2017年1月26日木曜日

反転授業用「生物基礎・転写と翻訳(セントラルドグマ)」

テーマ:セントラルドグマ

「個々の体細胞の核は、みな同じ染色体を持っており、したがって同じセットの遺伝子を持っている。20世紀初期の生物学者達は、すべての細胞の核で遺伝子が同じであるならば、いったいどのようにして受精卵からの発生を制御することができるのだろうかという問題に直面した。仮に、からだのすべての細胞が同じヘモグロビンやインスリンなどの遺伝子をもっているならば、なぜヘモグロビンタンパク質は赤血球だけで、また、インスリンは特定のすい臓細胞だけで合成されるのだろうか?この問題は未だ完全には解決していないが、細胞によって異なる遺伝子が発現していることは間違いない。生物学者達は遺伝子発現の調節機構について研究を進めている」



T「生命現象で最も重要なポイントを一言であらわしてみたまえ。君」

「最も重要な生命現象は・・・食べることです!」

T「ほう!よろしい。ひとつの答えだ。では、君はどうして食べるのかね?」

「おいしいから?」

T「たとえば、ステーキを食べた時、牛のタンパク質は消化酵素によりアミノ酸にまで分解される。そのアミノ酸はすべて捨ててしまうのだろうか?」

T「違う意見がある人はいない?黒いジャケットの君はどう思う?生命現象の中心は何か?」

「セックスですか」

教室が急に黄色い声でざわめく。

T「こら、笑ってはいけない。しかし我々は、性を持たず、セックスをしない生き物を知っている」

「最も重要な生命現象は成長ではないですか?私たちが講義を受けるのも成長したいからです」

T「人の成長には精神的な成長と肉体的な成長があるね」


T「今出た答えはどれも正しい。しかし私は、今から説明するセントラルドグマのしくみも、考えに入れてもよいのではないか思う

T「セントラルドグマとは、『遺伝情報の伝達は核酸から核酸へ、あるいは核酸からタンパク質へと行われる』という仮説だ」



T「DNAのうち、遺伝子に当たる領域を『転写』し(DNAは『写し』をとらなければ使えない。DNAのうち、写し取られる領域、つまり使う領域を遺伝子といい、人では、遺伝子領域は2万箇所ある。それでもDNAの全領域のうち1.5%しか遺伝子領域がない。のこりの98.5%の領域は何のためにあるのか?これは生物学者が現在最も注目している謎の一つだ)、DNAの『写し』をつくる。この写しを『mRNA』という」






少し難しく描くとこんな感じだ





T「mRNAは核の外でリボソームというタンパク質合成装置に読み込まれ、リボソームはmRNAに書かれた指示(mRNAの3つの塩基がアミノ酸1つを指定する。アミノ酸を指定するmRNAの3つの塩基をコドンという)通りのタンパク質の合成反応を触媒する。この作業を『翻訳』という」



T「私たちの体にあるほぼすべての細胞は(数も量も塩基配列も)同じDNAを持つが、発現している(DNAの遺伝子領域で転写が起きている、つまりスイッチがONに入っていることを、遺伝子が『発現している』という)遺伝子は細胞毎に異なることが知られている」






T「DNAはタンパク質の設計図で有り、タンパク質こそ我々の肉体だ(我々の体はほとんど水とタンパク質でできている)」

T「DNAを複製し子に伝え、その子のDNAの情報通りに、外から取り入れた栄養を使って成長し、再びDNAを子孫に受け渡していく。これが生命現象の本質であると私は思う」









「ちょっと待ってください。DNAの写しを取るとは?細胞内にコピー機があるのですか?」

T「同じような装置がある。RNAポリメラーゼといって、DNAをほぐしながら、片方の鎖(どちらの鎖かは遺伝子によって変わる)をRNAに写していくのだ」

「タンパク質が完成したところで図が終わっていますが、タンパク質と我々とどう関係しているのですか?タンパク質とはそんなに重要なものですか?」

T「タンパク質は君の主成分であり、アミノ酸が長くつながったものだ。信じられないかも知れないが、君もキノコも大腸菌も成分はそう変わらない。水を除けば、あとのほとんどはタンパク質なんだ」

