2016年1月18日月曜日

高校生物 第4講 タンパク質



予習

動物の筋肉の主成分るタンパク質は,細胞の内外においてさまざまな生命活動に関与する主要な生体高分子であり,20種のアミノ酸をその基本単位として成り立っています。

(ヒトの体には数万~十万種類ものタンパク質が存在すると考えられており,その働きによって分類すると,およそ次のように分類することができます。
①酵素タンパク質:細胞の内外で行われる化学反応の触媒として働くタンパク質。全タンパク質の種類の半分は酵素タンパク質であると考えられている。
②構造タンパク質:生物の体を支える役割をもつタンパク質。コラーゲンなど。
③収縮タンパク質:筋肉の収縮をもたらすタンパク質。ミオシン,アクチンなど。
④防御タンパク質:免疫系で働く免疫グロブリンなど。免疫グロブリンができる際には、B細胞のなかで遺伝子の再編成とよばれる現象がおこります。
⑤調節タンパク質:遺伝子発現に関わる転写因子など。
⑥輸送タンパク質:栄養物質などを運ぶ役割をもつタンパク質。アルブミンなど。
⑦膜タンパク質:チャネルなどをつくるタンパク質。)

タンパク質は様々な立体構造をとりますが、高温や極端なpH変化で変性してしまいます。そうして機能を失うことを失活といいます。
酵素として働くタンパク質には最適温度や最適pHがあります。温度が高ければ高いほどよく働く無機触媒とは違いますね。
アミノ酸の構造を見てみましょう。アミノ酸はアミノ基とカルボキシ基をもちます。Rの部分はアミノ酸によって変わります。側鎖といいます。

アミノ酸→「アミノ」基をもつカルボン「酸」

アミノ基とカルボキシ基が反応し、ペプチド結合が形成されます。
長くつながったアミノ酸の順序を一次構造といいます。
ポリペプチドは水素を介する弱い結合などにより、らせん状(αヘリックス)になったりじぐざぐ状(βシート)になったりします。これを二次構造といいます。
さらに二次構造が立体的に配置され、三次構造をとります。複数のポリペプチドがあわさってできる立体構造を四次構造といいます。


講義
□ テーマ : タンパク質は超頻出!一次構造~四次構造まで説明できるようになろう!
アミノ酸をかけるようになろう!また、アミノ酸がペプチド結合した図もかけるようになろう!

(1)アミノ酸

タンパク質は、20種のアミノ酸がペプチド結合してできたものである!


アミノ酸が鎖状にペプチド結合して、ポリペプチドを形成する。

タンパク質は1つあるいは複数のポリペプチドからなる。

タンパク質の例

①ヘモグロビン
②ミオグロビン

例えばヘモグロビンは4つのポリペプチド(α鎖2つ+β鎖2つ)からなるのに対して、ミオグロビンは1つのポリペプチドからなる。
ヘモグロビンもミオグロビンは、どちらもヘム(鉄を含む色素)を含むことも知っておこう。

アミノ酸の中でも、メチオニン(開始コドンにたいおするアミノ酸)とシステインは硫黄(S)を持つことは知っておこう。
システインの硫黄はS-S結合に使われる。


補足
具体的には、システインのもつ2つの―SH基(スルフヒドリル基、覚えなくてよい)同士が反応し、Hがとれて、-S-S-が形成される。

タンパク質を加水分解すると、シスチンというアミノ酸の2量体が単離される場合がある。

これは、2つのシステインがS-S結合でつながったものである。




アクティブラーニング課題:美容院でかけるパーマは、ケラチンというタンパク質に含まれる豊富なS-S結合が深く関係している。どのようなしくみによるのか。説明せよ。



(毛髪に還元剤をかけることで、
S-S結合を還元してーSHとする。
カールした状態で酸化剤をかける。
そうすると、カールした形でS-S結合が再び形成される。)












(2)高次構造
特に二次構造の例(αヘリックス、βシート)と、四次構造(特にサブユニットという用語)がよく問われる!



(i)「アミノ酸の並び方」を一次構造という。



(ii)ポリペプチドの部分的な立体構造には、αヘリックス(らせん構造)とβシート(ジグザグ構造)がある。アミノ酸同士が水素結合することによりできる構造である。これを二次構造という。 
「部分的な立体構造」が二次構造のキーワード。







補足
タンパク質が機能をはたすことなどに当たって、ポリペプチド鎖が正しい三次構造に折りたたまれたりするのを、「シャペロン」という一連のタンパク質が助ける。


(iii)αーヘリックスやβ―シートなどが水素結合やS-S結合でさらに折りたたまれた、ポリペプチド全体の立体構造を三次構造という。
「立体構造全体」が三次構造のキーワード。



(iv)複数のポリペプチドがつくる構造を四次構造という。このとき、ポリペプチド1つ1つをサブユニットという。
「複数のポリペプチド(サブユニット)」が四次構造のキーワード。



アクティブラーニング課題:ある酵素のアミノ酸が別のアミノ酸に置換する変異が起きたのにもかかわらず、酵素の活性に変化がなかった。どうしてか。説明せよ。



(活性部位以外のところで変異が起きていた。重要な立体構造を崩すに至らず、活性に影響がなかったと考えられる)

(3)タンパク質の例として、教科書では免疫グロブリンが扱われている。








免疫グロブリンの模式図をかけるようになろう!特にH鎖、L鎖、可変部の位置が良ーーく問われる!!!

