2016年1月19日火曜日

高校生物 第17講 受容器と効果器

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眼の授業


予習
動物は、最適な環境を探して動き回ります。外敵から逃げ、えさを狩ります。
そのための高性能な器官を持ちます。
様々な刺激を受け取る器官は受容器とよばれます。眼や耳などが例です。受容器が受け取る決まった刺激を敵刺激といいます。
受取った情報を伝えるしくみも必要です。それが神経系です。神経細胞などが構成単位です。
受取った情報によっては、何かしら動作をせねばなりません。動作を行う器官を効果器とよばれます。筋肉などが例です。
この受容器→神経系→効果器のながれは重要です。

眼の網膜には光を感じる視細胞が、耳のコルチ器という部分には聴細胞があります。どちらも感覚細胞といって、刺激を直接需要する細胞たちです。
神経系には中枢神経系とよばれる部分があります。脊髄と脳です。
この中枢神経系は情報を処理し、命令を下すこともあります。
筋肉は、ATPのエネルギーを使って収縮・弛緩します。また、カルシウムイオンなども関わります。

講習
□ テーマ1 : 受容器と効果器
敵刺激という言葉は必ず覚えよ!!
動物は外界からの刺激を受け取って,それに応じた反応を起こす。
多くの多細胞動物では,刺激を受け取る目や耳などの受容器と,刺激に応じた反応を起こす筋肉などの効果器と,その間の連絡にはたらく神経系とが発達している。
受容器にはそれぞれ受け取ることのできる刺激の種類が決まっており,このような刺激を敵刺激という。
補足

平衡覚のように自分の体の姿勢や動きを感知するような受容器を自己受容器という。
筋紡錘なども筋肉の長さを感知する自己受容器である。
対して、外部の刺激(音・光など)を感知する受容器を外受容器という。
ヘビは、ピット器官といって赤外線(赤色光よりも波長の長い光)を感知する外受容器をもつ。







アクティブラーニング課題:舌の敵刺激は何か。鼻の敵刺激は何か。


舌の味覚芽では液体に溶けている化学物質を、鼻の嗅上皮では気体の化学物質を受け取っている。それぞれ受け取れる化学物質が適刺激となる。)




□ テーマ2 : 眼 
眼は、その構造を教科書の図で覚えておけ!それで最低点はとれる!また、遠近調節はめちゃめちゃよく出る!
眼の適刺激は光(昆虫・鳥類の多くの種は紫外線[紫色の光よりも波長の短い光]を知覚することができる)
眼の水平断面(視神経が左方向に伸びていることから、水平断面とわかる。視神経は脳の方へ伸びている)を上から見てみよう。



この図では、水平断面を上(頭頂部)から見ているとすると、

左が鼻側(視神経がのびるほう。脳があるほう。)              
右が耳側


①眼の構造

・眼球は、白色の厚い結合組織(強膜)で包まれたほぼ球状の器官である。


・光は、強膜とつながっている角膜を通じて眼球内に入る。
補足
血管は光を遮るので角膜には血管がない。





・網膜

一番内側の膜が網膜!!(当然である。網膜の前に邪魔な膜があっては光を受け取れない。)
網膜に分布する視神経繊維があつまり、網膜を貫いて眼球外に通じている部分を盲斑という。
盲斑には、視細胞は存在しない(視神経がある!)ので、ここでは光を受容することができない。←めちゃくちゃよく問われる!


