2016年1月28日木曜日

高校生物基礎発展 第10講 転写と翻訳の方向性

遺伝子・ゲノムについての講義動画はこちら

コドン表についての講義動画はこちら

真核生物の遺伝子発現調節についての講義動画はこちら

□ テーマ1 : 転写



転写、翻訳の方向性が問われることはまれである。が、2015東北大で出題された。
見ておこう。










どの遺伝子であっても、転写されるときは毎回同じDNA鎖が鋳型として使用される。


しかし、
同じDNA分子に含まれる別の遺伝子については、
もう一方のDNA鎖が鋳型鎖として機能していることもある。
たとえば、図1において、遺伝子Aは常に上の鎖が鋳型鎖となり、遺伝子Bは常に下の鎖が鋳型鎖となる。
遺伝子によってどちらが鋳型となるかは異なる。


図1







RNA鎖は5'→3'方向に合成されていく。つまり、3'末端に次のヌクレオチドが付加されていく(図2)。


これはヌクレオチドの伸長において絶対のきまりである。3’末端にあるOHを使って次のヌクレオチドを付加していくからである。





(RNAポリメラーゼは、鋳型DNA上を3'⇒5'方向に動く。


しかし、RNAは3’末端が伸びていくので、「5’⇒3’に転写は進行する」、という表現をする。)。



たとえば、上の図1において、上の鎖が鋳型鎖(遺伝子A)であったならば、RNAポリメラーゼは右から左に動く。


図1において、下の鎖が鋳型鎖(遺伝子B)であったならば図2のようにRNAポリメラーゼは左から右へ動く。


(鋳型DNA-RNA間においても、鎖が逆向きに配置されていることに注意せよ。

鋳型DNAの3’方向はRNAの5’方向に、鋳型DNAの5’方向はRNAの3’方向に対応している。必ず2本のヌクレオチド鎖は逆向きに結合している)





図2





普通、鋳型鎖を非コード鎖(もしくはアンチセンス鎖)、非鋳型鎖をコード鎖(もしくはセンス鎖)という。なぜなら、非鋳型鎖の塩基配列は、生じるRNAの塩基配列と似ていて(TとUの違いはあるが)、配列情報に意味がある(センス)と見なすからである。

非鋳型鎖ー5'AAATAGGCCG3'
鋳型鎖 ー3'TTTATCCGGC5'-
RNA -5'AAAUAGGCCG3'-(非鋳型鎖と配列が似ている)



問題文などで遺伝子が示されるとき、非鋳型鎖(センス鎖)が書かれていることが多いので注意。



(真核生物においては、転写により生じたRNAはスプライシングの過程を経て(成熟)mRNAになることもチェックせよ。高校教科書の中には、スプライシング前のmRNAを『RNA』と呼び、スプライシングが起こった後のmRNAを『mRNA』と書き分けるものもある)


実際は、2本のDNA鎖は二重らせん構造をとっており、転写が行われる部分では二重らせんがほどかれる。

図3を見よ。


図3  DNAがほどかれながら転写が進行する。

















□ テーマ2 : 翻訳


mRNA分子は5'→3'方向に翻訳される。(リボソームはmRNA上を5'から3'へ移動していく

タンパク質はN末端が最初につくられれ、ポリペプチド鎖のC末端にアミノ酸が1個ずつ加わっていく。


したがって、生じるポリペプチドは方向性を持つ。リボソームに近いほうがC末端、リボソームから遠いほうがN末端である。


(アミノアシルtRNA=アミノ酸とtRNAの結合したもの)





図4




転写と翻訳はゴ(5)ミ(3)方向!!と覚えよう。
生命の根本に対してこんな語呂合わせは失礼だが・・











2016年1月23日土曜日

高校生物基礎発展 第9講 免疫

免疫のリアル授業はこちら □ テーマ1 : 自然免疫

高校生物基礎のなかでも、とくに免疫の学習で悩んでいる高校生が多いので、かなり詳しく解説した。教科書理解の基盤としてほしい。




白血球は造血幹細胞由来の細胞である。

一般的に白血球は免疫に働く細胞全体を指す。
ふつう、マクロファージも好中球もリンパ球(T細胞、B細胞)も白血球に含める。

造血幹細胞からは、白血球以外に、赤血球や血小板なども生じる。)






自然免疫にかかわる細胞は以下の通り。教科書より詳しく記す。




①マクロファージ
貪食および殺菌機構の活性化を行う。

(マクロファージも抗原提示を行うことが知られているが、高校では伏せられている。
抗原提示は主に樹状細胞が行う。)

マクロファージはほとんどすべての組織に駐留している。

マクロファージは単球の成熟型である。

単球はすべての白血球と同じく造血幹細胞由来の細胞で、血液中を循環し組織へと遊走し、そこでマクロファージに分化していく。

マクロファージに分化した単球は、多くの細菌に対応するレセプター(受容体)をもつようになる。

その受容体のひとつがToll様レセプターである。

Toll様レセプターには、細菌の細胞壁、タンパク質、べん毛を認識するものなどがある。



Toll様レセプターなどの受容体を通じたマクロファージ細胞内へのシグナルは、
インターロイキンのような向炎症性サイトカインの分泌を誘導する。

マクロファージ細胞内にはファゴソーム(貪食により取り込んだ異物を包む小胞)、リソソーム(種々の抗菌のための酵素を含む)、ファゴリソソーム(リソソームとファゴソームが合体したもの)が発達している。









②樹状細胞

抗原の取り込みを行う。

抗原提示を行う(強力なT細胞応答を誘導する)。

抗原単独の状態は、その抗原に一度も出会ったことのないT細胞を活性化しない。


樹状細胞は、不活性なT細胞に最初に抗原を提示して、T細胞を活性化する能力を持つ




③好中球


貪食を行う。

殺菌機構の活性化を行う。

③好酸球

抗体に覆われた寄生虫の殺傷を行う。

まだよく働きは分かっていない。

④好塩基球


働き未知。



白血球の中でも、好中球と好酸球と好塩基球は、顆粒球と呼ばれる。






⑤マスト細胞
ヒスタミンなどの活性物質を含んだ顆粒の放出を行う。


⑥NK(ナチュラルキラー細胞)


