマ:代謝(異化と同化)



「生きている細胞は化学工場のミニチュアである。代謝経路のあるものは、複雑な分子を単純な化合物まで分解することによってエネルギーを遊離させる。このような分解過程を異化という。同化は、対照的に、単純な分子から複雑な分子を作り上げるためにエネルギーを消費する過程である。この経路は生合成経路と呼ばれることもある。同化の例として、アミノ酸をより単純な分子から合成する過程や、アミノ酸からタンパク質を合成する過程がある。異化と同化の経路は代謝の全景における下り坂と上り坂である。異化の下り坂反応で放出されたしたエネルギーは蓄えることができ、その後で同化の上り坂反応を駆動するのに利用することができる」


T「生体内で起こる反応に、異化と同化がある。有機物が分解される反応が異化、逆に有機物を合成する反応が同化だ」






T「異化はエネルギーを放出し、同化はエネルギーを吸収して行う。異化と同化、それぞれの代表例は?」





「異化は呼吸、同化は・・ええと・・」


T「同化は生合成反応のことで、君も行えるものと、君には行えないものがある。君はアミノ酸をつなげてタンパク質を合成することはできるが、二酸化炭素などの無機物から炭水化物(糖)などの有機物を合成することはできない。どちらも合成だが、後者はなんと呼ばれる?」








「光合成です」
















T「代謝におけるスーパースターを紹介しよう。酵素だ。酵素について知っていることは?」


「洗剤に入っているものですか」


「サプリメントに入っている」


「ダイエットに良い」


T「よし、怪しげな意見もあるが、皆酵素という言葉は聞いたことがあるようだね」


T「酵素とは、生体内で働く触媒、生体触媒だ(自身は変化せず、化学反応を進みやすくする物質)。洗剤であれば汚れを分解する反応を促進するし、健康な生体内でたくさんの種類が働いているから、健康に関する商品に入っているものもある(タンパク質でできた酵素は、消化液でバラバラのアミノ酸に分解されてしまうため、酵素を食べることでどれほどの効果があるかわからないがね)」





補足:特定の化合物に対して特定の反応を触媒するという酵素の性質を基質特異性という。

T「話が変わるように感じるかも知れないが、この中に、恋のキューピットを演じた人はいるかな?」


「私の友達は、ある男に恋していました。そこで、私は、まずその男に近づき、一緒にお茶ができるくらいの仲になりました。その後で友達と男を会わせ、男の前でその子を褒めちぎったのです」


T「ほう!それで、成功したかね?」


「ええ。2人ともあそこに座っています」


教室の後ろの方に、顔を真っ赤にしてうつむく男女がいる。


T「よろしい。その場合、君が合成酵素。あのカップルが生成物だ」


T「おいおい、そこで冷やかしている君。君は分解酵素だな。そのカップルを別れさせるつもりか?」


T「自身は変化せず、他の物質に働きかけて(結合して作用する)、化学反応を促進する。それが酵素だ。過酸化水素(呼吸の反応の副産物で、細胞を壊す危険な物質だ)を水と酸素に分解してくれるカタラーゼなどが有名な例だ。なんと、生体内の反応には、酵素がない状況では11億年に1度しか起きないとされる反応もある」



*学生による議論

A「なんて酵素とはすばらしい物質なんだ!」

B「昨日酵素入りクッキーを食べたよ!とってもおいしかった!明日はもっと食べよう!」

C「待って。酵素の主成分はタンパク質だ。タンパク質は高温で変性(=性質が変化する)し失活(=機能を失う)すると書いてある。酵素入りクッキーの酵素は無事なのかな」

D「高温の地域に住む細菌の持つ酵素は高温に耐えられるらしいけど・・・」

A「それに、酵素が消化されたら、アミノ酸になって吸収されるのではないのかな」

B「もしかして同じことはタンパク質の一つ、コラーゲンにも言えるのでは?コラーゲンは、いくら食べたって、すべてアミノ酸になってしまうから、その美容効果は、どこまで信頼できるのだろうか・・・」

