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転写、翻訳の方向性が問われることはまれである。が、2015東北大で出題された。
見ておこう。
どの遺伝子であっても、転写されるときは毎回同じDNA鎖が鋳型として使用される。
しかし、
同じDNA分子に含まれる別の遺伝子については、
もう一方のDNA鎖が鋳型鎖として機能していることもある。
たとえば、図1において、遺伝子Aは常に上の鎖が鋳型鎖となり、遺伝子Bは常に下の鎖が鋳型鎖となる。
遺伝子によってどちらが鋳型となるかは異なる。
図1
RNA鎖は5'→3'方向に合成されていく。つまり、3'末端に次のヌクレオチドが付加されていく(図2)。
これはヌクレオチドの伸長において絶対のきまりである。3’末端にあるOHを使って次のヌクレオチドを付加していくからである。
(RNAポリメラーゼは、鋳型DNA上を3'⇒5'方向に動く。
しかし、RNAは3’末端が伸びていくので、「5’⇒3’に転写は進行する」、という表現をする。)。
たとえば、上の図1において、上の鎖が鋳型鎖(遺伝子A)であったならば、RNAポリメラーゼは右から左に動く。
図1において、下の鎖が鋳型鎖(遺伝子B)であったならば図2のようにRNAポリメラーゼは左から右へ動く。
(鋳型DNA-RNA間においても、鎖が逆向きに配置されていることに注意せよ。
鋳型DNAの3’方向はRNAの5’方向に、鋳型DNAの5’方向はRNAの3’方向に対応している。必ず2本のヌクレオチド鎖は逆向きに結合している)
図2
非鋳型鎖ー5'AAATAGGCCG3'-
鋳型鎖 ー3'TTTATCCGGC5'-
RNA -5'AAAUAGGCCG3'-(非鋳型鎖と配列が似ている)
問題文などで遺伝子が示されるとき、非鋳型鎖(センス鎖)が書かれていることが多いので注意。
(真核生物においては、転写により生じたRNAはスプライシングの過程を経て(成熟)mRNAになることもチェックせよ。高校教科書の中には、スプライシング前のmRNAを『RNA』と呼び、スプライシングが起こった後のmRNAを『mRNA』と書き分けるものもある)
実際は、2本のDNA鎖は二重らせん構造をとっており、転写が行われる部分では二重らせんがほどかれる。
図3を見よ。
図3 DNAがほどかれながら転写が進行する。
□ テーマ2 : 翻訳
mRNA分子は5'→3'方向に翻訳される。(リボソームはmRNA上を5'から3'へ移動していく)