腫瘍細胞やウイルス感染細胞などを殺傷するリンパ球。

大型の顆粒を有する。

ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を殺す。

さまざまな種類のレセプターを有するが、これらに多様性はなく、遺伝子の再編成も起きていない。

NK細胞は自然免疫において重要な役割を果たすと考えられている。

リンパ球様細胞などということがある。



□ テーマ2 : 適応免疫

はじめにMHCについてまとめておく。





MHC(主要組織適合抗原複合体)  
MHCタンパク質(MHC分子)をコードする遺伝子群。


MHCタンパク質(主要組織適合抗原、MHC抗原、MHC分子、MHC)  
単にMHCと呼ばれることもある。細胞内のペプチドを他の細胞に提示するのに使うタンパク質。ホットドッグのような構造をしており、様々なペプチドをのせることができる。


HLA抗原  
ヒトの主要組織適合抗原。白血球だけでなく赤血球を除く全身の細胞表面に存在する。





自然免疫にかかわる細胞は以下の通り。

リンパ球と呼ばれる白血球のグループがかかわる。


リンパ球にはT細胞、B細胞、NK細胞がある。
 このうち、主に適応免疫に働くのはT細胞とB細胞である。
BおよびT細胞はともに骨髄に由来する。


T細胞は、T細胞の名前の由来である胸腺へ遊走してそこで成熟する。

(B細胞のBは本来はファブリキウス嚢を表したものである。
これはリンパ球がその中で成熟する、幼鶏のリンパ組織の名前なのだが、幸運なことに骨髄由来ということを同様に示してくれる。)















(リンパ球のクローン選択について簡単に述べる。
免疫寛容の仕組みを確認しておこう。
自分に対して反応するリンパ球は除かれるのである。

①1個の前駆細胞が、異なる特異性をもつ多種のリンパ球を生み出す。

②自己反応性のある未熟リンパ球は除去される(それで、免疫寛容が維持される)。

③成熟したリンパ球上の受容体が非自己成分と相互作用すると、そのリンパ球は活性化し、分裂をはじめる。)







(記憶細胞について確認しておこう。
免疫応答の経過中、抗原刺激で活性化したB細胞およびT細胞の一部は記憶細胞へと分化する。

記憶細胞は長期に持続する免疫を担う細胞で、再感染やワクチン接種時に働く。)




①B細胞

教科書によって、
B細胞はひ臓で成熟すると書いてあったり、
B細胞の成熟する場所を曖昧にしていたりする。
(参考書にはB細胞は骨髄で成熟と書いてあるものもある)。
その理由は以下の通り。

B細胞は骨髄で生じる。

しかし、生じるのは未熟なB細胞である。

B細胞は、遺伝子の再編成などを行いながら、成熟していく。

そして、さまざまな機能を獲得しながら(=分化を進めながら=成熟しながら)やがてひ臓に達する。

つまり、B細胞は成熟した!とどこで断定すればよいのか明確な定義はないのである。

そのような理由で、骨髄でB細胞が成熟したとみなす参考書と、ひ臓でB細胞が成熟したとみなす教科書がでてくる。

ひ臓目指して未熟B細胞は旅をするが、一部のB細胞しかひ臓には入れない。

ひ臓に入れなかったB細胞は短命であり、3日程度で死んでしまう。

ひ臓にたどり着いた未熟B細胞の中でも、さらに一部のものだけがあるシグナルを受け取り、長期生存できるようになる。

そのあと、様々な細胞との相互作用を経て、B細胞は抗体産生細胞や記憶細胞に分化していく。








B細胞の持つB細胞受容体(=B細胞レセプター=BCR)に抗原が結合すると、リンパ球は増殖し抗体産生細胞(形質細胞)へと分化する。

この細胞は抗体を産生する。

抗体はB細胞のもつ受容体とほぼ同じ構造であり、分泌型受容体とも呼ばれる。

ヘルパーT細胞はB細胞を活性化して抗体産生細胞への分化を促す。


補足
B細胞の分化の詳しい仕組みは以下の通り。

B細胞はB細胞受容体で抗原と結合する。

B細胞は抗原を細胞内に取り込み分解する。

B細胞は抗原の一部をMHCに結合させ、細胞表面に提示する。
(高校ではB細胞の抗原提示は扱われていない)

B細胞はT細胞が認識できる形でその細胞表面に抗原を提示する。


ペプチド(分解された抗原)・MHC複合体を認識したヘルパーT細胞は、B細胞に活性化シグナルを伝達する。

その結果、B細胞は抗体産生細胞に分化する。

ヘルパーT細胞は、B細胞と出会う前に、活性化している必要がある。

ヘルパーT細胞は、適切なペプチドを提示した樹状細胞との相互作用により活性化する。







②T細胞

T細胞はT細胞受容体(=T細胞レセプター=TCR)をもつ。



T細胞は胸腺で成熟する。

その判断の根拠として、TCRの遺伝子の再編成は、胸腺で起こる過程だけに限られることがあげられる。

(対してB細胞では、様々な場所で、様々な段階で遺伝子の再編成が起こる。
B細胞の成熟の時期が断定できないのはそのような理由もある。)