「そんな馬鹿な!」

T「いやいや、本当だ。アミノ酸がつながった、と言っても、タンパク質に使われるアミノ酸は20種類有り、その並び方次第で性質が大きく異なったタンパク質ができる。筋肉をつくるアクチン、毛髪をつくる硬いケラチン、眼の水晶体になる透明なクリスタリン、赤血球の中にあるヘモグロビンは、機能も見た目も様々だが、すべてタンパク質だ。語尾が「~in」で終わっているものはすべてタンパク質だ。インスリンなどもそうだね」

T「RNAポリメラーゼやカタラーゼなどの酵素の主成分もタンパク質だ」






T「しかも、ほとんどの生物で使っているアミノ酸が共通(20種)しているから、他の生物のタンパク質を食べて分解すれば、生じたアミノ酸を自分のタンパク質を作る材料として使える」

T「もう一度セントラルドグマの話に戻ろう。DNAからRNAをつくることを『転写』という。mRNAの情報をタンパク質のアミノ酸配列の情報に読み替えてタンパク質を合成する(この作業はリボソームが行う)ことを『翻訳』という」

「複製というのは何ですか」

T「複製は、DNAからDNAをつくることだ」

T「DNA量を2倍に増やし、そのあと細胞を2つにわけることで、1つの細胞は2つに増えることができる。これを体細胞分裂といい、もとは受精卵という1個の細胞だった君が、60兆個もの細胞になれたのは、この体細胞分裂というしくみのおかげだ」









*学生の自習ノート





























































●参考
セントラルドグマ
1.遺伝暗号の転写と翻訳
(1)遺伝暗号:アミノ酸配列に対応するDNAやmRNAの塩基配列。
①コドン・・・1種類のアミノ酸と対応する遺伝情報の単位で、mRNAの3つの連続した塩基がコドンとなる。
②コドンの解読・・・人工mRNAを用いて、4=64のコドンに対応する20種のアミノ酸が決定され、コドン表が作成された。
参考 コドン表から、1種類のアミノ酸には複数のコドンが対応する場合が多いこと、開始コドンや停止コドンがあることがわかる。







(2)転写と翻訳:DNAやmRNAの遺伝情報(塩基配列)は、RNAの塩基配列に写し取られ(転写)、それをもとにタンパク質が合成される(翻訳)。
(3)転写の過程:❶RNA合成酵素の働きでDNAの二重らせんの一部がほどける。→➋DNAの一方の鎖(塩基配列)を鋳型にして相補的な塩基をもつRNAのヌクレオチドが並ぶ。→➌RNAのヌクレオチド同士が結合してmRNAとなる。
(4)翻訳の過程:❶mRNAと、最初のコドンに対応するアミノ酸とtRNAが結合したアミノ酸―tRNA複合体と、リボソームが付着する。→➋次のコドンに対応するアミノ酸―tRNA複合体が、mRNAと結合する。→➌アミノ酸同士がペプチド結合(アミノ酸同士の結合をペプチド結合という)でつながる。→➍リボソームがmRNAのコドン1つぶんだけ移動する。→➎以降、➋~➍の過程が繰り返されてポリペプチド鎖が合成される。
参考 真核生物では転写は核内、翻訳は細胞質で行われ、両者が同時に起こることはない。原核生物では、転写と翻訳が細胞質内で、同時に行われる。
参考 スプライシング・・・真核生物では転写の際に、遺伝子の塩基配列の一部(イントロン)が除かれ、残った部分(エキソン)がつなぎ合わされてmRNAができる。これをスプライシングという。原核生物にはイントロンがなく、スプライシングもおこらない。

体細胞分裂に伴うDNAの複製
1.分裂
(1)体細胞分裂:体細胞が増殖するときに行う細胞分裂で、1個の母細胞から2個の娘細胞ができる。娘細胞の染色体数は母細胞と同じで変化しない。
(2)減数分裂:生殖細胞ができるときに行われる細胞分裂で、1個の生殖母細胞から4個の生殖細胞ができる。生殖細胞では染色体数、DNA量が半減している。
2.体細胞分裂の過程
体細胞分裂では、まず核が二分する核分裂が起こり、次に細胞質分裂が起こる。
分裂後の娘細胞は,間期のDNA合成準備期(G1)DNA合成期(S),分裂準備期(G2)を経て,次の分裂期に入る。
分化した細胞はふつう細胞周期から外れる。