免疫グロブリンは抗体として働くタンパク質である。


遺伝子の再編成の計算問題が良く出るが、それに関する知識はあまり問われない!

免疫グロブリンは4本のポリペプチドでできたY字型のタンパク質である。

2本の腕の可変部で抗原と結合(抗原抗体反応という)する。

抗体は、B細胞が分化して生じた抗体産生細胞でつくられ、体液中に放出される。

抗体の可変部のアミノ酸配列は、遺伝子の「連結」による「再編成」によって変化することを、「利根川進」が解明した。

未熟なB細胞のDNAには、免疫グロブリンH鎖可変部を指定する遺伝子群が3グループ(V、D、J)ある。

ここから1つずつ遺伝子が選ばれる。

V群から、D群から、J群から遺伝子が選ばれ、「連結」(選ばれた遺伝子がつながる)し、遺伝子の「再編成」がおこなわれる。

同様にL鎖可変部の遺伝子も2つの遺伝子のグループ(V、J)があり、遺伝子の「連結」と「再編成」が起こる。

このようなしくみ(遺伝子の「連結」と「再編成」)により膨大な種類の可変部が生じる。

T細胞受容体(TCR、T細胞レセプター)」にもこのような多様性の維持機能が働いている。

TCRは提示された「断片化を受けた抗原」に結合して認識する。

当然TCRにも膨大な種類がなければならない。


補足

抗原は普通、抗体と結合する複数の異なった部分(抗体と結合する部分を抗原決定基という。抗原は複数の抗原決定基をもつ。)があり、異なった種類の抗体が結合する。

単一の抗原決定基に結合する抗体をモノクローナル抗体(抗体産生細胞と骨髄腫細胞を融合させて作ったハイブリドーマのなかから、単一な抗体を作るものを選別して得る。このハイブリドーマは、無限の増殖能と抗体を産生する能力を持つ。)という。

アクティブラーニング課題:遺伝子の再編成はスプライシングと何が違うか。説明せよ。


(スプライシングではRNA前駆体からイントロンがのぞかれエキソンがつながりmRNAがつくられるが、遺伝子の再編成ではB細胞の持つゲノム(DNA)が改変される。ちなみに、遺伝子の再編成が起きた後、そのDNA領域は転写され、さらにスプライシングも行われて、翻訳され、免疫グロブリンがつくられる)


すべての体細胞は同じゲノムをもつ(⇒ガードンの実験を思い出せ)と学んだが、B細胞は例外である。

B細胞は無数の遺伝子編成をもつ。



アクティブラーニング課題:成熟したB細胞からiPS細胞を作り、クローン人間を作るとして、何か問題があるか。

(B細胞にはすべての遺伝子がそろっていない。遺伝子の再編成が起きた後なので、免疫系が正常に働かない。倫理的に問題がある。人権侵害は起こらないか。人体実験ではないか。)

アクティブラーニング課題:ポリペプチドの役割を幾つか述べよ。





(輸送、構造、防御、貯蔵、調節、運動、触媒)






チャネルと担体は受動輸送、ポンプは能動輸送とだけ覚えておけばOK!

輸送タンパク質には次のようなはたらきがある。


チャネル 

特定の物質を通す門のある管のようなもので,濃度勾配にしたがって受動輸送する。ドアのイメージ。

イオンなど小さいが電荷をもつ物質を通す。
   水分子が通るアクアポリン,神経細胞におけるナトリウムチャネル


 ポンプ 
特定の物質を,ATPのエネルギーで濃度勾配に逆らって能動輸送する。ポンプそのままのイメージ。
   細胞内外のNa+とK+の濃度差を維持しているナトリウムポンプ(酵素名はナトリウム-カリウムATPアーゼ)

補足ナトリウムポンプのATPを分解する場所が問われる!ふつう細胞の内側!


生体膜において、単に拡散によるのでなく、被輸送物質Sと特異的に結合するキャリアーCが考えられる物質輸送を、キャリアー輸送という(チャネルによる輸送と対比的に用いられる)。結合物CSがエネルギー供給系と共役するか否かにより、能動輸送・受動輸送のいずれの場合もある。受動輸送の場合には、促進拡散などが行われる(例はグルコース運搬体。これは、グルコースと『結合』することで輸送するタンパク質で、チャネルとは呼ばない)。能動輸送のキャリアーには,輸送体 とポンプとがある。