T細胞の機能には大きく3つある。

細胞損害、活性化、調節である。



細胞損傷性のT細胞は、キラーT細胞(細胞損傷性T細胞)とよばれる。


キラーT細胞は、ウイルスやそのほかの細胞内病原体に感染した細胞を殺す。


ヘルパーT細胞は、抗原刺激を受けたB細胞を活性化して抗体産生へと向かわせるのに必須な補助的シグナルを与える。



ヘルパーT細胞の一部は、マクロファージを活性化してより効率的な細胞損害と貪食能力を与えることができる。

(制御性T細胞も存在する。旧課程の医系では出題があった。
制御性T細胞は、他のリンパ球の活性を抑制し、免疫応答の調節を補助する。)




キラーT細胞はあまりにその機能が破壊的なため、活性化のために二重の制御を受ける。

1つは樹状細胞からのシグナル。

1つはヘルパーT細胞からのシグナルである。


アクティブラーニング課題:ヘルパーT細胞の「ヘルパー」とは、いったい何を指しているのだろうか。考えてみよ。



(もともとヘルパーT細胞はB細胞の抗体産生細胞への分化を「助ける」という意味で名付けられた。


その後、ヘルパーT細胞にはさまざまな種類があることが分かった。

さらに、マクロファージを活性化するというヘルパーT細胞の役割が発見されたとき、


「ヘルパー」という名前はこの機能にまで拡張された。







ヘルパーT細胞は、以下の機能をもつものが見つかっている。

①マクロファージを活性化し、細菌の殺菌を促す。

②B細胞を活性化する。

③上皮細胞や繊維芽細胞に作用して、好中球の動員を促すケモカインを生産させる。

補足
実は、高校でヘルパーT細胞とよんでいるのは、CD4T細胞というT細胞のグループである。

CD4T細胞はいろいろな種類が発見されている。

上の①②③はそれぞれ別種のCD4T細胞が関わる。

CD4T細胞のなかには働きが十分にわかっていないものも多い。

CD4T細胞の中には制御性T細胞もある。

制御性T細胞は不均一な細胞集団で、T細胞の活性を制御し、炎症の過程での自己免疫疾患を防いでいる。





以上、詳しく記したが、免疫の分子機構は研究中であり、完全には解明されていない。


問題を解く際は、出題者の意図と、教科書の記述に従うこと。

















2016年1月22日金曜日

高校生物基礎発展 第7講 DNA

youtube講義動画はこちら

染色体・DNA・遺伝子について



DNAとRNA



シャルガフの規則難問対策





□ テーマ1 : DNAについての基礎知識を押さえよう!

(1)核酸
糖、リン酸、塩基からなる単位をヌクレオチドという。

ヌクレオチドという用語は必ず問われる!


このヌクレオチドが多数結合したものを核酸といい、核酸にはDNAとRNAがある。




ヌクレオチドをつなげて、核酸を合成するのは酵素(DNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼ)である!



糖と塩基が結合したものをヌクレオシドという。アデノシンなどがある。
(リボース+アデニン=アデノシンなど)

したがって、ATPはヌクレオシド三リン酸とよばれることもある(ヌクレオシドにリン酸が3つ結合したものだから)

(2)DNAの構造

DNAは二重らせん構造をとっている!

ワトソンとクリックが発見した!

これは必ずテストに出る!ぜ~~~ったいに覚えよ!

高校生物基礎発展 第8講 心臓


□ テーマ : 心臓

心臓についてのミニ講義動画はこちら

洞房結節はペースメーカーとして働く。

洞房結節は右心房にある。

洞房結節は特殊な心筋細胞群で、活動電位を自然発生する。

活動電位の発生頻度、すなわち心拍数は、交感神経と副交感神経の制御を受ける。

交感神経は心拍数を増加させ、副交感神経は心拍数を減少させる。


(あまりテストに出ないが、房室結節は心房と心室の間をつなぐ電気的な架け橋となる。)

興奮の経路は、特殊な心筋であるヒス束、プルキンエ線維などが伝える。


心拍の速さは交感神経と副交感神経で制御されている。

洞房結節で発生したリズムは刺激伝導系によって心臓全体に伝わる。




心臓は意思に関係なく一生のあいだ常に動き続けている。
拍動を毎分 70 回とし、
心臓が一回収縮したときの拍出量を 70ml とすると、
一分間では 
70×70=4,900ml
の血液が排出される。

単純な計算だが、看護栄養系でよく出るので注意。



心室に注目して心臓の拍動を考える。難問になりやすいので詳しく書く。

筋収縮による圧力の変化と弁の開閉に注目すること!看護栄養系でたまに出る!

新課程でも出題が見られた!




①まず、房室弁(文字通り心房と心室の間にある弁)が開き、心室に血液が流入する。

このとき半月弁(心室と動脈の間にある弁)は閉じている。

血液が流入するので、心室の容積は増加する。

血液が流入している間、心室の内圧はほぼ変化しない。



②房室弁は閉じる。半月弁も依然としている。

ここで、心室に筋肉の収縮による圧力が加わる。

入り口と出口にあたる2つの弁は閉じていいて、心室の容積は変わらない。


(液体は圧力の変化によってほぼ体積変化しない。
注射器の針を閉じている限り、ピストンを押してもシリンダー内の液体の体積を変えることはできない。
ピストンを押すとシリンダー内の液体分子の暴れ具合、つまり圧力は増加する。
逆に、ピストンを引くと、圧力は低下する。
どちらの場合も、液体の出入り口が閉じていればシリンダー内の液体の体積は変わらない。)







③心室内部の血液の圧力が動脈内部の圧力に打ち勝つと、半月弁が開く。

心室の血液は動脈に流れ出ていく。

心室の容積は減少する。

心室に加わる圧力は、血液が抜けている間もほぼかわらない。

高い内圧を持っている心室は、内部の血液を押し出し続ける。



④半月弁が閉じる。房室弁も依然として閉じている。

筋肉が弛緩し、心室の内圧は下がるが、
2つの弁が閉じているので体積は変化しない。




⑤心室の内圧は低くなり続け、心房の血液の圧力に押し負けると、房室弁が開き、

血液が心室に流入する。
(①と同じことが繰り返される)

