2016年1月28日木曜日

高校生物基礎発展 第10講 転写と翻訳の方向性

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□ テーマ1 : 転写



転写、翻訳の方向性が問われることはまれである。が、2015東北大で出題された。
見ておこう。










どの遺伝子であっても、転写されるときは毎回同じDNA鎖が鋳型として使用される。


しかし、
同じDNA分子に含まれる別の遺伝子については、
もう一方のDNA鎖が鋳型鎖として機能していることもある。
たとえば、図1において、遺伝子Aは常に上の鎖が鋳型鎖となり、遺伝子Bは常に下の鎖が鋳型鎖となる。
遺伝子によってどちらが鋳型となるかは異なる。


図1







RNA鎖は5'→3'方向に合成されていく。つまり、3'末端に次のヌクレオチドが付加されていく(図2)。


これはヌクレオチドの伸長において絶対のきまりである。3’末端にあるOHを使って次のヌクレオチドを付加していくからである。





(RNAポリメラーゼは、鋳型DNA上を3'⇒5'方向に動く。


しかし、RNAは3’末端が伸びていくので、「5’⇒3’に転写は進行する」、という表現をする。)。



たとえば、上の図1において、上の鎖が鋳型鎖(遺伝子A)であったならば、RNAポリメラーゼは右から左に動く。


図1において、下の鎖が鋳型鎖(遺伝子B)であったならば図2のようにRNAポリメラーゼは左から右へ動く。


(鋳型DNA-RNA間においても、鎖が逆向きに配置されていることに注意せよ。

鋳型DNAの3’方向はRNAの5’方向に、鋳型DNAの5’方向はRNAの3’方向に対応している。必ず2本のヌクレオチド鎖は逆向きに結合している)





図2





普通、鋳型鎖を非コード鎖(もしくはアンチセンス鎖)、非鋳型鎖をコード鎖(もしくはセンス鎖)という。なぜなら、非鋳型鎖の塩基配列は、生じるRNAの塩基配列と似ていて(TとUの違いはあるが)、配列情報に意味がある(センス)と見なすからである。

非鋳型鎖ー5'AAATAGGCCG3'
鋳型鎖 ー3'TTTATCCGGC5'-
RNA -5'AAAUAGGCCG3'-(非鋳型鎖と配列が似ている)



問題文などで遺伝子が示されるとき、非鋳型鎖(センス鎖)が書かれていることが多いので注意。



(真核生物においては、転写により生じたRNAはスプライシングの過程を経て(成熟)mRNAになることもチェックせよ。高校教科書の中には、スプライシング前のmRNAを『RNA』と呼び、スプライシングが起こった後のmRNAを『mRNA』と書き分けるものもある)


実際は、2本のDNA鎖は二重らせん構造をとっており、転写が行われる部分では二重らせんがほどかれる。

図3を見よ。


図3  DNAがほどかれながら転写が進行する。

















□ テーマ2 : 翻訳


mRNA分子は5'→3'方向に翻訳される。(リボソームはmRNA上を5'から3'へ移動していく

タンパク質はN末端が最初につくられれ、ポリペプチド鎖のC末端にアミノ酸が1個ずつ加わっていく。


したがって、生じるポリペプチドは方向性を持つ。リボソームに近いほうがC末端、リボソームから遠いほうがN末端である。


(アミノアシルtRNA=アミノ酸とtRNAの結合したもの)





図4




転写と翻訳はゴ(5)ミ(3)方向!!と覚えよう。
生命の根本に対してこんな語呂合わせは失礼だが・・