ヒトの眼によく似たカメラ眼をもつ軟体動物であるタコや巻貝の眼では、視細胞の光を吸収するところのうしろに視細胞の軸索が位置しているため、網膜には視細胞がとぎれることなく並んでいる。
そのため、タコには盲斑がない。

連絡神経細胞は、視細胞が受け取った光刺激を調節(コントラストを調節したりなど)している。
色素細胞は、その名の通り色素を含む細胞。光の乱反射を防ぐ。




アクティブラーニング課題:色素細胞の役割は何か。




(反射を抑え像を鮮明に保つ。)





重要例題
網膜には,色素細胞 視細胞 視神経細胞 連絡神経細胞の細胞層がある。光の入ってくるほうから並んでいる順に記号で示せ。( c d b a )


・水晶体


水晶体はクリスタリンを豊富に含む。


毛様体が収縮することで水晶体の厚さは変わる。



・ガラス体

ガラス体は、水とタンパク質からなるゼラチン状の物質である。

ぱんぱんに眼球内に詰まっており、

網膜を強膜に押し付けてガラス体内にはがれてこないようにしている。


②遠近調節
遠くを見るとき,毛様体の筋肉が弛緩し,チン小帯が引っ張られ水晶体うすくなる。

この関係は、テストによーーーく出る!

遠くを見るとき、水晶体がうすくなることを覚える。

水晶体をうすくするためには、チン小帯で引っ張ればよい。

チン小帯をひっぱるには、毛様体は弛緩すればよいと考える。





「角膜と水晶体で光が屈折し、像が網膜にむすばれる」というしくみがカメラに似ているので、ヒトの眼はカメラ眼 とよばれる。


 ③暗順応・明順応
暗いところから急に明るいところに出るとまぶしく感じるが,しばらくすると正常にもどる。
これを明順応という。
逆に、明るいところから暗い所に行くとはじめ何も見えないが、しばらくすると正常に戻る。
これを暗順応という。

補足
この反応には、主に桿体細胞の中にあるロドプシンという視色素(視物質)が関係している。
ロドプシンはビタミンAの還元型であるレチナールとオプシンというタンパク質からなる。
この視物質が多いと、弱い光に適応できる。
つまり、光刺激に対する閾値が下がる(=感度が上がる)。

ロドプシンに光が当たると、レチナールの構造が変化して、オプシンからはずれる(ロドプシンは分解する)。
この反応がきっかけとなり、視細胞に電位変化が生じる。
(変形した)レチナールは、暗所で、酵素の働きにより、再びオプシンと結合し、ロドプシンが再合成される。
この際、レチナールは血液中からビタミンAの形で供給される。
ビタミンAが不足すると、夜盲症(鳥目)になる。


いきなりまぶしい所に出ると、桿体細胞のロドプシンが急に反応し、細胞が過剰に興奮してよく見えなくなる。
しかし、錐体細胞は働く。
また、ロドプシンが減少することで、桿体細胞の感度は下がってくる。
これが明順応のしくみである。

逆に暗い所では、ロドプシンが足りず、よく見えない。
するとロドプシンが合成・蓄積され、桿体細胞の感度が上がる。
これが暗順応である。



色を感知する錐体細胞の中にも視色素がある。
異なる視色素をもつ細胞では光吸収スペクトルが異なる。
ヒトは3種(赤・青・緑)の視色素をもつため、3種の錐体細胞があることになる。
桿体細胞にはロドプシンしか視色素がないため、吸収した光の色に関する情報を伝えることができない。


ロドプシン=レチナール(ビタミンAのアルデヒド型)とオプシン(タンパク質)がくっついたもの。




























活性化型ロドプシンはすぐに不活性になり、さらに構造変化を起こしたレチナールを放出してしまう。
構造変化前のレチナールはかん体細胞にはなく、色素上皮細胞から補給される。

明るい場所では、ほとんどのロドプシンは分解されてしまっている。しかし、暗い場所に移り時間が経つと、だんだん色素上皮細胞から構造変化前のレチナールが補給され、ロドプシンは再合成されて行く。暗順応の前半では錐体細胞の感度上昇が起こり、後半ではかん体細胞の感度上昇が起こる。

発展:なお、錐体細胞は、かん体細胞より、感度は低いが、応答が速いことが知られている。


黄斑に集中して分布する青・緑・赤の3種の錐体細胞(黄斑にはかん体細胞がない)が色の識別に関わる。
黄斑以外に分布するかん体細胞は色を識別できず、明暗の識別に関わる。