心室の容積は増加する。

心室の圧力は変わらない。






テストに出ないが、房室弁が閉じるときの音が心音第一音、半月弁が閉じるときの音が心音第二音である。



概略図
(厳密には③や⑤①は等圧変化ではない。)






詳しいまとめ



1.房室弁が開き、心室に血液が急速に流入する。①

 心室の拡張がゆるやかに続く。①

 心房が収縮し、心室に更に血液が流入する。①

房室弁が閉鎖に向かう。①のラスト




2.心筋は収縮を開始し心室内圧は上昇する。②
*ただし、心室には液体が入っているので、体積は変化できない。液体が入っているペットボトルを握るイメージ。






3.半月弁が開き、急激に心室が収縮して心室圧は最大となり一気に血液が吐出される。③の前半
③の途中で内圧が最大になる。






4.心室の緊張が解け、心室圧が低下に転じ、血液の吐出が緩やかになる。③の後半








5.心室圧が動脈圧よりも低下し、半月弁が閉鎖に向かう。③のラスト






6.全ての弁が閉じ、心室圧が低下する。④
*ただし弁が閉じているので、体積は変化しない。



アクティブラーニング課題:人の胎児では、左心房と右心房の壁に穴が空いている。ということは、右心房に流入した、血液が肺を経由せず左心房に流れ込むということである。問題はないか。血液は肺で酸素を受け取れないが、問題はないか?






(もちろん問題ない。胎児は酸素を胎盤を通して母体の赤血球から奪う。胎児は肺でのガス交換は行わない。)




高校生物基礎発展 第6講 酵素

□ テーマ : 酵素とは?

(1)酵素は生体触媒として働く!

酵素は基質と活性部位で結合して酵素―基質複合体を形成する。

その結果反応が起こり、基質は生成物に変化する。

酵素自身は反応の前後で変化しない











触媒とは、「自らは変化せず、反応を促進する物質」。

ふつう化学反応を開始させるにはエネルギーが必要。

このとき必要なエネルギーを活性化エネルギーという(物質を化学反応しうる活性化状態にさせるのに必要なエネルギーが活性化エネルギー)。

アクティブラーニング課題:どうして一般に温度が高くなると化学反応が起きやすくなるのか。説明せよ。

(化学反応はふつう高温により活性化エネルギーを得る。また、熱運動が激しくなるので分子同士の衝突する回数が増えると考えられている)




(2)酵素の特性は以下の2つが良く問われる!

① 酵素の主成分はタンパク質である!

⇒それゆえ、最適温度、最適pHがある。
(無機触媒との違いとしてよく出題される!)

②酵素が特定の基質だけに作用する性質を基質特異性という。 

高温やpHの大きな変動によってタンパク質は変性し、酵素は失活する。

酸化マンガン(Ⅳ)などの無機触媒は高温であればある程よく働く。

酵素も無機触媒も、細胞の外でも働ける!

一般的な酵素の最適pHは7。


□ テーマ3 : 酵素には様々な種類がある!教科書や問題で目にするたびに確認しよう!(生物基礎では、酵素の名称はほぼテストに出ない。様々な酵素があり、多種多様な生命現象にかかわっていることだけ確認しておこう)



(1)加水分解酵素



アミラーゼ : デンプン → マルトース   
 アミラーゼはコウジカビなどの菌類も持つ。


マルターゼ : マルトース → グルコース



スクラーゼ: スクロース → グルコース+フルクトース 
          
ラクターゼ : ラクトース → グルコース+ガラクトース



ペプシン : タンパク質 → ペプトン  
ペプトンとは、タンパク質の不完全分解物である。
                     
トリプシン : ペプトン → ポリペプチド(動物の細胞接着に関係するカドヘリンなどのタンパク質を壊す。DNA抽出実験の時に、タンパク質を分解する。)



キモトリプシン : ペプトン → ポリペプチド  
                
ペプチダーゼ : ポリペプチド → アミノ酸



リパーゼ: 脂肪 → 脂肪酸+モノグリセリド 
                   
ペクチナーゼ : ペクチンを分解(カルスをつくる際に用いる)



セルラーゼ: セルロースを分解(カルスをつくる際に用いる) 
                        
ATPアーゼ : ATP → ADP+リン酸(ナトリウムポンプの本体は、ナトリウム-カリウム-ATPアーゼという酵素)



ウレアーゼ: 尿素 → 二酸化炭素+アンモニア 
             
アルギナーゼ : アルギニン → オルニチン+尿素(オルニチン回路に関与)



トロンビン : フィブリノーゲン → フィブリン(血液凝固に関与) 
     
制限酵素 : DNAを特定の塩基配列部分で切断(遺伝子組換えで用いる。細菌はウイルスのDNAを切断するために持っている。)


(2)酸化還元酵素



脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ): 有機酸から水素を奪う(発酵・呼吸などに関与)
         
カタラーゼ : 過酸化水素 → 水+酸素(活性酸素が増えるのを防ぐ)



ニトロゲナーゼ : 窒素+水素→ アンモニア(窒素固定に関与)    
 


ルシフェラーゼ : ルシフェリン+酸素 → 酸化ルシフェリン(ホタルの発光に関与)



硝酸還元酵素 : 硝酸 ― 酸素 → 亜硝酸(窒素同化の際植物の体内で行われる反応)  
                

亜硝酸還元酵素 : 亜硝酸 ― 酸素 → アンモニア(窒素同化の際植物の体内で行われる反応) 
 
(3)脱離酵素

脱炭酸酵素(デカルボキシラーゼ): 有機酸から二酸化炭素を発生  
 
炭酸脱水酵素 : 炭酸 → 二酸化炭素+水(赤血球にある)


その他の酵素

DNAポリメラーゼ: DNAを鋳型にDNAを複製(DNA合成期に働く。好熱細菌のDNAポリメラーゼは熱に強く、PCRで使われる。)  


RNAポリメラーゼ: DNAを鋳型にRNAを合成(転写に働く。真核生物のRNAポリメラーゼは単独では働かない。基本転写因子というタンパク質が必要。また、クロマチン繊維が緩むことも必要。このようにRNAポリメラーゼが働く際の調節機構が解明されつつある。)   
        
DNAリガーゼ : DNAの切断端同士を結合(遺伝子組換えで用いる)     

アミノアシルtRNA合成酵素 : アミノ酸とtRNAを合成  
   
逆転写酵素 : RNAを鋳型にDNAを合成(この現象を逆転写という)


高校生物基礎発展 第5講 タンパク質

□ テーマ : タンパク質は超頻出!

