無性生殖(自身のクローンを作る)は,遺伝子の交換,混合が無く,元の細胞と遺伝的に全く同じ次世代の個体を作る生殖法です。通常の体細胞分裂と同じ機構であり,子孫は親と同一のクローンの関係にあります。
一方,有性生殖は,生殖に特異的な生殖細胞を発達させ,生殖細胞同士の合体で新個体を作ります。減数分裂で生殖細胞を作る際に、体細胞のもつ相同染色体のセット数をnとすると、2のn乗の配偶子をつくることができます。
たとえば、人の体細胞は染色体を2n=46に持ちますので、n=23であり(23セットの相同染色体が体細胞にあるでしょう)、2の23乗の配偶子が減数分裂で生じる計算になります。
実際はさらに相同染色体の組換えにより配偶子の種類が増し,受精の場合には掛け合わせにより一層多様な遺伝子の編成となります。
有性生殖の利点は多様性にあります。多様な子孫を作ることができるのです。
人は有性生殖を行います。
精子という細胞と、卵という細胞が受精し、受精卵となります。
精子や卵は減数分裂で作られます。
講習
□ テーマ1 : 有性生殖に関する用語を知っておこう!
★受精以外あまりテストに出ない!
★受精以外あまりテストに出ない!
① 子孫を残すことを生殖という。生殖のために作られた細胞を生殖細胞という。
② 原則として、細胞同士が合体することで次の個体になるような細胞を配偶子という。
③ 配偶子を介して行われる生殖方法を有性生殖。それに対して、配偶子を介さずに行われる生殖方法を無性生殖という。
④ 配偶子には大きさの同じもの(=同形配偶子)や大きさの違うもの(=異形配偶子)がある。
精子と卵は大きさだけでなく形も異なる、顕著な異形配偶子である。
卵には運動性がなく、精子はべん毛などをもち運動性がある。
⑤ 配偶子同士の合体を接合といい、接合によって生じた細胞を接合子という。
卵と精子の接合は特に受精とよばれる。
同形配偶子接合 例:クラミドモナス、アオミドロ、ゾウリムシ
異形配偶子接合 例:ミル、アオサ、アオノリ
同形配偶子による接合を同形配偶子接合、異形配偶子による接合を異形配偶子接合という。
受精は特殊な異形配偶子接合だが、「精子と卵の合体を何というか」「それにより生じる細胞を何というか」といわれたら、「受精」「受精卵」と答えること。「接合」「接合子」では△か×。
□ テーマ2 : 無性生殖
★無性生殖は必ず生物例とセットで知っておこう!新課程でもまだ問われる!
(1)無性生殖は、生物名も選べるように!
① 分裂(アメーバ、ゾウリムシ、イソギンチャク、プラナリア)
1個体が複数個体にわかれるのが分裂。
イソギンチャクやプラナリアは多細胞生物である(多細胞生物も分裂を行う)ことに注意
② 出芽(酵母菌、ヒドラ)
親の体の一部がふくらみ、新個体となるのが出芽(「芽のようなふくらみ」がキーワード)。
③ 胞子生殖(カビのなかま)
胞子から次の個体が生じるのが胞子生殖。
④ 栄養生殖(ジャガイモ:塊茎、サツマイモ:塊根、ヤマノイモ、オニユリ:むかご、オランダイチゴ、ユキノシタ:走出枝)
根・芽・茎といった栄養器官から新個体が生じるのが栄養生殖。以下のような器官から新個体が生じる。
補足
塊茎=地下茎が肥大したもの。
塊根=根が肥大したもの。
むかご=葉の付け根に生じる芽(側芽、腋芽)が養分を貯蔵して球場になったもの。
走出枝(ほふく茎)=地面を這うように伸びる長い茎。
さし木や接ぎ木は、人工的に栄養生殖をおこなわせているようなもの。
アクティブラーニング課題:花は栄養器官とは呼ばれない。何器官と呼ばれているのか。花の機能に着目して答えよ。
(生殖器官。花粉をつくったり、花を咲かせて虫に花粉を運んでもらったりは、すべて子孫を作るために獲得した仕組み)
補足
多くの生物では有性生殖と無性生殖の両方を行う。
ゾウリムシは分裂で増殖して数を増やすが、やがて分裂能力が低下してくると接合を行い、これによってふたたび分裂能力を獲得することが知られている。
アクティブラーニング課題:無性生殖と有性生殖のそれぞれの利点について説明せよ。
(有性生殖は多様性の獲得という点で有利。無性生殖は数を増やすという点で有利。恋愛は面倒などという考え方があるが、そもそも有性生殖に手間がかかるのは当たり前。)
ミツバチにおいて、卵が合体をせずに細胞分裂をはじめて新個体となる現象が知られている。このような発生を単為発生といい、単為発生によって新個体を生じるような生殖法を単為生殖という。