⑤光量調節
こう彩の筋肉が収縮、または弛緩することで、瞳孔の大きさを調節している。
光の量を調節するため、暗い場所では瞳孔は拡張し、明るい場所で瞳孔は縮小する。

補足
また、瞳孔は、交感神経を介した指令で拡大し、副交感神経を介した指令で縮小する。
こう彩には2種類の筋肉が分布している。





こう彩は、メラニン色素を含む繊維性膜であり、中心部は瞳孔となっている。

こう彩は2種類の平滑筋で制御されている。

リング状に走行する瞳孔括約(括約とは、縮めるという意味)筋は、副交感神経の支配を受けており、収縮すると瞳孔が小さくなる。

放射状に走行する瞳孔散大筋は、交感神経の支配を受けており、収縮すると瞳孔は拡大する。


瞳孔は常に交感神経と副交感神経の入力のバランスで大きさが調整されている。







□ テーマ3 : 耳 
各部位の名称と、基底膜の形が問われる!また、前庭・傾き!!半規管・回転!!これは絶対に覚えよ!!




①うずまき管とコルチ器

うずまき管の中にコルチ器があり、
コルチ器が振動することで、聴細胞が興奮する。


鼓膜の振動は、耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)により増幅され鼓膜に伝わる。

補足


卵円窓と正円窓を間違える人が多い。詳しく論じておく。

詳しい知識を聞きかじっておくと、間違えることはなくなる。



うずまき管は、無理に例えるなら、3階建ての長い家である。

3階は前庭階、2階は中央階、1階は鼓室階である。

前庭階と鼓室階は外リンパ液で満たされている。

中央階は内リンパ液で満たされている。

中央階にあるコルチ器が主役である。

中央階は、内リンパ液が充満する袋のようなものであり、2つの部屋(前庭階と鼓室階)によってはさまれた形になっている。

音の圧力波の前後の振動によって、この袋状の管は上下に揺さぶられる。


(我々が普段「耳」とよんでいる突起物は耳殻といい、音を集める役割を持つに過ぎない。)


音によりアブミ骨が卵円窓を押し込む。

圧力波は前庭階を伝わり、基底膜を下方に押す。

波は頂部まで達し、折り返す。

圧力波は鼓室階を伝わり、基底膜を押し上げる。

アブミ骨は逆方向に動き、基底膜が共鳴しはじめる。

音波は正円窓を外向きに押し、頂部へ逆戻りする。


中耳と内耳の間に位置する薄膜の正円窓が圧力波の最終的な到達地点である。

正円窓の膜は、アブミ骨の動きによって形作られる圧力波とは逆位相で前後に振動する。

うずまき管は骨によって強固に囲まれているため、もし、正円窓がなければ、アブミ骨は卵円窓を振動させて外リンパ液を揺らすことができないであろう。


このように、音波は中央階へ直接入らないのにもかかわらず、ウォーターベッドの一端を強く押し下げた時の反応のように、音入力によって中央階全体が振動する。
コルチ器が感受するのは、まさにこの振動である。









重要例題
コルチ器内の聴細胞に振動が伝わるまで、以下の構造がどのような順に振動するか。振動が伝わるのが早いほうから答えよ。A:鼓膜  B:コルチ器  C:耳小骨   ( ACB )

②基底膜
うずまき管の中で基底膜が振動する場所は音の高さによって異なり,低い音ではうずまき管の頂上部に近い部位が振動し,高い音では逆にうずまき管の底部に近い部位が振動する。
このように音の高さによりうずまき管内の異なる場所の聴細胞が興奮するため,ヒトは音の高低を識別できる。

上部にいくにしたがって基底膜は広くなる。



③おおい膜
有毛細胞の先端は、ゼラチン質のおおい膜の中に埋め込まれており、その様子は、さながら毛布が細胞を覆うようである。

基底膜が音により振動すると、毛布であるおおい膜の下の有毛細胞は前後に引っ張られ、毛は屈曲する。


④平衡覚
前庭は、耳石でからだの傾きを受容する。
また、半規管は、リンパ液の流れでからだの回転を受容する。
回転や傾きなどの感覚を平衡覚という。
よ~~~~くテストに出る!!