(1)アミノ酸

タンパク質は、20種のアミノ酸がペプチド結合してできたものである!


アミノ酸が鎖状にペプチド結合して、ポリペプチドを形成する。

タンパク質は1つあるいは複数のポリペプチドからなる。

例えばヘモグロビンは4つのポリペプチド(α鎖2つ+β鎖2つ)からなるのに対して、ミオグロビンは1つのポリペプチドからなる。
どちらもヘム(鉄を含む色素)を含むことも知っておこう。


高校生物基礎発展 第4講 光合成

□ テーマ1 : 光合成色素を押さえよう!

クロロフィルは青紫色(短い波長)と赤色(長い波長)をよく吸収する。


(短い波長の光はすぐ進路を変え、よく散乱する。波長の短い青い光が散乱している様子は、青空に現れている。長い波長の光は直進性が強く、遠くからも届く。だから、地平線の彼方から光が届く朝や夕方の空は赤い。)


アクティブラーニング課題:どうして葉は緑色に見えるのか。


(赤と青紫の光は葉に吸収され光合成に用いられる。緑色の波長の光は反射される。それがわれわれの眼に届く。)


光エネルギーは最終的に色素タンパク質複合体の中心部(反応中心という)にある、クロロフィルa(主色素)に集約される。
その他の色素は補助色素といわれる。


アクティブラーニング課題:深海魚であるドラゴンフィッシュは赤色光を発して獲物を照らす。
通常、魚類の網膜にある視覚色素は赤色に対して鈍感である。
ドラゴンフィッシュはクロロフィル由来の667nmを吸収する色素が別に存在する。
この事実から、ドラゴンフィッシュの戦略を論じよ。






(ドラゴンフィッシュは餌を探す際、赤色の光を発する。

ほかの魚は赤色を認識できないので、照らされていることは知らない。
反射された赤色光をドラゴンフィッシュはクロロフィルに由来する色素を用いてキャッチし、そのシグナルを視覚色素に伝達する。)






□ テーマ2 : 光合成のストーリーをマスターしよう!

①葉緑体のチラコイド膜で起こる反応


チラコイドの膜の上にあるクロロフィルが光を受け、活性化する。

活性化したクロロフィルから電子が飛び出る。

クロロフィルから飛び出た電子は様々な反応を経て、その反応がもととなりATPが合成される。

また、電子はやがてHとともに運ばれ、葉緑体のストロマで使われる。

電子を失ったクロロフィルは、水から

電子を引き抜く

つまり水を分解する。



水は分解され、酸素が発生する。


②葉緑体のストロマで起こる反応

カルビン・ベンソン回路という反応が起こる。


すべての高等植物は、カルビン・ベンソン回路で固定した炭素を主に


デンプン(葉緑体)や


スクロース(細胞質)、


あるいはセルロース(細胞壁)に変換する。





カルビン・ベンソン回路は、H(と電子)や、ATPを使って、二酸化炭素から炭水化物をつくる反応である。



高校生物基礎発展 第3講 呼吸

□ テーマ1 : 異化についてマスターしよう!
同化と異化の講義動画はこちら
https://youtu.be/qQ2vpAcauIo

代謝には、栄養素の分解に関わる異化反応と、生合成に関わる同化反応がある。異化はエネルギーの放出を、同化はエネルギーの吸収を伴う。







異化には発酵(発酵は生物基礎範囲外)と呼吸がある。異化は分解と覚えておこう。





発酵=酸素のない環境で有機物を分解しATPを生成する過程





□ テーマ2 : 呼吸=酸素を用いて有機物を分解する過程!

呼吸は酸素を用いて行う異化反応!!!!(酸素は反応の最後でになる!)

これだけ覚えればよい!

「高級イカ(呼吸は異化)」と覚えよう!


以下詳しい仕組み


第1段階

解糖系:
細胞質基質で行われる反応。

この過程で糖由来の物質はH(と電子)をとられる。
2ATPが生成される。
解糖系はほぼすべての生物種でみられる代謝経路である。



第2段階

クエン酸回路:

ミトコンドリアで行われる反応。

2ATP生成。

「まだ食えん(クエン酸回路)、待っとくれ(マトリックス)」



ピルビン酸やほかの化合物(脂肪酸やある種のアミノ酸など)からつくられたアセチルCoAという物質は、クエン酸回路で酸化される(Hと電子をとられる)。




アクティブラーニング課題:ミトコンドリアを培養液にとり、グルコースを加えた。グルコースの変化を説明せよ。












(変化しない。ミトコンドリアはピルビン酸を取り込みクエン酸回路の基質に用いる。)







解糖系・クエン酸回路では、H(と電子)が糖由来の物質から取られる。

H(と電子)は、ATP生産のために使われる。





第3段階

電子伝達系:ミトコンドリアで行われる反応。

最大34ATP生成。直接酸素を使う反応。酸素がないと停止する。


電子伝達系では、解糖系、クエン酸回路に比べATPの最大生成量がめちゃめちゃ多いことに注目!