過  程
間 期


DNA合成準備期(G1)DNA合成期(S),分裂準備期(G2)に分けられる。
S期ではDNAが複製され(S期にDNA量はもとの2倍にまで増加する)G2期では分裂の準備が整えられる。
分 裂 期
前期
核内の染色体は,細長いひも状に変わる。核膜が消失する。このとき現れる同形同大の染色体は相同染色体と呼ばれる。
中期
染色体は,細胞の赤道面に並ぶ。各染色体は,縦に裂け目ができている。
後期
各染色体は縦の裂け目で分離し,両極へ移動する。このようにして染色体は,母細胞の核に含まれる染色体の数と同じになるよう分配される。
終期
両極に移動した染色体は,形がくずれ,間期のときの状態に戻る。やがて核膜が現れ2個の娘核ができる。終期の途中から細胞質分裂がはじまり,細胞質が二分される。
参考 動物細胞はくびれて細胞質が二分されるが、植物細胞は細胞板ができて細胞が二分される。
        
































          
3.DNA量の変化
  分裂直後の娘細胞の細胞1個当たりのDNA量を基準量としたとき,間期のDNA合成期にDNAが複製されて基準量の2倍となり,分裂期の終期には基準量に戻る。
4.遺伝情報の発現
(1)全能性とゲノムの等価性:分化した細胞も受精卵と同様に体を構成するすべての細胞を作り出す能力(全能性)をもちうる。これは、核の遺伝情報が、細胞が分化しても変化せず、核には遺伝情報が保持されているからである。
①動物細胞の全能性・・・ガードンによるアフリカツメガエルの核移植実験
[方法]核小体を2個持つ未受精卵の核を紫外線で破壊し、核小体1個の小腸上皮細胞(分化した細胞)の核を移植して発生させた。➔[結果]核小体1個の細胞からなるカエルができ、移植核が発生初期のものほど正常発生する確率が高かった。
[考察]分化した細胞にも、受精卵と同じ遺伝情報が含まれている。
②選択的な遺伝子の発現:細胞にの分化は、それぞれの細胞で決まった時期に特有なタンパク質を作り出す遺伝子が選択的に活性化されることによって起こる。

●重要例題

細胞周期(間期と分裂期をあわせた時間)が20時間の細胞集団がある。この細胞集団を光学顕微鏡で観察したところ、分裂期の細胞の数は200個中10個だった。分裂期にかかる時間は何時間と推定されるか。考え方も示せ。なお、この細胞集団は同調して分裂していないとする。
答え:同調分裂していない細胞集団では、分裂期にかかる時間が長いほど、多く分裂期の細胞が観察されると考えることができる。したがって、



20時間(細胞周期全体):x時間(分裂期にかかる時間)
=200個(全細胞数):10個(分裂期の細胞数)


x=1
したがって分裂期にかかる時間は1時間


*学生による議論

A「計算がまったくわからない」

B「簡単だよ。長い時期ならば、その時期の細胞は多く観察されるというだけだよ」

C「そうだな。例えば、1日の半分寝ている村人がいるとするだろ?君がその村に行ったとき、村人の半分が寝てるだろうよ」

A「そんなの、夜村に行ったら全員寝てるじゃん」

B「屁理屈を」

D「いやいや、Aさん。まったくその通りだ。この計算が使えるのは、細胞が同調して分裂していないことが条件だね」

C「つまり、村人は、個人個人がランダムな時間に寝るんだ」

B「じゃあAさん。練習問題。一日1時間だけ、ランダムに寝る村人がいる。あなたが村を訪れたとき、どのくらいの村人が寝ている?もちろん1日は24時間だよ」

A「24人に1人が寝ている?」

C「その通りだ!」

D「では、細胞周期が20時間の細胞集団がある。この細胞集団を光学顕微鏡で観察したところ、分裂期の細胞の数は200個中10個だった。分裂期にかかる時間は何時間と推定されるか」

A「えっと、200個中10個が分裂期だったということは、細胞終期全体にかかる時間の10/200が、分裂期にかかる時間だ。細胞周期全体にかかる時間が20時間だから・・・

えっと・・・200人中10人・・・1日20時間・・・・

分裂期の長さは、1時間だ!」

C「その通りだ!すごいよ!それをスマートに書くと、数と時間は比例関係にあるから

200:10=20:?

?=10

になるんだね」

D「では、間期の時間は?」

A「20-1=19時間だ!」

B「完璧だね!」