C「健康食品について、もっとよく調べてみたいな」









●参考

酵素と代謝

1.酵素の働き

細胞内では一連の化学反応が起こっており、各反応には別々の酵素が働いている。

(1)酵素:細胞内で合成され、生物体内で起こる反応を効率よく進める物質。自身は化学反応の前後で変化しない生体触媒で、タンパク質から主にできている(タンパク質以外の有機低分子化合物を必要とするものもある)。

(2)細胞内酵素:細胞内で働く酵素(カタラーゼ、呼吸酵素など)。

細胞外酵素:細胞外に分泌されて働く酵素(アミラーゼ、ペプシンなど)。

参考 酵素の性質 

基質特異性:酵素には基質と結合する部位(活性部位)があり,活性部位の立体構造が酵素の種類によって異なるため,酵素は決まった基質としか結合しない。この性質を基質特異性という。

最適温度:温度が高くなるほど酵素や基質の分子運動が盛んになるため,基質が酵素と出会う頻度が増す。一方,酵素はタンパク質でできており,ある一定の温度以上になると構造が変化(変性)し,触媒作用を失う(失活)。そのため,酵素反応が最も速くなる温度があり,これを最適温度という。ふつう40℃付近。

最適pH:れぞれの酵素には反応速度が最も速くなるpH最適pH)がある。

2.代謝:生体内で起こっている化学反応。異化と同化があり、エネルギーの出入りを伴う。

(1)代謝とエネルギー代謝:生物体内で起こる化学反応を代謝といい、代謝に伴って起こるエネルギーの出入りや変換をエネルギー代謝という。

(2)ATP(アデノシン三リン酸):呼吸などで生じたエネルギーを一時的に蓄える物質で、分解の際に出るエネルギーをさまざまな活動に使う。すべての生物が使うエネルギーの共通通貨にあたる化学物質。

ATP H2O ADP H3PO4(リン酸) エネルギー

ATP内に蓄えられている化学エネルギーは、ATPの分解とともに、物質合成、能動輸送のほか、筋収縮(運動エネルギーに変換)、発光(光エネルギーに変換)に使われる。

3.異化体内に取り入れた物質を簡単な物質に分解することを異化という。

(1)呼吸:有機物を分解してエネルギーを取り出し、ATPを生成すること。

有機物(C6H12O6) 酸素(O2) (H2O) 二酸化炭素(CO2) ATP

参考 呼吸では、呼吸基質から電子が引き抜かれ、呼吸基質は分解する。分解産物として二酸化炭素が生じ、奪い取られた電子は反応が進むたびにエネルギーを失っていく(そのエネルギーはATPの合成に使われる)。最終的に酸素がHとともに電子を受け取って水が生じる。

参考 酸素のない条件下で,有機物を分解してATPを生成する過程を発酵という。原核生物である乳酸菌は乳酸発酵を行う。酵母菌はミトコンドリアを持つ真核生物であるが、酸素が存在しない環境下ではアルコール発酵でグルコースを分解しATPを得る。ヒトの筋肉においても、酸素欠乏下においては、乳酸発酵と同じ化学反応が起こる。

(2)呼吸基質:呼吸の材料になる物質。例)グルコースなどの糖、脂質、タンパク質

4.同化:体内で簡単な物質から複雑な物質を合成することを同化という。炭酸同化と窒素同化がある。

(覚え方)こんなに複雑な物を作るなんてどうかしてるよ(複雑な物を合成するのは同化)

    ・炭酸同化(二酸化炭素から有機物を合成) 

           例)光合成(光エネルギーを利用)、化学合成(化学エネルギーを利用)

    ・窒素同化(窒素を含む物質から必要な有機窒素化合物を合成)

           例)アンモニウムイオンを用いてアミノ酸を合成する(植物が行う)、アミノ酸を用いてタンパク質を合成する(全生物が行う)

光合成は植物細胞の葉緑体や、ユレモ、ネンジュモなどのシアノバクテリアの細胞で行われる。シアノバクテリアは葉緑体を持たないことに注意。

(H2O) 二酸化炭素(CO2) 光エネルギー 有機物 酸素(O2)