最終的にグルコース由来の物質からとられた電子および水素は、
酵素の働きで酸素に渡される。
その結果水が生じる


結局、呼吸では最大38ATPが生成する(発酵と比べて、グルコースからよりたくさんのエネルギーを取り出している!)。









高校生物基礎発展 第2講 代謝

ATPのリアル授業はこちら

□ テーマ1: 代謝


生体内では、エネルギーの放出・吸収を伴う物質の分解・合成などが活発に行われている。

生体内での物質の化学反応を代謝という。


□ テーマ2: ATP(アデノシン三リン酸

ATPはエネルギーの共通通貨である。


生物体では、代謝でのエネルギーのやり取りは、ATPを用いて行われる。


ATPとは、糖と塩基とリン酸からなる化学物質(つまりヌクレオチドの一種)である。


糖と塩基にはさまざまな種類がある。

ATPの糖にはリボースが使われる。

ATPの塩基にはアデニンが使われる。

ATPは自身の中に蓄えられたエネルギーを放出するとき、リン酸を1個離してADPになる。

つまり、ATPのエネルギーはリン酸とリン酸の間の結合(高エネルギーリン酸結合に蓄えられていることがわかる!


生物基礎範囲ではここまででOK!




ATPという物質は代謝に欠かせない細胞内のヒーローだ。


ATP「待たせたな!」


なーんちゃって。正確な形を資料集や問題集で確認しておきましょう。


補足
ヌクレオチド中の「塩基」とは、ふつう、「弱い塩基性をもつ窒素化合物(正確には、窒素原子を含む芳香族化合物であるプリンまたはピリミジンの誘導体)」のことを指す。

アデニンとリボースがつながったものをアデノシンという。

(リボース➕アデニン(A)=アデノシン
リボース➕グアニン(G)=グアノシン
デオキシリボース➕チミン(T)=チミジン
リボース➕シトシン(C)=シチジン
リボース➕ウラシル(U)=ウリジン

などがあるが、ほぼテストに出ない。)


ATPはアデノシンに3つのリン酸がつながったものである。

ATPの正式名称はアデノシン三リン酸である。

リン酸基のところの結合は大きなエネルギーを持っており、高エネルギーリン酸結合とよばれる(よくテストに出る)。

ATPのリン酸基がとれたものはADP(アデノシン二リン酸)という。

ATPがADPとリン酸基に変化するときにエネルギーが放出される。



アクティブラーニング課題:ATPの検出器はどのような場面で私たちの暮らしを支えているか。





(すべての生物はATPのエネルギーを生命活動に使っている。細菌がいるかどうかの衛生検査にははATPの検出器がよく使われる。
ATPがあるということは、そこに生命体がいることを意味する。)




(糖とは、炭素と水からなる比較的複雑な化学物質の総称である。別名炭水化物とよばれる。炭水化物、すなわち糖は、炭素と水が何個もくっついたものととらえることができる。)

(塩基とは、ヌクレオチドを構成する物質のうち、窒素を含むものをいう)

(ヌクレオチドとは、糖と塩基とリン酸が結合した物質の総称である。

ATPもヌクレオチドである。

ヌクレオチドはすべての生物が持っている生命活動のための道具である。

DNAの構成単位もヌクレオチド、RNAの構成単位もヌクレオチドである。)

(DNAのヌクレオチドに使われている糖はデオキシリボースである。
RNAのヌクレオチドに使われている糖はリボースである。

DNAやRNAが合成されるときは、ヌクレオチドが鎖のようにつながっていく。)

かつて生物はRNAを遺伝子の本体として使っていた。このとき、RNAは同時に酵素としても働いていたらしい。

現在でも生体触媒として働くRNA(リボザイムという)が見つかっている。

やがて、遺伝物質にDNAを、酵素にタンパク質を使うようになった。

我々は太古の昔からヌクレオチドを生命活動に用いてきたことになる。

(ヌクレオチドこそ生物の本体であり、肉体はヌクレオチドを運び複製する装置だという大胆な仮説がある。大学で利己的遺伝子について学ぶがよい。)









アクティブラーニング課題:触媒活性のあるDNAは見つかっていない。RNAが酵素として働くときの利点はなんであろうか。



















(RNAは1本鎖であるので、塩基同士が結合することで様々な立体構造をとることができる。この立体構造をとるということが重要で、タンパク質も特定の立体構造をとることによって触媒活性を持っている。高温や極端なpHによって立体構造が崩れ、そのことを変性という。また、酵素が活性を失うことを失活という。DNAは二重らせんで安定しており、立体構造の自由度は低い。)









アクティブラーニング課題:どうして生物はRNAに遺伝情報を込めることをやめたのか。






 
 
(RNAは1本鎖であり、不安定で壊れやすい。欠失や挿入などの修復も難しい。大学で実験すれば、いかにDNAが壊れにくく、RNAが壊れやすいかわかる。RNAに関する実験を素手で行うことはまずありえない。また、あらゆる細胞の中にRNA分解酵素は大量に存在する。理由は大学で。)


高校生物基礎発展 第1講 細胞

□ テーマ1 : 細胞について

イギリスのフックがコルクに小さな孔を見つけ、細胞と命名した(実際には細胞壁をみた)。

レーウェンフックは原生動物を発見した。

シュライデンは植物について、シュワンは動物について細胞説を提唱した。

フィルヒョーは「すべての細胞は細胞から生じる」とした。ゴルジがゴルジ体を観察した。


「シュワンワン!犬は動物!」


細胞は生命の基本単位である。30億年以上前に出現した1個の細胞から進化したと考えられている。


すべての細胞はDNAを持ち、その情報に従ってたんぱく質を合成する。


細胞が生きていくのに必要な最小遺伝子数は400以下らしい。生物学者の予想に反してヒトのような生物でもその数多くなく、20000ほどである。(2万という数字はテストに出る!)







□ テーマ2 : 細胞小器官について押さえよう!