また、難問として、半規管の感覚毛の動きが出題される!




(観測者を半規管の中に置くか外に置くかで見える運動が違うが、物理の内容なので深く考えない方がよい。)

□ テーマ4: 筋肉 
暗帯の長さは変わらない!すべり説!!筋小胞体の中のカルシウムイオン!!この3つを覚えておけ!

筋肉は、横しまのある横紋筋と横しまのない平滑筋にわけられる。

筋肉以外の効果器には、鞭毛(ミドリムシ)、繊毛(ゾウリムシ)、発光器官(ホタル)、発電器官(シビレエイ、デンキウナギ)などがある。


①「全か無かの法則」が成り立つ場合と成り立たない場合を区別せよ!


(a) 1本の筋繊維( なりたつ )  
 
(b) 筋繊維の束である骨格筋( なりたたない  )



アクティブラーニング課題:(b)はなぜか。




(筋繊維によって閾値が異なるから)   



 
ある一定の強さの刺激(閾値という)を与える前は、反応しない、さらに、それ以上刺激を強くしても、反応が大きくならないという現象を全か無かの法則という。
1本のニューロンも全か無かの法則に従う。

                      
②筋収縮によりサルコメア(筋節)や明帯は短くなるが、暗帯の長さは変わらない。
このことは、下のように収縮が起こるというすべり説の根拠となっている。


ミオシンの頭部は、ATPを分解することで得たエネルギーを使ってアクチンフィラメントに力を加える。
そしてフィラメント間で滑りが起きる。←これだけでも覚えておく!

カルシウムイオン濃度が低い時は、トロポミオシンというタンパク質がミオシンのアクチンへの結合を阻害している。

筋小胞体から放出されたカルシウムイオンがトロポニンというタンパク質に結合すると、トロポニンがトロポミオシンの形を変え、ミオシンのアクチンへの結合を可能にする。

④筋肉はATPのエネルギーを使って収縮する。




呼吸や解糖によるATP生産が追いつかない場合、クレアチンリン酸を用いてATPがすばやく生産される。

ATPが十分にあるときクレアチンリン酸は再合成され、蓄積される。

いわばクレアチンリン酸はエネルギーの貯金である。

激しい運動を続けるといずれATP量が減少しだす。

直接使用されるのはクレアチンリン酸ではなくATPであることを忘れるな!
補足
 筋収縮時の代謝とエネルギー代謝は,次の①~④で示される。
① 筋肉には,呼吸基質としてグリコーゲンが含まれており,解糖や呼吸でそれを分解してATPが合成される。
② 筋肉には,ATPよりも化学的に安定なクレアチンリン酸がATPの5~10倍含まれる。
③ 筋肉には多量のATPを蓄積しておくことができないため,安静時には,多量につくられたATPのエネルギーとリン酸をクレアチンに移転することでクレアチンリン酸が合成される。これには,クレアチンリン酸転移酵素がはたらく。
④ 筋収縮によってATPが消費され,筋肉内のATPが不足してくると,③とは逆に クレアチンリン酸のエネルギーとリン酸がADPに転移し,ATPが再合成される。



アクティブラーニング課題:筋収縮の機構は十分に解明されていない。なぜか。




(構造が小さすぎる。クレアチンリン酸がすばやく消費されたATPを補うので、ATP量の変化を観測するのが難しい。)





アクティブラーニング課題:次のうち、効果器として適さないものをすべて選べ。

①外分泌腺 ②繊毛 ③色素胞 ④発光器官 ⑤発電器官 ⑥内分泌腺 




(  すべて適する  )