(1)核
 
核液が核小体と染色体を浮かべている。低分子のたんぱく質や脂質などを含む。
核膜は同じ性質を持つ膜の二重膜からなる。これを、「同質二重膜からなる」と表現することがある。
核膜孔(RNA等が通る)がある。

   染色体・・・DNAと、ヒストンというタンパク質からなる。


   核小体・・・RNAとタンパク質からなる。



脊椎動物の骨格筋の細胞は多核!


核小体はrRNA合成の場。したがってRNAを多く含む。
核小体は一般に細胞分裂の前期に消失する。
メチルグリーン・ピロニン液で染色すると、DNAは緑色、RNAのある部分、すなわち核小体は赤色に染め分けることが出来る。





核膜がない細胞を原核細胞といい、原核細胞からなる生物を原核生物という。ふつう1~10μmの大きさ。

原核細胞は、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、ゴルジ体、小胞体、中心体などほとんどの細胞小器官をもたない!
いくつかの原核生物は、線毛とよばれる毛状の突起物によって基質や他個体に付着する。


原核生物=細菌(根粒菌、大腸菌、乳酸菌、ユレモ、アナベナ、ネンジュモ)と古細菌(超好熱菌、メタン生成菌)
細菌の鞭毛は、真核生物の鞭毛とは構造が異なる。


アナベナ、ユレモ、ネンジュモはシアノバクテリア門である。


アクティブラーニング課題:生物界で自給自足が得意な生物群は何であろう。


(窒素固定を行うシアノバクテリアはもっとも自給能が高い生物の一つであり、成長するために必要なのは光、窒素分子、水、無機塩類のみである。)


葉緑体やミトコンドリアを持たないが、多くの原核生物は光合成や呼吸を行える!


細胞膜、リボソーム(真核生物のものより小型)、細胞壁はある!



原核生物のDNAが二重らせんであるのは変わらない!



原核生物のDNAは核様体に局在している!


アクティブラーニング課題:原核生物において、細胞の表面でエネルギーを生産し、細胞の内部でエネルギーを消費する。このことは原核生物が大きくなれない理由の一つと考えられている。もし大きくなれるとすると、どのような形状になると考えられるか。



(多くの突起を持ち、細胞体積に対する表面積の割合を最大にする)







(2)ミトコンドリアと葉緑体


超定番問題「ミトコンドリアと葉緑体の共通点を述べよ」

答え:核内DNAとは異なる固有のDNAとリボソームをもち、半自律的に増殖する。また内外異質の二重膜からなる構造を持つ。

アクティブラーニング課題:ミトコンドリアや葉緑体が単独培養できたという報告はまだない。なぜか。説明せよ。


(独立して増殖するだけの遺伝子をもっていないから。)


共生説=好気性細菌が共生しミトコンドリア、シアノバクテリアが共生し葉緑体になったという説。マーギュリスが提唱。

「共生したのはまーぐれです(マーギュリス)」

ミトコンドリアはヤヌスグリーンで青緑色に染色される。


ミトコンドリアDNAには、タンパク質を指定する遺伝子のほか、tRNAやrRNAをつくる遺伝子もコードされている。




(3)膜構造を持たない構造体は2つ!


① リボソーム・・・タンパク質合成(翻訳)の場

② 中心体・・・紡錐体の形成やべん毛に関与


リボソームはタンパク質とrRNAからなる!


中心体は2つの中心粒(中心小体)からなる。

電子顕微鏡で見ると、中心粒は9組の微小管(3本で1組になっている)が集まったもの(これを中心粒という)が直交して2つ配置されていることがわかる。
すべての真核生物の鞭毛・繊毛は、この微小管が関係する(9+2構造という構造をとる)。
さらに微小管は体細胞分裂時の紡錐体形成に関係している。
中心体は動物とシダ・コケのように精子をつくる下等植物に存在する。



(4)一重の膜で囲まれた構造体は4つ!


① 小胞体・・・物質の輸送路

② ゴルジ体・・・タンパク質への糖の添加、濃縮、分泌
リボソームが作ったタンパク質は、小胞体を通ってゴルジ体へ運ばれ、修飾されて完成する。
その後、分泌顆粒というかたちで分泌される。
③ 液胞・・・有機酸、糖、無機塩類の貯蔵、浸透圧調節

液胞には細胞液が入っている。花弁の細胞にはアントシアンが含まれる。
液胞は成長した細胞で大きい。

④ リソソーム・・・加水分解酵素を含み、細胞内消化




アクティブラーニング課題:生物や細胞小器官が膜で包まれていることの利点は何か。不利な点は何か。


(有利な点⇒膜上や膜内部に酵素や基質を集め、代謝に最適な環境をつくることができる点。

不利な点⇒膜で包まれることで、細胞小器官の内外への物質の輸送にエネルギーや特別な仕組みが必要になる点。)



補足)

1.動物細胞には見られない細胞小器官⇒細胞壁・葉緑体・発達した液胞
2.光学顕微鏡で観察できないもの⇒リボソーム・小胞体・リソソーム・ミトコンドリア、葉緑体の内部構造、細胞骨格
3.液胞に含まれる色素⇒アントシアン
「駅の方は(液胞)案外(アントシアン)しーんとしてますけどねえ(浸透圧調節)」
4 真核細胞は、核と細胞質からなる。
細胞質には、細胞小器官が存在し、その間は細胞質基質と呼ばれる。
細胞質基質は液状で、水やタンパク質を含んでいる。


□ テーマ3 : 生物界のスケール



インフルエンザウイルス・・・0.1μm

ミトコンドリア・・・2μm


葉緑体・・・5~10μm

ミトコンドリア、葉緑体が数μmのスケールなのは、これらの細胞小器官がもとは原核生物であったからだと考えると覚えやすい。
人の赤血球・・・7~8μm


酵母・・・10μm


酵母・・・10μm





ヒトの卵・・・140μm




ゾウリムシ・・・200μm

ニワトリの卵黄・・・25mm


ヒトの坐骨神経・・・1m





□ テーマ4 : 細胞分画法


細胞粉砕液に遠心力をかけて、細胞小器官を密度や大きさで分けることを細胞分画法という。


細胞小器官の分離できる順序は以下のとおり。覚えよ。


1.核、細胞片


2.葉緑体


3.ミトコンドリア


4.リボソームなどの微細構造


アクティブラーニング課題:細胞分画法は、低温で、等張、あるいはやや高張液中で行う。なぜか。

(低温で行うのは、酵素作用を抑え、酵素による細胞内の構造物の分解を防ぐため。
低張液中では、細胞小器官が吸水し、破裂して壊れてしまうので、等張あるいはやや高張液中で行う。)





□ テーマ5 : 生体膜はリン脂質の二重の層からなる!

(1)リン脂質と生体膜

生体膜とは、細胞膜、ミトコンドリア膜、ゴルジ体膜などの総称。

リン脂質は脂溶性であるので、クロロホルムなどの有機溶媒に溶けだしてしまう。

リン脂質とは、グリセリンに脂肪酸が2分子(疎水性)とリン酸化合物(親水性)が結合した複合脂質のこと!

グリセリンに脂肪酸が3分子結合したものは脂肪(こちらは単純脂質という)という。

動物では皮下脂肪、植物ではアブラナ、ゴマ、トウゴマなどの種子に多く貯蔵される。

リパーゼ・・・脂肪の分解を触媒する酵素。

胆汁・・・アルカリ性で胃液を中和するほか、脂肪を乳化してリパーゼの働きを助ける。消化酵素は含まれない。

その他の脂質には、ステロイドという化学構造(4つの環が融合した炭素骨格)を含むコレステロールがある。

性ホルモンや副腎皮質ホルモン(コルチコイド)はステロイドを含むので、コレステロールはその材料になる。

ステロイドホルモンはペプチドホルモンと違い細胞膜を通過できる。


(3)流動モザイクモデル

リン脂質の二重層にタンパク質が埋め込まれ、タンパク質は流動性があるという細胞膜のモデルを流動モザイクモデルという。

シンガーとニコルソンによって提唱された。


(2)選択的透過性

細胞膜のもつ、溶質によって透過性が異なる性質を選択的透過性という!

水は脂質膜を通過しにくいが、分子が小さいため、ある程度は通過する。


水に対する透過性を上げるにはアクアポリン(水分子を通すチャネル)が必要。


アルコールやエーテルなどの脂質に溶けやすい物質は生体膜(脂質膜)を通過しやすい。


タンパク質やグルコースのような分子の大きな物質は細胞膜を通れない。


Mg+などの無機イオンも、電荷をもっているので、まわりの水分子に引っ張られ、膜を透過できない(透過にはチャネルが必要。例えばKチャネルなど。)。


ビタミンAは脂溶性なので透過できる(ビタミンBは水溶性なので透過できない)。


酸素や二酸化炭素などの非極性小分子は拡散により迅速に膜を透過する!


尿素はゆっくり、拡散により透過する(しだいに透過してくる)。


細胞膜にはホルモンの受容体となるタンパク質も存在する。


ステロイドホルモンは脂溶性であり細胞膜を通過できる(ステロイド⇒ステロイド核をもつ化合物のこと。他にもコレステロールや性ホルモン、コルチコイドなどがステロイドである。性ホルモンやコルチコイドをステロイドホルモンという。チロキシンはステロイドホルモンではないが細胞膜を透過できる。)。


ステロイドホルモンは細胞内に入って受容体と結合する(受容体と複合体を形成し、転写因子になることが多い)。


ペプチドホルモンは細胞膜を透過できない。
したがってペプチドホルモンは細胞膜上の受容体と結合することによって細胞内に情報を伝える。

アクティブラーニング課題:ペプチドホルモンは細胞膜を通過できない。にもかかわらず情報を細胞内に伝える。どのように細胞内に情報が伝わるのか。説明せよ。



(セカンドメッセンジャーがかかわる)



□ テーマ2 : 生体膜を介した輸送の仕組みをマスターしよう!

(1)ポンプ
ポンプ・・・ATPのエネルギーを使って物質輸送を行うしくみ。能動輸送!  
例:ナトリウムポンプナトリウム・カリウム-ATPアーゼというタンパク質がATPのエネルギーを使って細胞内にカリウムイオンを、細胞外にナトリウムイオンを輸送する)



(2)チャネル
チャネル・・・イオンや水の通路。一般的に開閉にはエネルギーは不要!
濃度勾配に従って物質を輸送する(濃度差が解消される方向に輸送する)ので受動輸送!
例:カリウムチャネル(カリウムイオンが通れる)、アクアポリン(水が通れる)

腎臓での水の再吸収にも関与!アクアポリンの数が細胞膜上に多いほど水の透過性が高くなる!

アクアポリンは小胞に埋め込まれており、バソプレシンが分泌されると、小胞が細胞膜と融合し、集合管の細胞膜上に埋め込まれる。


(3) 共役運搬体・・・ナトリウムイオンの濃度勾配を利用してグルコースを濃度差に逆らって輸送する。ナ
トリウムイオンの濃度勾配に蓄えられたエネルギーを用いてグルコースを輸送するので、能動輸送である!
このような輸送を共役輸送という!





アクティブラーニング課題:以下の空欄にはどのような言葉が入るだろうか。想像してみよ。
「生物学のあらゆる問題を解く鍵は、最終的に細胞の中に見つかるに違いない。なぜなら、
(                                                  )」

EB.ウィルソン 1925 Essential細胞生物学より




(どの生物も、その時点で一個の生物であるか、過去のどこかで一個の生物だったからである、が正解だが、入試的には、細胞が生物の構造的、機能的基本単位だからである、だろうか)